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ベトナム・イオンのオクラと日本の厳格な規格に合わず新鮮でも捨てられるオクラ 規格外のロスどう減らすか

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
フィリピン産のオクラ。日本の規格が厳しく1社で年間数百トン捨てられる(筆者撮影)

農林水産省のASEAN(アセアン)事業の寄附講座で、ベトナム・ハノイのベトナム国立農業大学に渡航している。

このプロジェクトは、農林水産省が、アセアン諸国の主要な大学と連携し、1回あたり2週間のフードバリューチェーンの講座を開催するものだ。現地の大学で学生が学ぶことにより、収穫後の農産物のロス軽減や、農民の貧困削減に貢献することなどが期待されている。

ベトナム国立農業大学で開催されている農林水産省ASEAN事業寄附講座(筆者撮影)
ベトナム国立農業大学で開催されている農林水産省ASEAN事業寄附講座(筆者撮影)

筆者は、2018年8月1日、200名弱の学生を対象に、食品ロスの講義と、ベトナムの農産物のロスを減らすための食品加工・商品開発のワークショップを実施した。

商品開発で使う農産物としては、ベトナムで実際に食品ロスになっている農産物や、学生にとって身近な、次の8つの農産物を候補として抽出した。

ライチ

スイカ

バナナ

玉ねぎ

ドラゴンフルーツ

オレンジ

マンゴー

コメ

これらについて、リアルタイムアンケートシステム、「respon(レスポン)」を活用し、どの農産物を商品開発したいかを学生に質問した。スマートフォンを経由して回答してもらったところ、玉ねぎとドラゴンフルーツを除く、上位6つが選ばれた。

リアルタイムアンケートシステム「respon(レスポン)」を使って8つの農産物についてどれを食品加工の商品開発したいか聞いた結果。上位6つが選ばれた(筆者撮影)
リアルタイムアンケートシステム「respon(レスポン)」を使って8つの農産物についてどれを食品加工の商品開発したいか聞いた結果。上位6つが選ばれた(筆者撮影)

途上国では、冷蔵・冷凍設備が整っていなかったり、国内の物流コストが高かったりなどの理由で、農産物のロスが多い傾向にある。農産物を加工することで賞味期間は長くなり、付加価値が付与され、販売価格も高くなる。

ベトナム国立農業大学で実施した、現地の農産物を加工する商品開発のワークショップ。スイカを題材にしたチームが最優秀賞を受賞した(筆者撮影)
ベトナム国立農業大学で実施した、現地の農産物を加工する商品開発のワークショップ。スイカを題材にしたチームが最優秀賞を受賞した(筆者撮影)

ベトナムのイオンではキロ単位でバラでオクラを販売

今回のプロジェクトでご一緒した食品企業の方や、ASEAN事務局の方と、ハノイにあるイオンに行った。中には2つのスーパーマーケットがあり、そのうちの1つ、FIVI MART(フィヴィマート)では、オクラがバラで売られていた。キロ単位いくらの値段が表示されていた。

ベトナム・ハノイのイオンにあるFIVI MART(フィヴィマート)で販売されている、バラ売りのオクラ。キロ単位いくらで表示されている(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのイオンにあるFIVI MART(フィヴィマート)で販売されている、バラ売りのオクラ。キロ単位いくらで表示されている(筆者撮影)

もう1つのスーパー、イオンのスーパーでも、1キロあたり25,000ベトナムドン(日本円でおよそ125円/kg)で販売されていた。一部は、おそらく1キロで袋詰めされていたが、そのほかはバラで売られていた。

ベトナム・ハノイにあるイオンのスーパーマーケットでバラで販売されているオクラ。1kgあたり25,000ベトナムドン(日本円でおよそ125円/kg。筆者撮影)
ベトナム・ハノイにあるイオンのスーパーマーケットでバラで販売されているオクラ。1kgあたり25,000ベトナムドン(日本円でおよそ125円/kg。筆者撮影)

