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発酵で作る100%植物由来タンパク質 余剰農産物や食材の活用 発酵と食品ロス削減、世界の事例

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
お米と発酵食品(写真:イメージマート)

*本記事は『SDGs世界レポート』(1)〜(87)の連載が終了するにあたって、2021年11月1日に配信した『海外フードテック企業の取り組み 発酵はなぜ食品ロス削減対策になるのか? SDGs世界レポート(72)』を、当時の内容に追記して編集したものです。

鳥取県智頭(ちづ)町の「タルマーリー」のパンづくりは、パンの発酵に欠かせない野生の菌の声に耳を傾けることからはじまる。酒種パンに使う麹(こうじ)菌は、竹を割った皿に蒸した自然栽培米を盛り、麹菌が降りてくるのを待つ。

麹菌は繊細だ。しかも相手は野生である。お盆休みのように交通量の多い時や、周辺の田畑に農薬がまかれた後にはうまくいかないという。

店主の渡邉格(いたる)さんは、「人間中心ではなく、目に見えないような小さな菌を中心に据えてみると世界はもっと広がって見える。気づいていないだけで、実は私たちはまわりの環境にかなり影響を受けている」と、新刊『菌の声を聴け』につづっている。驚くことに、私たち人間の身体や心の調子も菌に影響を与える。スタッフの心身が疲れている時には麹菌ではなく、なぜか青カビが生えるのだという。

発酵食品が新型コロナの「ファクターX」?

東京農業大学名誉教授で、著書が150冊を超える、発酵学と醸造学の権威である小泉武夫先生は、月刊誌「産業新潮 2021年10月号」のインタビューで、コロナ禍と発酵食品の免疫力のことを聞かれ、こう語っている。

「変異株が出てからはなかなか難しくなってきていますが、世界的に見れば発酵食品を持っている東南アジアと東アジアは(感染者が)少ないほうです。同じアジアでも、発酵食品を持っていないインドではものすごく数が増えているでしょう。それからイラン、イラク。発酵食品がほとんどないアメリカ、ブラジル、ヨーロッパはどうですか。こう考えると、やはり発酵食品の免疫力が高いことを示しているのではないかといわれています」

新型コロナの第一波の頃、欧米と比較して、アジアでは感染者や死亡者の数が少なかったことから、未知の「ファクターX」が働いて差が出ているのではないかとうわさされていた。ネアンデルタール人のDNAの有無が作用している、などなど。まだ、はっきりとしていないのなら、発酵食品による免疫力も「ファクターX」の候補に加えていいのではないだろうか。

納豆をよく食べる人の死亡率は食べない人より低い

納豆
納豆写真:アフロ

前述の記事の中で小泉先生も言及しているが、2020年1月に医学専門誌『BMJ』に発表された国立がん研究センターの研究から、納豆をよく食べる人は食べない人に比べて、脳卒中や心筋梗塞など循環器系の病気による死亡率が2割ほど低いことがわかった(1)。

発酵食品は究極のスローフード

しかも発酵食品は保存食である。冷蔵庫のなかった時代は食品を発酵させることで長期保存できるようにした。牛乳を冷蔵庫にしまい忘れたら悪くなってしまうが、発酵させてヨーグルトやチーズにすれば腐りにくくなる。日持ちしない煮豆も納豆にすれば、かなり長く持つ。

米CNNが、2,700年前の欧州人も、現代人と同じようにブルーチーズやビールの味を楽しんでいたと報じていた。オーストリアの先史時代の岩塩抗で見つかった、当時の排泄物を分析したところ、ブルーチーズやビールを発酵させる微生物のDNAがたくさん含まれていたのだという(2)。

まさに「発酵に歴史あり」だ。

日本の発酵食品の中には、調理してから食べられるようになるまで5年かかるものもある。5年先を考えてつくる料理なんてほかにあるだろうか。しかも、それだけの年月のあいだ腐敗することなく、発酵・熟成がつづいているのだ。

中国雲南省の少数民族の村では、子どもの誕生祝いに漬け込んだコイの熟れずしが、おもてなしの料理として40年近くたっても大切に食べられているという。40年も保存でき、しかも、古いことが喜ばれるのなら、それは究極のスローフードではないか。

筆者にとって、発酵は「おばあちゃんの知恵袋」のようなもので、身近だが、ほとんど手作りせず、お店で買って済ませるものだった。

でも、コロナ禍に自分でヨーグルトをつくるようになると興味が湧いてきた。せっかくだから、発酵について学んでみよう。

そもそも発酵とは何か?

