新型コロナ 今こそ食料品は少量生産に戻るべき その理由とは

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

2020年4月9日付の日本農業新聞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で食料供給を担う農家や農産物の直売所が存在感を増していると報じた。

記事によれば、東京都のJA町田市の直売署「アグリハウス忠生」の稲葉信二店長は

「地元農家が出荷し、近所の消費者が買い求める地域密着の直売所。遠くに出掛けるのが怖いという人も多い。直売所が平素と変わらず地域で開店していることが今、地域の人の安心感につながっている」と強調する。

出典:2020年4月9日付 日本農業新聞

と語っている。

八百屋や魚屋、肉屋は小規模で風通しもよく「密閉」「密集」ではない

総務省の経済センサスによれば、日本全国の八百屋や果物屋(野菜・果実小売業)の数は、18,397軒(事業所)となっている(平成 28 年経済センサス‐活動調査 産業別集計(卸売業,小売業に関する集計) 総務省・経済産業省)。2014年時点だと高知県が最も軒数が多い(都道府県別統計とランキングで見る県民性)。

昔と比べて、個人商店の数は減っている。とはいえ、今なお健在の八百屋や魚屋、肉屋へ行ってみると、お客に向けて店先が開放されている店舗がほとんどで、今、盛んに避けるように言われている「三密」(密閉・密集・密接)の「密閉」状態ではないだろう。小さい店先だから、密集することもない。強いていえば、接客は「密接」かもしれないが、ショッピングモールなどに比べると、リスクは格段に低い。

今、物流は止めていないので、物流従事者にも負担をかけている。近くで買えば、物流事業者の負担を減らしてあげることができる。前述の直売所も、農家から直接届いた野菜や果物を、遠くまで行かずに近所で購入できるからこそ、好評を得ているのだろう。

フランスでは農業部隊に20万人が応募

先進国では、労働者が一次生産品の現場へ移行する動きがある。新型コロナ対応で外出制限のため、季節労働者が確保できない農家や畜産農家での労働力が求められている。

フランスでは、ディディエ・ギヨーム(Didier Guillaume)農相が、失業した労働者に農家で働くことを呼び掛けたところ、20万人以上から応募があったそうだ。2020年4月7日付の時事通信が報じている。4月3日付のラジオ番組、J-WaveのJK Radio Tokyo Unitedでは、DJのジョン・カビラさんが「フランスでは、休業して仕事がなくなった飲食店のシェフたちも含めて15万人以上が応じた」と紹介していた。

日本でもJAや行政が農家での就労者を募集

日本でも、フランスに似た動きが見られる。長野県では、JA佐久浅間が、軽井沢旅館組合と協力し、人材のマッチングを始めるという(2020年4月12日付 日本農業新聞)。青森県でも、観光業や飲食サービス業から農業分野へと人材をまわすマッチングを始めたそうだ(前述、日本農業新聞)。

例年なら、海外から技能実習生などの働き手が来るところ、2020年はコロナ禍で来日できておらず、労働力が足りない。

農と食のジャーナリスト、山本謙治さんが「コメは不足しない。買い占めないで」は本当か~新型コロナが食卓に与える影響~で指摘する通り、海外から輸入して日本で販売している農産物の中には、外出自粛で輸出作業ができないため、例年より品薄になってきているものもある。

WHOは世界各国の輸出規制による食料不足を懸念

2020年4月11日付の共同通信によれば、WHOらが、食料不足を懸念する声明を出した。

世界保健機関(WHO)や世界貿易機関(WTO)など3機関は11日までに、輸出管理が広がれば「国際市場における食料不足が起きかねない」とする声明を出した。

出典:2020年4月11日付 共同通信

食料自給率37%で海外に多くの食料を依存している日本。まだ食べられるにもかかわらず捨てている「食品ロス」を、今まで以上に減らす努力が必要だ。

大型店舗ではなく、身近にある小さな食料品店が理想なのでは?

外出自粛と「三密」を避けなければならない今、それでも食料品は入手しなければならない。大規模店舗より、地域にある小さな店舗の方が、三密も避けられるし、近くで購入できるし、よいのではないだろうか。

新型コロナ対応で多大な負荷がかかっている医療従事者は、時間をかけて食料品を買うことができない。夜勤の人なら朝、日勤なら夕方など、限られた時間帯に限られた場所でしか買えない。営業時間が長く、1カ所でほとんどのものが買えるスーパーは、医療従事者など、買い物時間が限られる方に譲ってあげるというのも一つの考え方だろう。

『日本の食と農 危機の本質』(NTT出版)の著者、神門善久(ごうど・よしひさ)氏は、著書の中でこう語っている。

「消費者は生産者の顔が見える関係を求めている」という類の論調が氾濫しているが、ほんとうだろうか?

