セブン「食品ロス削減」のプロジェクト、効果に疑問?ロス増の店も オーナー6人に聞いた

セブン-イレブンの店舗に掲げられる「食品ロス削減」の垂れ幕(筆者撮影)

セブン-イレブン・ジャパンが2020年5月11日から開始した「エシカルプロジェクト」。消費期限が接近した弁当やおにぎりなどを買ったnanaco(ナナコ)カード会員に5%(100円あたり5円)のポイントを付与するものだ。

参考:

セブン-イレブン・ジャパン エシカルプロジェクト

セブン-イレブン・ジャパン公式サイトより
セブン-イレブン・ジャパン公式サイトより

2008年当時、食品メーカー勤務者としてフードバンクに自社製品の寄付を始めて以来、12年。コンビニの店頭に「食品ロス削減」の文字が踊る日が来るとは思いもよらなかった。とうとうここまで来たか・・という感慨深い思いもある。

その一方で、「エシカル(倫理的)」という用語を値引きに使うことに違和感を抱き、先日、記事を書いた。事前に実証実験を行った北海道のセブン-イレブン店舗の平均廃棄額は27,000円/日。そのうち5%(1,606円)が減っただけという結果に終わっている。

その記事を、エシカルペイフォワードの稲葉哲治さんが引用し、エシカルは「値引き」のことじゃない。セブンイレブンの食品ロス削減『エシカルプロジェクト』の違和感(エシカル100考、101/100)という記事を執筆された。

それでは、当事者はどう思っているのか。セブン-イレブン・ジャパン加盟店オーナー6名にオンラインで聞いてみた。

オーナー1人目、Pさんは5月11日から17日までの一週間試し「廃棄が増えた」

オーナーPさんは、むしろ廃棄が増えたと語る。

Pさんは、1日に3回納品されるデイリー品(日販品、日持ちのしない食品)について、エシカルタイム(エシカルシールを貼る時間)を考慮して、各便の発注比率を変えたという。すると、エシカルを意識したあまり、エシカル商品を作るために、普段よりも発注数が増量していることが判明した。

そして検証しようとしたところ、販売個数がシステム上では算出できないことが判明した。検証できるのはエシカル販売金額のみ。仕方ないので、個別のデータを拾い集めて、シールを貼ったもの60個のうち、販売個数11個、販売金額2,000円などを割り出した。その結果、廃棄は倍増していることがわかった。

パソコンのデータだけを見るのではなく、実際に店頭に来るお客様の行動を注視してみた。すると、エシカルシールを貼った商品を避ける傾向が見られた。ナナコカードを持っていないお客にとっては、単なる「消費期限間近の商品」に過ぎない。しかも、親切にシールが貼ってあれば、あからさまに避ける。

商品棚ではなく、エシカル商品を集めてエシカルコーナーにしたら、なおさら避けられてしまった。

2020年5月11日から17日までの検証結果としては次の通り。

シールを貼ったのが353個。

そのうち販売個数が64個。

販売金額 約13,500円

廃棄金額 約57,000円

あまりに廃棄が増えるので、開始4日目から発注数を減量することにした。

Pさんは、日頃から廃棄を減らす取り組みをしているので、それであれば売れたであろう商品が、エシカルシールを貼ったことで敬遠され、売れなくなってしまった。その結果、廃棄はむしろ以前より増えてしまい、エシカル効果は認められなかった。

となると、「nanaco(ナナコ)カードの保有率が低いからじゃ?」とツッコミが入るかもしれないが、この地域での利用率は地区平均並みであるとのこと。

SC(ストアコンピュータ)データによれば、「機会損失分析」すなわち欠品率(店頭で品切れしている商品の割合)は、エシカルによって大幅に改善していた。なぜなら、エシカルシールを貼られた商品は、鮮度が落ちるまで売り場で売れ残っているから。

本部は「機会ロス(販売機会損失)」を嫌う。エシカルによって欠品率が下がり、発注量が増加すれば、本部が今回負担する「5%」など、痛くもかゆくもない。

結論として言えるのは、日頃から廃棄を減らそうと調整する努力をしている店ではエシカル効果が少なく、むしろエシカル商品は敬遠され、廃棄が増える。

うがった見方をすれば、本部が先行地区(北海道・四国)で得た結果によれば、発注量が増え、欠品率も下がった。5%還元程度なら、負担したとて、リスクはない。しかも、社会的には「食品ロス削減の取り組みをしていますよ」アピールができる。

オーナー2人目、Qさん「マッチポンプ企画は一切興味なし」

2人目のオーナーQさんは、「うちの店はこんなマッチポンプ企画は一切興味ない」と一蹴する(マッチポンプとは、自ら問題を起こしておいて解決したかのように見せる自作自演。マッチで火をつけて、ポンプで水をかけることから)。

本部からの指導として「エシカルで売ればいいから発注を増やしましょう」という指示が来ている、と語る。「外面で食品ロス削減を謳い、全国展開しているだけ」

オーナー3人目、Rさん「エシカルはしない」

3人目のオーナーRさんは「エシカルは全面的にしない。横断幕も飾らず、以前のもののまま」。

オーナー4人目、Sさん「適当に」

4人目のオーナーSさんは「不真面目にエシカルをやっている。気が向いたときだけシールを貼っている。すでに見切り販売というツインターボ、スーパーチャージャーのエンジンがあるのに、エシカルなんて、原付のエンジンみたいなもの。何の役にも立たない」と語った。