まずは発酵の定義から。小泉武夫先生の新刊『最終結論「発酵食品」の奇跡』(文藝春秋)から引用させていただく。

「発酵」とは、目に見ることができない微細な生きものである微生物の生命現象を利用して酒類や味噌、醤油、麹、酢、納豆、漬物、チーズ、ヨーグルト、熟鮓(なれずし)、クサヤ、鰹節、塩辛、魚醤などの伝統的食べものをつくることである。

また、このような微生物の力を応用してさまざまな医薬品や化学製品(抗生物質、抗がん剤、ビタミン類、アルコール類、アミノ酸類、酵素類、有機酸類など)をつくること、さらには環境浄化(生ごみの堆肥化や汚水の浄化など)や無公害エネルギー(メタンや水素の発酵生産、バイオマスなど)、染料製造なども発酵の分野に入っている。

発酵も腐敗も、微生物のはたらきという意味では同じ。ただ、人間の都合で、自分たちに役立つ微生物(善玉菌)が働いたら発酵、有害な微生物(悪玉菌)が働いたら腐敗とのこと。

発酵に関わる微生物

発酵に関わる微生物には、大きく分けて、カビ、酵母(こうぼ)、細菌がある。

カビはタンパク質を分解してうまみを出してくれるのが特徴。チーズやかつお節などのうまみを出すのに利用される。日本人にとって身近な麹(こうじ、糀とも)もカビの一種。麹はデンプンやタンパク質を分解する力が強く、酒や味噌、醤油などをつくるのに使われる。

酵母は、酒やビール、パンなどに使われる。細菌には、納豆に使われる納豆菌、ヨーグルトや漬物に使われる乳酸菌、酢をつくるのに使われる酢酸菌などがある(3)。

発酵食品には主に以下の3つの特徴がある。

1.発酵の力で腐らない(発酵菌が腐敗菌を寄せ付けない物質をつくってくれるため)

2.味と香りが特徴的(牛乳とチーズ、大豆と納豆、米と吟醸酒では味や香りがまったく違う)

3.発酵食品は身体にいい(滋養食、ビタミン補給、免疫機能強化)

上記3の発酵食品は身体にいいということを、もう少し詳しく見てみよう。

甘酒は飲む点滴

発酵食品は滋養食になる。例えば、米麹に炊いたご飯とお湯を入れて一晩おくと甘酒になる。

甘酒
甘酒写真:イメージマート

甘酒の甘さはブドウ糖の甘さである。これは麹菌が糖化酵素でコメのデンプンを分解してブドウ糖にしてくれたもの。また、麹菌はコメのタンパク質を分解してアミノ酸にし、さらにはビタミンB1、B2、B6、パンテトン酸、イノシトール、ビオチンなど、人が1日に必要とするビタミンまでつくってくれる。

点滴の成分はブドウ糖溶液とアミノ酸溶液とビタミン溶液なので、甘酒とは麹菌の発酵によって米が点滴になったものと言うことができる。江戸時代に庶民が、夏バテ防止に甘酒を飲んでいたのには、ちゃんと理由があったのだ。

発酵食品が免疫力を高める

普通の食品と発酵食品の一番の違いは、発酵食品には生きものが入っていること。納豆には納豆菌、味噌には酵母菌、麹菌と乳酸菌、漬物やヨーグルトには乳酸菌が入っている。その菌体自体が非常に強い免疫力を持っているので、それが身体の中に入ることで免疫力を発揮してくれる。

また、発酵食品の中には免疫細胞をつくるためのヨウ素を持っている菌がいることがわかってきた。発酵食品を食べて菌体が身体に入ると、腸で免疫細胞がつくられるのだという。

発酵食品は知恵の集積

発酵は目に見えない微生物の働きを応用した人間の知恵の集積である。

前述の『最終結論「発酵食品」の奇跡』は、小泉武夫先生が、世界中をまわって、見て、触れ、嗅いで、味わってきた「発酵食品」の中から、自身のライフワークの最終章として発表しようと心のうちで熟成させてきたエピソードをまとめたもの。

「100人中98人が気絶寸前、2人が死亡寸前になる」とガイドブックに書かれた韓国の発酵食品は、現地では結婚式に欠かせない伝統的な料理であり、若い女性たちも、この猛烈なアンモニア臭に涙をポロポロこぼしながら、ぱくぱく食べていたという。小泉先生も実際にご自身で味わってみて、ガイドブックの記述はあながち間違いではないと思ったそうだ。

白酒や茅台酒など中国の蒸留酒づくりは、水を入れず、穀物(コウリャンや麦)と大曲(日本でいう麹)を固体発酵させ、それを蒸留してつくっているという。蒸留残渣の酒かすは栄養豊富な発酵飼料となるから、それでブタを育てて肉を得る。つまり、中国では酒をつくりながら豚肉という肴まで用意している。ブタの排泄物は酒の原料の穀物を育てる堆肥になるというから、まさに立派なサーキュラーエコノミー(循環型経済)だ。

豚肉の熟れずしが人類の福音となる?