八百屋・魚屋での購入を拒否し、スーパー・マーケット、さらにはコンビニへと、より手軽な食材調達に走ったのは消費者自身である。かつての八百屋や魚屋は、単に食材を売る場所ではなかった。食材の産地や調理の仕方はもちろん、献立の相談にいたるまで、濃密な情報交換があった。消費者自身が、セルフサービスの気楽さ利便さを求めて、対面販売の八百屋や魚屋から去っていったのである。

出典:『日本の食と農 危機の本質』(神門善久著、NTT出版)

筆者も、つい数年前まで、近所の豆腐屋のおばさんと会話をするのが楽しみだった。「今日、何作るの?」と聞かれ、レシピの名前を答えると、「へえ、そんな料理、初めて聞いた!おばさんも作ってみよう」と答えてくれて、一丁、おまけしてくれる。スーパーの豆腐より高いけど、美味しくて、おばさんに会うのが楽しみだった。でも、数年前、閉店してしまった。神門氏が指摘する通り、筆者にとっての近所の豆腐屋は、単に豆腐を売る場所ではなかった。

スーパーまるおかの丸岡社長「食料品は少量生産に戻るべき」

筆者が取材した群馬県高崎市「スーパーまるおか」の丸岡守(まるおか・まもる)社長は、「食料品は少量生産に戻るべき」と話していた。安い輸入品の原材料で大量生産しても、味が美味しくないと言う。

丸岡守氏(以下、敬称略):「結論言っちゃうと、食料品は少量生産に戻るべきだと思うんです。大量生産っていうのは、やっぱりよくない。美味しくないんです。原料からして違うんです。」

「小麦や大豆、とうもろこし、そういうのをボーンと(まとめて)輸入して、国産の半値ぐらいですから、安い原料で安く作れるわけです。少量生産のものと比べたら、全然、味がまずいんです。」

出典:丸岡社長の言葉
スーパーまるおかの丸岡社長(丸茂ひろみさん撮影)
スーパーまるおかの丸岡社長(丸茂ひろみさん撮影)

丸岡社長は「食べ物に関しては大量生産・オートメーションっていうのはあんまり良くない、工業製品と同じに考えているが、そうはいかない」とも語った。

ここに来て、輸入に依存できないとなれば、国産のもの、地産地消(地域で作ったものを地域で消費する)という流れにならざるを得ないのではないだろうか。

丸岡社長は、食べ物の味や栄養価のことも考えておっしゃっていた。今のようなコロナ騒ぎになれば、それに加えて、「入手可能性」ということを考えても、地域の生産者や小売店から購入するのが最も理想的だと思う。

生産者から直接、一次生産品を購入することができ、生産者に直接、感想やお礼を伝えることができるポケットマルシェ、通称ポケマルは、以前にも増して注目されてきている。

3.11後、市町村合併で食料支援の手が届かなかった

「大きい」「多い」より、「小さい」「少ない」の方がいい。

筆者は、3.11の後、食料支援の時にそう思った。

平成の「市町村合併推進」により、小さな村や町が合併し、大きな「市」になっていった。そこへ、地震が起き、津波の被害を受けた。あのとき、大規模になった市の中心部まで、市の端に住んでいる人は到達できなかった。街は、水をかぶっただけではない。油が流出していた。

2011年8月にも被災地の、ある避難所へ食料支援に行ったが、「市にコメを頼んでいるのに今だに来ない」と被災者の方が話していた。本当は、市の中心部にある倉庫には、コメはあった。自治体が小さい単位だったら、もう少しスムーズに食料にたどり着けただろう。

車を自由自在に走らせることができる平常時なら、食料拠点が遠かろうが構わない。でも、ガソリンもない、車も流された、運転できる家族もいなくなった・・・となれば、歩くか、公共の交通機関に頼るしかない。地下鉄や電車の路線が張り巡らされた都市部と違い、地方だと、車がないと日常生活を送ることができない環境は、とても多い。

筆者は支援する立場で、被災の苦労はわからなかったが、あの時、確かに「(規模を)大きくすればいいってものじゃないんだな」と感じた。

今こそ、食べ物を身近で賄うことと、食べられるのに捨てられている食品ロスを減らす重要性を考えるべきではないか。そのためには、「大量生産」ではなく、必要な量を作って売る「少量」あるいは「適量」の生産・販売・消費へ移行する時機だと考える。

参考情報

「食料品は少量生産に戻るべき」安売りも広告もないスーパーまるおか イオンの隣でなぜ顧客が絶えないのか

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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気候変動が深刻化し、SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、対応に悩む企業も多いです。著者は企業広報に14年半、NPO広報に3年従事の後、執筆や講演を通して食品ロス問題を全国に広め、数々の賞を受賞しました。SDGsが掲げる17目標のうち、貧困や飢餓、水・衛生、生産・消費など、多くの課題に関わる食品ロスの視点から、国内外の事例を紹介し、コスト削減や働き方改革も見据え、何から取り組むべきか考えます。

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