オーナー5人目、Tさん「真面目にやる」

5人目のオーナーTさんは「時短営業もやっているし、普段から見切り販売もやっている。エシカルも真面目にやっている」。

オーナー6人目、Uさん「全部捨てた」

6人目のオーナーUさんは、はなからやる気はなく、「エシカルの販促物やシール、全部捨ててしまった」そうだ。

セブン&アイ・ホールディングス広報の回答は

セブン-イレブン・ジャパンのお問い合わせフォーム経由でオンラインで取材したところ、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの広報の方から、丁寧に回答をいただいた。ただ、食品ロス削減に逆効果をもたらす面もあるのでは?との指摘に対しては、十分な回答をいただけなかった。

ーすべてのお客様への実質値引きではなく、ポイントが付与される対象者をナナコカード保有者限定にした理由はなぜでしょうか。

セブン&アイ・ホールディングス: 価格の決定権は加盟店様にございます。ですので、値引きではなく販売促進策のひとつとして本部がポイント分を負担し付与する形をとる事で、加盟店に負担がかからない仕組みといたしました。

※加盟店の意思で参加判断が可能な仕組みです。セブン‐イレブン店舗における認知度・保有率ともに高く、弊社でポイントを負担できる仕組みがあるnanacoカードを対象とさせていただきました。

ー100円に対し、実質5円の値引き(ポイント付与)は、スーパーマーケットやデパ地下に比べると値引率が格段に低く、売り切って売れ残り(食品ロス)をなくすには割引が薄いと感じます。5%という数字を設定した背景や理由を教えていただけるでしょうか。

セブン&アイ・ホールディングス:加盟店を含む数か所でのテストを繰り返し行い、加盟店と一緒になって多くの意見を取り入れた結果、5%の設定が持続的な取組みとして妥当と判断しました。スーパーマーケットは日々売り切りを前提とした値下げ販売であり、セブン-イレブンは24時間営業の店舗が多く、いつでも欲しいものが欲しいだけ品揃えされる事が前提ですので、食品ロス削減と併せて継続した品揃えが必要であると考えております。エシカルプロジェクトの趣旨にご賛同いただいたお客様に対し、全額本部負担で、nanacoボーナスポイントを付与することで加盟店の収益に影響しないように配慮することで、多くのお店が持続可能な仕組みとして食品ロス削減に取り組んでおります。

ーナナコカードを持たない客が、わざわざエシカルシールを貼っていない新しい商品を取っていくので売れ残ってしまって逆効果という声を、先行地域の店舗から伺いました。全国展開するにあたり、このような事態に対する対処はされていますでしょうか。

セブン&アイ・ホールディングス:エシカルプロジェクトに限らず、日頃よりお客様の喫食シーンやニーズに合わせて商品をお選びいただければと考えています。エシカルプロジェクトについては、「購入してから比較的すぐ召し上がる」お客様で「今回の取組みにご賛同いただける」お客様を想定しています。一人でも多くのお客様にエシカルプロジェクトの趣旨にご参画いただけるよう、TVコマーシャルや店内BGMなど認知度の向上を図っております。

元オーナーの佐々木則夫さんは「ポーズ」

現役オーナーだけでなく、元オーナーの佐々木則夫さんにも聞いてみた。

セブン本部がエシカルを導入した最大の目的は、メディアや経産省等から「見切り販売」を容認していない、と疑われないためのポーズと隠蔽工作です。

どうみても、お客様とオーナーにメリット感が無いシステム。あくまで本部の利得優先指向の表れとしか見えないですね。

出典:元オーナー、佐々木則夫さん

個人販売ならもっと思い切って見切り売り切るのでは?

もしこれが個人で食品を売るのであれば、本気で売り切ろうと思えば、もっと思い切って見切り(値引き)してでも売り切ろうとするのではないだろうか。

たとえば100円のおにぎりを100個用意して、夕方、10個、売れ残ってきた。そのとき、「はーい、うちのカードを持っている人だけ、5円安くします」と言われて、買うだろうか。しかも、カードを持っていない人は、何の恩恵もないのに、期限間近のおにぎりを定価で買うことになる。

今回のプロジェクトは、最初の一歩だろう。ただ、食品ロス削減で大切なのは、やっているふりのパフォーマンスではなく、本気で減らす姿勢と実行力ではないだろうか。

参考情報

食品ロス削減のためエシカルプロジェクトを推進しています(セブン-イレブン・ジャパン公式サイト)

セブンイレブン、販売期限迫った商品に5%のポイント付与、全国の店舗で

エシカルは「値引き」のことじゃない。セブンイレブンの食品ロス削減『エシカルプロジェクト』の違和感(エシカル100考、101/100)稲葉哲治氏

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。世界資源研究所(WRI)とオランダ政府が運営し食品ロス削減を目指すチャンピオン12.3メンバー。著書に『賞味期限のウソ』『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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