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「規格外は美味しい!」デンマークで8代続く魚屋で規格外の野菜や魚を食品ロスにせず総菜にしてデリで販売

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
TV撮影で忙しい中、取材に応じてくれたトミー。手に持っているのはタコ(筆者撮影)

たった5年で食品ロス25%も削減 デンマーク王室をも動かしたある女性の怒りとパワーで取材した、セリーナ・ユール。

セリーナ・ユール Selina Juul (Photo: Josephine Amalie Moldow)
セリーナ・ユール Selina Juul (Photo: Josephine Amalie Moldow)

セリーナは、デンマークで具体的に活動が広がっている成果の一つとして、2017年から一緒に活動している、デンマーク・コペンハーゲンの魚屋「Hav」(ハヴ)のトミー(Tommy Fishcer)を紹介してくれた。

最初にメールでトミーに連絡を取ったとき、英文メールの最後に「敬具」と日本語で書いてあるのに驚いた。日本に何度も来ているそうだ。

2017年からセリーナと一緒に食品ロス削減活動を続けているトミー

Tommy Fischer (トミー・フィッシャー、以下トミー):はじめまして。

ーはじめまして。

トミー:トミー・フィッシャーです。よろしくお願いします。8代続く魚屋です。日本の熊本や、大阪の堺などで買い付けをしています。ここ(の市場)にうなぎ屋があり、ここも自分の店です。

日本語の魚の名前を知っています。たとえば、アジ、サバ、ハマチ、サケ、トロ、中トロ・・・(笑)。日本大使館の、料理人の方とも協力体制にあります。

デンマークでは、限られた種類のお魚しか食べないんです。たとえば、サバ、ニシン、タラ、サーモン(鮭)、カレイ・・・。日本では、他のお魚もたくさん食べますよね。

トミー・フィッシャー氏(筆者撮影)
トミー・フィッシャー氏(筆者撮影)

ー2年前の2017年から、セリーナさんと、食品ロスを減らす活動を始めたということですね。

トミー:そうですね、だいたい2年前です。

トミーの魚屋「Hav」の前で、シンガポールのテレビの取材を受けるセリーナ(右)(筆者撮影)
トミーの魚屋「Hav」の前で、シンガポールのテレビの取材を受けるセリーナ(右)(筆者撮影)

規格外の魚や野菜を捨てずに総菜にしてデリで販売

ー2年前からのセリーナとのロスを減らす活動について、具体的にどんなことをやったのか、教えてもらえますか。

トミー:私は「HAV(ハヴ)」という名前の魚屋を経営しています。魚屋だけでなく、同じ店名で、ナイフ屋・オーガニックの食材屋・うなぎ屋なども経営しています。

トミーさんの魚屋「HAV(ハヴ)」(筆者撮影)
トミーさんの魚屋「HAV(ハヴ)」(筆者撮影)

ここの市場には八百屋さんがあります。

この八百屋さんで廃棄される食材を毎朝見て、それを無料でもらうか、非常に安く買って、2つのお店のキッチンで調理しています。

日本で仕入れた質の高い包丁の、柄を加工して、デンマーク・コペンハーゲンの市場で販売している(筆者撮影)
日本で仕入れた質の高い包丁の、柄を加工して、デンマーク・コペンハーゲンの市場で販売している(筆者撮影)

このプラムといちごとハーブは、八百屋さんで廃棄される運命にあったものなんです。

八百屋から引き取った規格外の野菜を持つトミー(筆者撮影)
八百屋から引き取った規格外の野菜を持つトミー(筆者撮影)

このサーモン(鮭)は、骨を取る処理をするときに一緒に出てくる部分で、通常は廃棄するんです。でも、それを捨てないで、一品料理ができて、これを販売できるというのが、ビジネス上、プラスになることなんです。

トミーが八百屋から引き取った野菜(筆者撮影)
トミーが八百屋から引き取った野菜(筆者撮影)