小泉先生が1990年代後半にNHKのテレビ取材で訪れた、中国・広西壮(カンシーチワン)族自治区の少数民族のトン族の村では、豚肉の熟れずしが食べられていた。ふつう豚肉の脂肪は時間が経つにつれて酸化が進んで、褐色になったり、臭くなったりするものだ。

しかし、村長さんが小泉先生に見せてくれた10年前に漬けられたという豚肉の熟れずしは、肉の切り身はしっかりと原型をとどめ、脂身も白いままだった(筆者もこの番組を観たが、肉は見た目もきれいで、弾力もあり、とても10年前に漬けられたもののようには見えなかった)。

小泉先生は、発酵・熟成の過程で増えた乳酸菌などの微生物が、酸化を抑える物質を生成しているのだろうと考察している。

また「もしその菌を分離することができれば、ほかの食品にも応用できるようになり、将来的には人工的な酸化防止剤がいらなくなるかもしれない。そんな人間にとって福音のひとつが、このような少数民族の食卓から出てきたなどということになったら、それこそすばらしいことである」とつづっている。

天然の食品保存料「ナイシン」

すでにWHO(国連世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の認可を受け、天然の食品保存料として商品化され、世界50か国以上で使われているものに「ナイシン」がある。ナイシンは乳酸菌によってつくられる抗菌ペプチド(アミノ酸が鎖状につながったもの)である。日本では2009年に食品添加物として認可されている(4)。

最も一般的な食品の殺菌方法は加熱だが、中には加熱に不向きな食品もある。その場合、食品保存料が必要となるが、最近は消費者の安全指向の高まりで人工の食品保存料を敬遠する傾向にあり、抗菌作用をもつ天然の抗菌ペプチドの活用が求められているのだという(5)。

食品ロス削減と食品保存料生産

デンマーク工科大学の研究者たちは、ナイシンを分泌する乳酸菌を、ホエイ(乳清)で培養することに成功したと発表した。ホエイ(乳清)はチーズの製造過程で大量に出る副産物で、これまではそのほとんどが廃棄されていたという。ホエイを乳酸菌の培養に活用することで、食品ロスを削減しながら、食品保存料を生産することが可能となる(6)。

ベトナムで見つかった21世紀の福音

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究者たちは、ベトナムの伝統的な発酵食品から、新たな乳酸菌由来の抗菌ペプチドを特定することに成功した。研究者たちは、高温多湿のベトナムで、現地の人たちが「ネムチュア」という豚ひき肉の発酵食品を生食しているのを見て、その抗菌性に着目したのだという。

ベトナムの豚ひき肉の発酵食品「ネムチュア」(Nem Chua; fermented Pork meat)

今回、分離された抗菌ペプチドは「Plantacyclin B21AG」と呼ばれるもの。90度で20分間加熱しても大丈夫で、冷蔵や冷凍にも耐えることができ、pHの高低にかかわらず抗菌作用は安定している。この抗菌ペプチドは、無色、無臭、無味な上、大量生産が可能で、リステリア菌やサルモネラ菌などの食品経由の食中毒に対して抗菌性があるという(7)。

ナイシンと比較して、さまざまな食品加工に適用可能な天然の食品保存料として期待できそうだ。

発酵の力でつくられる100%植物由来の代替タンパク質

シンガポールを拠点とする「ソフィーズ・バイオニュートリエンツ(Sophie's Bionutrients)」は、微細藻類(光合成をする単細胞の植物プランクトン)と発酵技術の活用で、100%植物由来の持続可能な代替タンパク質を開発しているフードテック企業である(8)。

原料となる食品産業廃棄物:穀物、おから、糖蜜(Sophie's Bionutrients公式サイトより)
原料となる食品産業廃棄物:穀物、おから、糖蜜(Sophie's Bionutrients公式サイトより)

同社は、ビール工場から出る穀物の搾りかす、豆腐メーカーから出るおから、製糖工場から出る糖蜜かすなど、これまで食品ロスになっていた産業廃棄物を発酵させたものをエサにして、培養槽の中で微細藻類を育てている。同社の微細藻類は、世界保健機関(WHO)が求めるタンパク質の基準を上まわる60%のタンパク質を含んでいるという(9)。

