2021年7月24日にTBS「報道特集」(1)が特集した、五輪関係者向け弁当が大量に廃棄されていた件、筆者も大会組織委員会など関係者に取材をして記事を書いた(2)。

そして本日27日11:19a.m.、TBSは、内閣官房のオリンピック・パラリンピック事務局が「廃棄はあったと聞いている」と事実関係を認めたことを報じた(3)。筆者も記事にコメントを書いた。

内閣官房オリパラ事務局は「弁当を用意していたのは大会の組織委員会で、廃棄された数など詳細はわからない」とのこと。まるで他人ごとで、当事者意識は感じられない。お互い、同じ五輪関係者ではないのか。

5月に大会組織委員会に「人数がずれたら食材のロスを防ぐためにどう調整するのか」と質問したところ、「キャンセルできるものはキャンセルし、そうでないものは転用するなどして無駄を出さない」と答えていた(4)。

JOC「弁当の発注数は当初の数から変更なし」

ここで、JOC(公益財団法人 日本オリンピック委員会)(5)からの情報が入った。筆者が直接聞いたのではなく、筆者と交流のある企業の方がJOC筋から入手した情報だ。

1、無観客になったことでボランティアが激減した。だが、弁当の発注数は、当初の(有観客の際の)数から変更していない。

2、JOC側に弁護士がついていて「契約数をつくるよう」指示した。

3、弁当の発注数は、食べない人がいることの想定はなく、そもそも一定数を廃棄する前提だった。

2については弁護士の個人名がわからないので定かではないが、少なくとも1と3については、昨日26日に筆者が食事を作る企業とそれを運ぶ企業、組織委員会に取材した内容と符号する。弁当の発注数は、有観客を想定した時から変えていないと推察される。これでお金が入る人たちは、弁当を捨てようが何しようが、会社に金が入ればいいのだろう。

この情報を教えてくれた方は、「弁護士の存在が大きいのでは」と話す。だが、「そもそも自分で考えないスタッフもどうなのか」とも語る。

「食」はすぐに対応できない

政府の対応が後手後手なのは、この件以外を見ていてもよくわかる。観客を入れるのか入れないのか、入れるなら何人にするのかなど、政府がギリギリまで判断を引き延ばしていたため、現場の対応が遅くなってしまった。

繰り返された緊急事態宣言も、食品メーカー幹部は「もう数千万円捨てている。せめて一週間前に言ってくれれば対応できるのに、2日前に言われても急過ぎて対応できない」と、政府の対応に苦言を呈する。複数のメーカーから、数千万円規模の損失を出したと伺っている。もっと早く決断を下していれば、ここまでのロスは出さないで済んだ。

飲食業界にしても同様だ。食材は、すべてが常温保存や冷凍保存できるわけではない。そもそも生き物の命や自然界から得られているのに、そのことはまったく配慮されていない。食に関わる人々がそれにかけた労力や時間も考慮されていない。

プランBの必要性

有観客か無観客かの判断は直前まで揺れたが、そもそもイベントでは人数が確定できないという事態はつきものだ。五輪は、いわば「非日常」だが、日常のイベント、たとえば立食パーティなどでは、食事は参加人数の7掛け(70%)にする、というのが基本だ。もちろん参加者の年齢などによって異なるが、食事は実際の人数よりも少なめにする。

「人数が変わりうる」ということは想定できたのではないか。プランBを準備することはできたと考える。

1年半前の2020年1月には無観客の可能性を新聞社が報じていた

日本最大のビジネスデータベースサービス、主要メディア150紙誌の記事を30年間分検索できるG-search(ジーサーチ)で検索すると、読売新聞が2020年1月14日付朝刊3面の社説で「東京五輪 一人でも多く祭典に関わろう もてなしの心で新たな歴史を」と題し、次のように報じていた。

台風や豪雨災害への対処方針をあらかじめ考えておくことも重要だ。近年、天気予報の精度が上がり、鉄道の計画運休などが事前に発表されるケースが増えている。こうした場合は、日程の変更や無観客試合も想定されよう

また、北海道新聞は、2020年1月24日付朝刊3面で「<フォーカス>五輪 危機への備えは」と題し、次のように報じていた。

 組織委は台風の首都直撃などに備えた「予備費」として270億円を大会予算に計上。台風の対応マニュアルの策定も本格化した。官民の専門家らによる「気象情報センター」を設け、天候の予報技術を駆使し、台風対策にも役立てる。

 ただ、W杯は44日間と長期で試合延期が可能だったが、16日間以内で行う規定のある五輪では期間延長は困難とみられ、安全対策上、会場に観客を入れずに競技を行うこともあり得る。

 五輪は関係団体やスポンサーが多いため、従前に決めた対応の変更は難しいとの見方もある。組織委も「全会場のルール変更には数日かかる」(中村氏)と認めており、緊急時に迅速な意思決定ができるかがカギとなる。

政府の後手の対応で無観客の確定が遅れたにせよ、ある程度は想定できたのではないか。

2016年から議論してきた食品ロスの計量はどうなった?

2016年から食品ロス削減を目指して議論を進めてきた資源管理ワーキンググループ(6)は、せめて食品ロスの量を計量することも提案していた。が、冒頭の「廃棄数はわからない」ときたもんだ。この5年間の議論は何だったんだろう。

弁当の発注数が当初の有観客の数と同じなのであれば、今からでも必要な方に配布できるのではないだろうか。現に、子どもや高校生や若者たち、こども食堂、支援団体、炊き出し支援の教会が国立競技場まで引き取りに行ける導線を作ることを訴える署名運動も出てきている。

そして、余剰食品を活用すると同時に、そもそも過剰なほどの余りを出さないということ。こんなに食料廃棄が止まないのなら、場合によってはフランスのように、廃棄に対してペナルティを科す、あるいはイタリアのように廃棄を減らしたらインセンティブを与える、という具体的な「アメとムチ」も必要ではないか。捨てても決められた額の金銭が得られるから容赦なく捨てるのだ。

参考情報

1)「開会式の裏で・・・弁当大量廃棄も」(TBS「報道特集」2021/7/24)

2)五輪で一日数千食の弁当廃棄 組織委員会の答えは?5月には「キャンセルか転用して無駄を出さない」と回答(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/7/26)

3)オリンピックで弁当大量廃棄 オリパラ事務局が認める(TBS News、2021/7/27)

4)五輪の食材、食品ロスはないのか?大会組織委員会に聞いた(Yahoo!ニュース個人、井出留美、2021/6/4)

5)JOC(日本オリンピック委員会) 令和3年・4年度 役員名簿

6)東京五輪 資源管理ワーキンググループ