日本では緑のネットに入って売られていることが多いが、このような販売であれば、規格は関係ない。また、消費者は、好きな量だけを選んで買うことができる。

フィリピンでは日本の規格に合わないオクラが1社あたり年間100〜200トン廃棄されている

日本では、鹿児島県や高知県など、南部でオクラが栽培され、出荷されている。冬の時期はタイやフィリピンで栽培され、飛行機で日本に運ばれる。

フィリピンには、オクラ輸出会社がいくつかある。そのうちの1社は、広大なオクラ畑を保有している。

フィリピンのオクラ畑(筆者撮影)
フィリピンのオクラ畑(筆者撮影)

収穫したオクラのうち、日本が定めた規格に照らし合わせて、規格に合わないものは捨てられる。

フィリピンで栽培し、収穫されたオクラ。多くが日本の求める規格に合わずに捨てられる(筆者撮影)
フィリピンで栽培し、収穫されたオクラ。多くが日本の求める規格に合わずに捨てられる(筆者撮影)

畑の段階で規格に合わないとわかるものもあるし、加工工場で取捨選択され、捨てられるものもある。

フィリピンのオクラ加工工場で規格により選別される様子(筆者撮影)
フィリピンのオクラ加工工場で規格により選別される様子(筆者撮影)

規格は日本が定めたものだ。が、現地で廃棄するので、食品ロスのカウントとしては「フィリピンの食品ロス」とみなされる。

日本の規格のためフィリピンで捨てられるオクラを活用できないか

このオクラ輸出会社のトップは日本人の男性だ。捨てることに甘んじていたわけではなく、いろんな工夫を試してきていた。たとえば、キロ単価を下げて、原材料として販売する。フィリピンではよく知られているような、甘酢漬け(現地語でアチャラ)にする。刻んでパンのドウ(生地)に混ぜる。マニラにある日本料理店に販売する。などなど・・・

だが、それだけでは使いきれないほど、ロスとなる規格外が生じるのだ。

筆者は、このようなフィリピンの、日本の規格外の余剰オクラを活用するフードバンクのプロジェクトに、2012年から2014年までの3年間、参加した。

解決法その1 近くで食べ物を必要としている人にシェアする

環境配慮のキーワードである「3R(スリーアール)」に照らし合わせて考えると、最優先とされるのは「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」だ。ロスを出さない、減らすこと。とはいえ、規格通りに育つわけではない自然の農産物で、発注を受けている量に合わせようとすると、発注量(必要量)以上に栽培・製造しないと、受注できない、すなわち、商売にならない。

余る前提で作るわけで、そうなれば、余ったものを、必要なところにつなぐことだ。まずは近くの人に、ということで、大学のシスターに届けた。

規格外の大量のオクラの寄贈を受け取るシスターとアシスタント(筆者撮影)
規格外の大量のオクラの寄贈を受け取るシスターとアシスタント(筆者撮影)

とはいえ、出てくる規格外のオクラが大量過ぎて、使いきれない。

日本の規格に合わないため捨てられるオクラ(筆者撮影)
日本の規格に合わないため捨てられるオクラ(筆者撮影)

そこで、シスターが時々通っている、フィリピンのアエタ族のところまで行った。

フィリピン・アエタ族の子どもたち(筆者撮影)
フィリピン・アエタ族の子どもたち(筆者撮影)

しかし、アエタ族が住んでいるのは山の中だ。途中、水牛が歩いて荷物を運んでいるような川を、四駆の車(四輪駆動車)で乗り越えた。その後も、道なき道を、砂埃を立てながら、ようやく到着した。ここまで定期的に運ぶのは困難そうだ。

解決法その2 国内の遠方で食べ物を必要としている人にシェアする

次に考えたのは、フィリピンの首都、マニラまで、この規格外のオクラを運ぶことだ。だが、フィリピンは、国内の物流コストが高い。電車網が普及しているわけではない。高速バスは毎日走っているので、それに載せてもらったらどうだろう?A地点からB地点まで運び、マニラの到着地で人が待ち受ける。でも、メトロマニラは渋滞の嵐だ。いつ、何時に着くのかわからない。

そこで、運送会社に依頼し、社会貢献の一環として、荷物を運んだ後の帰りのカラのトラックにオクラを載せてもらうことにした。

フィリピン・マニラの子ども向け施設でオクラを受け取る子どもたち(写真:施設提供)
フィリピン・マニラの子ども向け施設でオクラを受け取る子どもたち(写真:施設提供)