こちらは、廃棄されるはずだった食べ物がこうなった、という例です。

捨てられる運命にあった魚と野菜を使って作った料理(筆者撮影)
捨てられる運命にあった魚と野菜を使って作った料理(筆者撮影)

でも、これを売ろうと思ったとき、「消費者は何と言うんだろう?」というのも、もちろん気になったんです。そこで、魚屋さんの前で、お客さんに試食をしてもらい、「おいしい!」という評価をもらってから、買ってもらうようになったんです。これは、お互い、Win-Winの関係と言えると思います。

この総菜は、そこのデリで売っているんです。お魚の尻尾(しっぽ)や首の部分など、お店をオープンして以来、使えなかった食材を、どのように活用することができるかに注力してきました。そういう、捨てないで活かすという方向性が、どんどん大きくなっていっています。

魚屋「HAV」のデリ。取材の最中も、絶え間なくお客さんが来ていた(筆者撮影)
魚屋「HAV」のデリ。取材の最中も、絶え間なくお客さんが来ていた(筆者撮影)

トミー:セリーナと協働体制になって2年が経ちました。フードバンクも、余剰食材を活用してくれるようになり、自分たちのお店だけではなく、市場のすべてのお店が食品ロス削減に関心を持って取り組み始めています。

ー日本でも、規格外の魚、たとえば貝の大きさがそろわない物や、輸送中にうろこが擦れた魚などを捨てずに生かしている居酒屋が、東京にできました。

トミー:そういう居酒屋さんでは仕入れも安く済むはずですね。うまい方法だと思います。

トミーはこの取材の日、シンガポールからの撮影部隊の取材を受けた(筆者撮影)
トミーはこの取材の日、シンガポールからの撮影部隊の取材を受けた(筆者撮影)

デンマークでは寄付すると消費税を払わなければならない法律がある 捨てれば消費税は払わなくてOK

トミー:セリーナと協働体制になって2年が経ちました。地元のフードバンクも、余剰食材を捨てるのではなく、活用してくれるようになってきました。自分たちのお店だけではなく、ここの市場全体が、食品ロスの削減に関心を持って、取り組み始めています。

SDGsの14番では海洋資源を守ることが目的とされている(国連広報センターHP)
SDGsの14番では海洋資源を守ることが目的とされている(国連広報センターHP)

今は、政治家が食品ロスの問題に関し、かなり議論しています。デンマークではスーパーマーケットでたくさんの食材が廃棄されています。なぜなら、それをどこかに提供すると、消費税を払わなければならない法律があるからです。廃棄すれば、その消費税は払わなくていい。それどころか、それを逆算して戻してもらうことができるわけです。本当に、変な法律になってしまっています。

先日、政権が変わりました。新しい政府は、以前の政府より、環境に関心が高く、セリーナさんも働きかけをして、その法律を変えてもらうように尽力しています。

たくさんの人々がこの地球に住んでいる中で、食料が捨てられずに活用されるよう、もうすこしうまく考えないといけません。自分たちは現場でできることをしている。その間に、政治家は法律を変える、あるいは現状を良くするために動いていきます。

私たちは、自分たちのできることをしながら、政府に働きかけをしていかなくてはなりません。

トミー(右)と筆者(左)(ウィンザー庸子氏撮影)
トミー(右)と筆者(左)(ウィンザー庸子氏撮影)

取材を終えて

「規格」は人間が決めたもの。この「規格」のために、味は変わらないのに、たくさんの野菜や果物、肉や魚が世界中で捨てられている。日本では、規格外や生産調整の廃棄は、「食品ロス」としてカウントすらされていない。

トミーは、楽しみながら、規格外の野菜や魚を捨てないで美味しく調理し、ビジネスとして利益を得る活動を毎日続けている。日本でも、同様の活動が生まれてきている。世界中で、このようなビジネスが広がることを心から祈っている。

謝辞

取材に際し、デンマーク語を日本語へ通訳して下さったウィンザー庸子氏と、団体の概要を調べて下さった本多将大氏に深く感謝申し上げます。

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食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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