ロシアのウクライナ侵攻

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。一般市民の暮らす集合住宅を砲撃する戦車、爆撃される市場、学校、産婦人科の病院、人道回廊が開かれないまま廃墟になっていく街、避難民でいっぱいの劇場や鉄道駅に落とされるミサイル……。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナでは、侵攻が始まった2月24日から4月4日までの間に少なくとも一般市民の1,480人が死亡、2,195人が負傷した(子どもは123人が死亡、183人が負傷)。また、ウクライナの人口の4分の1にあたる1,100万人以上が避難を余儀なくされ、そのうち420万人以上は近隣諸国で難民となっている(1)。

注)2022年4月30日までにわかっている一般市民の死者数:2,899人、負傷者数:3,235人(OHCHR)

ウクライナのゼレンスキー大統領は、2022年4月5日に国連安全保障理事会でオンライン演説を行い、こう問いかけた(2)。

「(国連の)安保理が保証すべき安全はどこにあるのですか? 安全なんてないじゃないですか。安保理なんてあっても、まるで何事もなかったみたいです。国連の創設目的だった平和はいったいどこにあるのですか?」

ウクライナのゼレンスキー大統領の国連安全保障理事会演説(出典:国連YouTubeチャンネル)

ゼレンスキー大統領はこうも語っている。

「国連憲章の第1章の第1条を思い出していただきたいと思います。国連の目的はなんでしょう?平和を維持することです。いま、国連憲章は文字どおり第1条から破られているのです。もしそうであるなら、他のすべての条文に何の意味があるのでしょう?」

わたしたちが連日見せられているのは、拒否権を持つ国連の常任理事国が核兵器をちらつかせれば、好き勝手になんでもできるという現実である。それは、取りも直さず、台湾や尖閣諸島、北方領土をめぐる有事に、誰かが救いの手を差し伸べてくれると期待するのは甘いということである。今回のウクライナの一件は日本にとって、決して対岸の火事ではない。

温室効果ガスの排出削減に関するIPCCの第3作業部会報告書

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、4月4日に温室効果ガスの排出削減に関する第3作業部会の報告書を発表した。世の関心はすっかりウクライナ情勢に奪われているようだが、気候変動は待ったなしである。いまは人類存亡の危機なのであって、戦争なんてしている場合ではないのだ(ウクライナは巻き込まれているだけだが)。

IPCCの報告書によると、気温上昇を1.5度に抑えるには、2025年までに排出量を減少に転じさせる必要があるという。ただし、いますぐ石炭火力発電などの化石燃料依存から再生可能エネルギーにインフラや社会構造自体を移行させ、食生活の見直し、食品ロスの削減など、わたしたち一人ひとりの暮らしを変革させることができれば、まだ達成できる望みはあるとしている(3)。

終わりの見えないコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻で、何をしても無駄と自暴自棄な気持ちになってしまいがちだ。だが、わたしたちは、気候変動を否定しパリ協定から脱退したトランプ政権下の米国で、気候変動対策に真摯に取り組んでいた企業がたくさんあることを知っている。世の中のことはともかく、いま自分の目の前にあることをひとつひとつやっていくしかないのではないか。汚れた皿でいっぱいの流しも、一枚一枚洗っていけば、いつかはきれいになる。

今回は、いまそこにある食料危機と気候危機にどう対処していくべきかを考えてみたい。

以下、有料記事(6,138文字)。