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「ブルーシーフード」ってなに?京都大学ではカレーライスで提供、レストランや社食もパートナーとして参加

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
京都大学「カンフォーラ」で提供している「ブルーシーフードカレー」(筆者撮影)

「ブルーシーフード」という言葉を聞いたことがあるだろうか。サバやサンマ、ホタテなど、天然の資源量が比較的豊富な海産物を指すそうだ。米国ロックフェラー財団の会長であるデイビッド・ロックフェラーJr.氏が2004年に設立した米NPO法人「セイラーズフォーザシー」の日本支局が「ブルーシーフード」を登録して発表した(2013年11月8日付、産経新聞東京版朝刊25面)。セイラーズフォーザシーの日本支局は、公式サイトでブルーシーフードガイドを公開している。

京都の缶詰プロデューサーから「ブルーシーフード」を初めて聞いた

筆者が初めて「ブルーシーフード」という言葉を聞いたのは、2018年5月25日、京都市の錦市場からすぐの缶詰工場「カンナチュール」を経営する、食品開発コンサルティング会社「カンブライト」(京都市中京区)の井上和馬(かずま)社長と話している時だった。

(ブルーシーフードは)今、京都大学の浅利(美鈴)先生のところでやっているもので、海の豊かさを守ろうっていう海洋資源と環境の保全っていうところが一つのテーマになるんです。絶滅に向かっているシーフードのこと、おそらくレッドシーフードっていう言い方されてると思うんですけど、現時点では豊富にいる魚介類を「ブルーシーフード」っていうふうに定義付けをされて言っているんですね。

毎年、漁獲量などの調査から制定されていくんですけど、「ブルーシーフード」っていうテーマを訴えることによって、海の環境資源を守っていきましょうっていうことを訴求していくプロジェクトなんですね。その活動の一環として、ブルーシーフードカレーという、そのシーフードを使ったカレーを広める、PRすることで、海の環境を守ることについても語っていく、そういうテーマの活動をされてるんです。

今は京都大学の中の学食の中だけで提供されているので、京都市水族館とコラボしてブルーシーフードについてのクイズをやるとか、イベントもされてるんですけど、もうちょっと広めていきたいよねっていうこともあって、そのお手伝いをしてるんですよ。

出典:京都「カンブライト」井上和馬社長の言葉

京都・「カンブライト」の代表取締役で缶詰プロデューサーの井上和馬(かずま)さん(筆者撮影)
京都・「カンブライト」の代表取締役で缶詰プロデューサーの井上和馬(かずま)さん(筆者撮影)

京都大学では2015年「ブルーシーフードカレー」イベントを開催

京都大学では、2015年11月17日、「エコ〜るど京大実行委員会」が企画したブルーシーフードのイベントを開催した。青い服を着た学生ら250名が「ブルーシーフードカレー」を食べた(2015年11月18日付、朝日新聞 大阪地方版・京都 27面)。当日は、「セイラーズフォーザシー」の会長でロックフェラー財団の会長のデイビッド・ロックフェラーJr.氏を招いた。京都大学生協が運営するカフェレストラン「カンフォーラ」の人気メニュー「総長カレー」をベースに作ったという。

このイベントがきっかけで、京大生協では、総長カレーの魚の具材をブルーシーフードに変えるに至った。

京都大学生協のカフェレストラン「カンフォーラ」。京大正門入って進み、すぐ左手にある(筆者撮影)
京都大学生協のカフェレストラン「カンフォーラ」。京大正門入って進み、すぐ左手にある(筆者撮影)

2017年2月7日から京都大学のレストラン「カンフォーラ」で提供スタート

京大のイベント後、学生や教職員の有志と京大生活協同組合が、京大の山極(やまぎわ)総長のアイディアを元に、一年間、試作を重ねたそうだ(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。イベントから1年3ヶ月後、ついに、レストラン「カンフォーラ」の定番メニューとなった。