最終的には5.8トンのオクラを44回運び、16の施設で活用してもらった。「オクラばかりで飽きた」という声もあった。

解決法その3 菓子などに食品加工する

筆者が青年海外協力隊の時に赴任していた大学、Tarlac State Universityの食品加工の部門にお願いし、オクラで作る菓子や料理のレシピを13種類作ってもらった。このレシピを、マニラでオクラを寄付している16の福祉施設の職員たちに渡し、活用してもらった。

フィリピンのTarlac State Universityで考案してもらった、オクラの食品加工レシピ13種類の試作品(筆者撮影)
フィリピンのTarlac State Universityで考案してもらった、オクラの食品加工レシピ13種類の試作品(筆者撮影)

解決法その4 賞味期間の長い食品に加工する

これら13種類のレシピは、マニラの子ども向け施設では役に立ててもらった。とはいえ、賞味期間がそんなに長いわけではなく、調理したら、すぐ食べなければならない。

そこで、フィリピン・ルソン島の中都市、Tarlacの行政に依頼し、オクラヌードルの加工方法を、Tarlac State Universityの教職員と学生40数名に研修してもらうことにした。オクラヌードルであれば、製造してから6ヶ月間は賞味期間として保管することができる。

生のオクラを刻んで、麺のドウ(生地)の中に練り込む。

Tarlac State Universityでオクラヌードル加工法の研修を行う行政職員(赤い服)(筆者撮影)
Tarlac State Universityでオクラヌードル加工法の研修を行う行政職員(赤い服)(筆者撮影)

それを、中国製の製麺機械で延ばしていく。

フィリピン・Tarlac State Universityの教職員と学生たち40数名にオクラヌードルの加工方法を研修する行政の職員(赤い服の2名が行政職員。筆者撮影)
フィリピン・Tarlac State Universityの教職員と学生たち40数名にオクラヌードルの加工方法を研修する行政の職員(赤い服の2名が行政職員。筆者撮影)

麺ができたら、茹でる。茹で上がったものは、日本の蕎麦のようだ。

茹で上がったオクラヌードル。日本の蕎麦のようにも見える(筆者撮影)
茹で上がったオクラヌードル。日本の蕎麦のようにも見える(筆者撮影)

茹でたものを、四角い型に入れ、300度近い温度の揚げ油で揚げる。

四角い型に入れて成型し、300度近い揚げ油で揚げる(筆者撮影)
四角い型に入れて成型し、300度近い揚げ油で揚げる(筆者撮影)

揚げたものを冷ましてパッケージングして出来上がり。賞味期限は6ヶ月先に設定できる。

出来上がったオクラヌードル(筆者撮影)
出来上がったオクラヌードル(筆者撮影)

こんな苦労しなくてもそもそも規格を緩和すればいいのでは?

ここまで説明しておいてなんだが、そもそも規格そのものが無ければ、こんなに苦労する必要はないのではないだろうか。

今回、ベトナム・ハノイのイオンで見たように、バラ売りで、キロ単位もしくはグラム単位で売れば、規格は関係ない。

フィリピンで売られているオクラは、日本のものとは品種が違い、切ると断面が丸くなるものだ。長さが長くても短くても、曲がっていても、関係なく、マニラのショッピングモールではラップにくるんで売られている。地方の市場ではバラで売っている。オクラの販売にネットは必要なのだろうか。

フィリピンのショッピングモールのスーパーで売られているオクラ(筆者撮影)
フィリピンのショッピングモールのスーパーで売られているオクラ(筆者撮影)

SDGsでは「2030年までに世界の食料廃棄を半減する」

SDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までに世界の、小売レベルと消費レベルでの食料廃棄を半減する、という目標が定まっている。

ゴールの12番では、適量を作る必要性も謳われている。

SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)
SDGs(持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)

厳しい規格を決めて、それ以外を排除するやり方をこの先も続けていくならば、先進国が栽培・製造を依頼している途上国では、自国で食べない農産物や食品の廃棄が増え続けるばかりではないだろうか。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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