1tのタンパク質をわずか3日、たった0.02haで、汚染なしに製造(Sophie's Bionutrients公式サイトより)
1tのタンパク質をわずか3日、たった0.02haで、汚染なしに製造(Sophie's Bionutrients公式サイトより)

1トンのタンパク質を、0.02ha(10mx20m)の敷地があれば、わずか3日間程度で、除草剤や肥料、抗生物質、ホルモン剤などをまったく使わずに生産できるというのが同社の技術の強みだ。

しかも、タンパク質を得るのに、大豆だと45〜65日、牛肉だと1.5年かかるのに対し、同社の生産サイクルは3〜10日とかなり早い。

また、大都市圏の近郊に生産拠点を置くことで、現在、世界が直面している食料安全保障とサプライチェーン(供給網)の問題の解決に貢献することができる。発酵につきものの発酵臭はほとんどないというので、都市近郊で生産しても近隣住民からの苦情を気にしなくてもよさそうだ。この技術があれば、食料の90%を輸入に依存しているシンガポールのような国でも、タンパク質を製造することが可能となる。

さらに、将来的に地球上の人口が98億人を超えるようになれば、これまでのように土地収奪的な畜産や農業では食料の供給が間に合わなくなる(しかも、さらに気候変動を悪化させる)。しかし、この技術があれば、世界のどこでも発酵と微細藻類を活用して、持続可能な方法でタンパク質を生産することができるのだ。

同社では最近、100%微細藻類を使用した代替ミルクを発表し、現在、プロテイン粉末をハンバーガーのパテなどの代替肉に使用することを検討しているという。

余剰農産物で作る発酵食品で食品ロス削減

デンマークのスタートアップ企業「リソース(Resauce)」は、発酵を食品ロス対策として活用しようとしている。余剰農産物を発酵させることで食品ロスになるはずの食品を廃棄から救い、長期保存を実現させ、循環型の食料システムを構築しようとしている。現在、「リソース」の取り扱っている商品には、発酵させたトマトソース、豆ペースト、チルドソースなどがある。

同社によると、発酵は、低コスト、低エネルギー、水の使用量が少なくすむという特徴があり、また、味や匂いなどの官能的な特性を高めてくれる、収益性の高い加工方法だという(10)。

創設者でコペンハーゲン大学の学生でもあるフィリップ・ビンデスボル(Philip Bindesbøll)氏は同大学の広報ニュースのインタビューでこう語っている(11)。

「食品分野では膨大な量の資源が無駄になっており、そのうち青果だけでも42%を占めています。食料生産は、大量生産しなければ利益が出ない構造となっているため、安定した原材料のサプライチェーン(供給網)に大きく依存しています。(その過程で発生する)大量の食品廃棄物は予測できないため、大規模な生産活動に組み込むことがむずかしいのです。『リソース(Resauce)』では、発酵と代替生産の組み合わせによって、この不確実性に対処しています」

なお、コペンハーゲン大学では、原材料を工業的に発酵させることで、エネルギーを大量に消費する工程を省略するなど、エネルギー消費を最小限に抑えるグリーンな(環境負荷の少ない)加工技術として「発酵」を活用することが研究されている(12)。

日本の生活習慣病

小泉武夫先生は、前述の「産業新潮」のインタビューでこう語っている。

一汁一菜
一汁一菜写真:イメージマート

「和食は一汁一菜が原点で、一汁はご飯と味噌汁、一菜というのは一つのおかず。要するにご飯と味噌汁と一つのおかずがあれば和食は成立するわけです。そして、そのおかずは室町時代から決まっていて、『香の物』、漬物です。そうすると和食が成立するためには、ご飯のほかに発酵食品が二つなければいけない。味噌汁の味噌と、それから漬物。ですから日本人というのは、原点的に発酵民族であるということが言えると思います。そういう意味でも日本人は歴史上、発酵食品によってつくられてきたと考えてよいわけです。

やはり民族というのは昔から食べてきた食べ物が一番、身体に合うのです。日本人は今から80年前までは、肉を食べた人はほとんどいません。さらに、奈良時代から100年前までに食べてきたものは、(ゴボウや大根などの根茎、白菜や小松菜などの菜葉、キュウリなどの青果、カキなどの果物、山菜やキノコ、豆、ヒジキやワカメなどの海藻、コメやムギなどの穀物の)七つしかない。それが日本人の身体にとっても良い食べ物なんです」

筆者は、2022年秋、小泉先生と対談して共著を出版したが、対談の中でもこの話は繰り返しお話しされていた。

21世紀の今、世界的に評価されている和食の国で、生活習慣病が多くなってきたのには、発酵食品と食物繊維が豊富な野菜中心の伝統的な食生活から、欧米風の食生活への変化が影響していると小泉先生は指摘している。草食動物が、ある日突然、肉食になってしまったようなものだとも。

