全国6億2790万円分の食品「捨てたら本部負担」するコンビニ 食品ロス削減を謳うのはマッチポンプでは

(写真:ロイター/アフロ)

2020年6月3日、大手コンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンが、加盟店に対して通知を出した。6月8日から30日までに納品されたおにぎりや寿司、調理パンやサンドイッチなど、打ち合わせ前と後との発注数の差異で生じた不良品(廃棄食品)に対し、店舗あたり、税抜売価で27,778円を上限として本部負担するという内容である。

加盟店オーナーに配布された通知内容とは

2020年6月3日付で、セブン-イレブン・ジャパンの加盟店オーナーに出された通知を入手した。次のような内容である(一部省略。注:OFCとはオペレーション・フィールド・カウンセラー:店舗経営相談員の略。加盟店オーナーにコンサルティングなどを行う本部社員を指す)。

緊急事態宣言が解除され、人々の生活・行動が少しずつ通常に戻る中、お客様の来店増加と購買動向の変化が見込まれます。(中略)品揃えを拡充し、併せてエシカル効果につなげ、売り上げ、利益の向上を目標として個店カウンセリング支援を実施します。担当OFCと品揃えの打ち合せをお願いします。

1、対象カテゴリーと不良品負担の内容

(1)対象カテゴリー

「米飯」情報分類「おにぎり」「こだわりおむすび」「寿司」全品

「調理パン」情報分類「サンドイッチ」全品

「デリカテッセン」情報分類「サラダ」「食事サラダ」「惣菜」全品

(2)本部負担の内容

お店とOFCが高い目標(仮説)を持って、発注の打ち合せを行う。

発注担当者の発注予定数と、OFCがカウンセリングした上での発注数を「チャレンジ予算 打合せー検証シート」に記入する。

打合せ前発注数と打合せ後発注数の差異の範囲内で発生した不良品について、税抜売価27,778円を上限として本部負担を実施します。

(3)対象期間:6月8日(月)~30日(火)の23日間 この期間に納品された商品

注:「打ち合せ」「打合せ」と表記が異なっているのは原文のまま

   不良品とは廃棄食品を指す

この通知によれば、会計処理では「商品廃棄」業務で登録するように、と指示が書いてある。

全国で6億2,790万円分の廃棄食品を本部負担

税抜売価で27,778円に消費税率8%をかけると、税込み売価は30,000円となる。

セブン-イレブンの店舗数は20,930店(2020年5月末時点)なので、仮に全店舗で上限額まで廃棄食品を負担したとすると、廃棄する食品の売価は6億2,790万5,023円となる。

総務省の家計調査によると、2020年4月、二人以上の世帯が使った食費は1ヶ月あたり73,919円。前述の6億なにがしをこの金額で割ると、1世帯あたり8,494ヶ月分(707年分)もの食費?!が捻出できることになる。あるいは、8,494世帯が1ヶ月間暮らしていけるだけの食費ということになる。

食品ロスを大量に出して「削減」を謳うことに対し「褒めろ」とは?

食品ロスを、本部自ら「積極的に出していいよ。捨てた分は払ってやるから」と言うのは、食品ロス削減の垂れ幕を掲げている企業として、やっていることが矛盾しているのではないだろうか。まさにマッチポンプ(自作自演の意。マッチで火をつけておいて、ポンプで火を消す)。

食品ロス削減の垂れ幕を掲げるセブン-イレブンの加盟店(筆者撮影)
食品ロス削減の垂れ幕を掲げるセブン-イレブンの加盟店(筆者撮影)

さらに、消費期限の迫ったおにぎりを買うと自社カード(ナナコ)会員のみ、100円につき5円ポイントを付与する「エシカル(倫理的)プロジェクト」を始めたことに対し、「褒めてあげよう」という人までいる。

事業者が、その事業活動によって発生する廃棄物をできる限り少なくし、廃棄を減らす努力をすべきことは、1970年に成立した廃棄物処理法でも、2001年に施行された食品リサイクル法でも、2019年に施行された食品ロス削減推進法でも述べられている。すでに50年近く日本で事業を経営してきた事業者なら認識しているはずだが、事業活動により生じる廃棄物を最小限に抑えることは、事業者としての責務なのだ。幼稚園のお絵かきを褒めて才能を伸ばしてあげましょうという話ではない。

消費期限の手前にある販売期限が過ぎたため捨てられる食品(セブン-イレブン加盟店オーナー提供)
消費期限の手前にある販売期限が過ぎたため捨てられる食品(セブン-イレブン加盟店オーナー提供)

「食品ロス削減」を謳う界隈では、最近、マッチポンプ施策が多い。リユース(再利用)もリサイクル(再生利用)も大事だが、最優先はリデュース(廃棄物の発生抑制)なのだ。食品ロスを莫大に出しておいて「はい減らしてますよ」と謳うことではない。リデュースに尽力した上でさらに削減に取り組むことが真の食品ロス削減である。

大手広告代理店の出来レース事業もそうだが、強者の企業に対し、「事なかれ主義」を貫き、もの申さない政府とマスメディアは、食品ロス削減の法律ができてすら本気で変えようとしない現状と矛盾をしっかり追及してほしい。

関連情報

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。世界資源研究所(WRI)とオランダ政府が運営し食品ロス削減を目指すチャンピオン12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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