具材には、ブルーシーフードに認定されているギンダラ、サバ、スルメイカ、ホタテを使い、ルーは、山極総長が研究のフィールドとしていたアフリカで食べたカレーと同じ、ココナツをベースにした(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。

2018年10月にも定番メニューとして健在

2018年10月29日、筆者も京都大学の「カンフォーラ」でブルーシーフードカレーを頼んでみた。

京都大学生協のカフェレストラン「カンフォーラ」が提供するブルーシーフードカレーのメニュー(筆者撮影)
京都大学生協のカフェレストラン「カンフォーラ」が提供するブルーシーフードカレーのメニュー(筆者撮影)

2005年から定番となっているロングセラーの「総長カレー」がベースになっていて、味にコクがある。辛すぎず、甘すぎず、ちょうどいい味。シーフードは衣をつけて揚げて、カレールーの上に乗せてある。

京大「カンフォーラ」の「シーフードカレー」(筆者撮影)
京大「カンフォーラ」の「シーフードカレー」(筆者撮影)

収益の一部は京都水族館に寄付し、ブルーシーフードの理解を広める活動に使うそうだ(2017年2月7日付、京都新聞夕刊8面)。

ヤフーの社食や全国のレストランでも

前述の「ブルーシーフードガイド」によれば、ヤフー株式会社もブルーシーフードパートナーになっている。ヤフー(株)公式サイトのCSRページを見ると、社員食堂でブルーシーフードを使った海鮮丼を提供したことが紹介されている。

ヤフー株式会社の社員食堂で提供された海鮮丼(ヤフー株式会社公式サイトより)
ヤフー株式会社の社員食堂で提供された海鮮丼(ヤフー株式会社公式サイトより)

「セイラーズフォーザシー」日本支局の公式フェイスブックページを見ると、DEAN & DELUCA(ディーンアンドデルーカ)の初のレストラン専門業態である[「THE ARTISAN TABLE」 https://www.artisantable.jp/?fbclid=IwAR3O5p5HtiFsLRagU2tFbjwYvbkRRJZWpDPT99CAvcJOaZplLTBXG-s-KTc]など、一般のレストランも賛同してパートナーになっている。

敷島製パンは2018年4月、ブルーシーフードの昆布を使った「ゆめちから入り塩こんぶチーズパン4個入り」を新発売した。国産小麦のパン生地に、フジッコの「塩こんぶ」とダイスチーズを入れて焼いたものだ(2018年4月16日付日本食糧新聞)。2018年11月13日現在、敷島製パンの公式サイトの商品紹介には載っていない。お客様窓口に電話したところ、「製造中止になりました」とのことだった。

横浜の小学校9校では未利用魚のイワシとサバを使った給食を提供

神奈川県横浜市神奈川区内の市立小学校6校では、2018年11月13日、未利用魚のイワシとサバを使った特別メニューの給食が提供される(2018年11月12日付、神奈川新聞)。

海洋資源が枯渇する一方で、魚の大きさが揃わない、漁獲量が少ない、などの理由で捨てられる魚は多い。そのような、利用されていない「未利用魚(みりようぎょ)」を給食で使い、美味しく食べてもらいながら、小学生に水産資源について考えてもらう取り組みだ。横浜市中央卸売市場と神奈川区内の小学校が連携し、「イワシのカレー揚げ」と「サバのあんかけ」が献立となった。

「おいしく、たのしく、地球にやさしく」

マグロやニホンウナギ、フグなどの海洋資源は枯渇する反面、未利用魚として捨てられる魚も多い。だからこそ、そのような未利用魚や規格外の魚を仕入れて活かす居酒屋「魚治(うおはる)」のような居酒屋や寿司屋なども登場してきている。

セイラーズフォーザシー日本支局は、公式サイトで「おいしく、たのしく、地球にやさしく」とうたっている。魚のメニューを考える時、この「ブルーシーフード」を参考にしてみたい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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