日本人は食物繊維の多い食物を分解できるよう、欧米人に比べて腸が長い。その利点を思い出したほうがいいのかもしれない。発酵食品は人間の知恵の集積だということも。

特別仕様のアストン・マーチン

2021年秋に公開された映画『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも、ジェイムズ・ボンド氏のアストン・マーチンは大活躍しているようだ。チャールズ皇太子の愛車アストン・マーチンも特別仕様だが、こちらはマシンガンが装備されているわけではなく(おそらく)、英国産の白ワインの残渣とチーズをつくるときに出るホエイ(乳清)でできたバイオ燃料で走るように改造されているとのこと(13)。

チャールズ皇太子と愛車アストン・マーチン(出典:twitter)

https://twitter.com/guardianeco/status/1447619013446492160

(Prince Charles, Aston Martin)

ジェイムズ・ボンド氏やチャールズ皇太子のように特別仕様のアストン・マーチンをあつらえてくれる技術者や、デロリアンを生ごみを燃料に走れるように改造してくれる天才科学者の友人を持たない私たち。発酵食品を食べる、あるいは作ることで、食品ロスを減らし、温室効果ガスの削減に貢献していきたい。

参考情報

・渡邉格・麻里子著『菌の声を聴け』(ミシマ社、2021/5/28)

・『発酵・醸造の疑問50』(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科編、成山堂書店、2019/6/28)

・『dancyu おいしい発酵 2019年11月号』(プレジデント社、2019/10/4)

・『自遊人 発酵食と保存食。 2020年2月号』(自遊人、2019/12/26)

・小泉武夫著『最終結論「発酵食品」の奇跡』(文藝春秋、2021/7/15)

・小泉武夫著『いのちをはぐくむ農と食』(岩波ジュニア新書、2008/7/11)

・小泉武夫著『いのちと心のごはん学』(NHK出版、2012/11/22)

・小泉武夫著『食べるということ 民族と食の文化』(NHK出版、2012/1/1)

・小泉武夫著『FT革命 発酵技術が人類を救う』(東洋経済新報社、2002/6/6)

・小泉武夫著『食と日本人の知恵』(岩波現代文庫、2002/1/16)

・小泉武夫「これからのおいしい食とは?」(FRaU、2021/10/5)

・小泉武夫「世界に誇る日本の伝統技術・発酵が秘める限りない可能性」(産業新潮、2021/10/1)

・小泉武夫・井出留美『いちばん大切な食べものの話』(筑摩書房、2022/11/15)

1)大豆食品、発酵性大豆食品の摂取量と死亡リスクの関連(国立がん研究センター)

2)鉄器時代のヨーロッパ人、ブルーチーズとビール味わっていた 排泄物の分析で判明(CNNニュース、2021/10/15)

3)発酵ってどうして体にいいの? 発酵の名門大学に聞きました。(クロワッサン・オンライン、2021/10/2)

4)多様な乳酸菌抗菌ペプチドの探索とその可能性乳酸菌による「魔法の弾丸」の創出(九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門、公益社団法人日本農芸化学会、2019/03/25)

5)技術用語解説:ナイシンA(日本食品科学工学会誌、2008年55巻1号)

6)Efficient Production of Nisin A from Low-Value Dairy Side Streams Using a Nonengineered Dairy Lactococcus lactis Strain with Low Lactate Dehydrogenase Activity(Journal of Agricultural and Food Chemistry、2021/3/1)

Researchers Develop Lactic Acid Bacterium to Extend Shelf Life of Food(The Spoon、2021/4/30)

7)How a Vietnamese raw pork snack could help us keep food fresh, naturally(Science Daily、2021/6/7)

Crystal structure and site-directed mutagenesis of circular bacteriocin plantacyclin B21AG reveals cationic and aromatic residues important for antimicrobial activity(nature、2020/10/15)

8)Sophie's Bionutrients公式サイトより

9)Sophie’s Bionutrients CEO: Feeding microalgae food waste can lower protein costs for alt-milk and flour(foodingredientsfirst、2021/4/30)

10)Resauce set to eliminate food waste via fermentation(Waste Management World、2021/8/5)

11)Food Science student reduces food waste by fermenting surplus fruit and vegetables(University of Copenhage、2021/2/24)

12)How Fermentation Can Avoid Food Waste And Create Tasty Plant-Based Products(Forbes, 2021/7/31)

13)Prince Charles reveals his car runs on cheese and wine byproducts(The Guardian、2021/10/11)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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