「食品ロスは家庭じゃなくて店だろ!」その実態は

家庭ごみの集積場から出た賞味期限・消費期限手前の食料品(NHK取材時に筆者撮影)

政府が「2030年までに家庭のロス半減」数値目標設定

食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らすため、政府は、家庭から出る食品ロス量を2030年までに半減する(2000年度比)目標を設けた。この削減目標は、2018年6月19日に閣議決定した「第四次循環基本計画」に盛り込み、2030年までの達成を目指すという。

環境省によると、家庭から発生した食品ロス量は、2015年度(最新の値)で289万トン。2000年度と比べると33%削減したが、ここ最近では下げどまっている。

この目標は、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)を踏まえている。2030年までに世界で達成する17の目標を定めたものだ。

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)(国連広報センターHPより)

17の目標のうち、12番目は「つくる責任、つかう責任」。この中に、さらに細かく箇条書きでターゲットが定められており、3番目の12.3に次のように書かれている。

2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。

出典:国連広報センターHPより

小売レベルと消費(者)レベルにおいて「半減」(半分に減らす)という数値目標が定まっている。

日本政府が発表した今回の数値目標は家庭のみだ。企業(事業者)に関しては、すでに業界ごとに農林水産省が削減目標の指標を発表している。

農林水産省が定めている食品産業 廃棄物発生抑制目標値(農林水産省発表資料HPより)
農林水産省が定めている食品産業 廃棄物発生抑制目標値(農林水産省発表資料HPより)

今回のような、全体の数値目標の事業者版については、今後、農林水産省と環境省が連携して発表する予定のようだ。

「食品ロス?家庭じゃなくて店だろ」

Twitterでは「食品ロス?家庭じゃなく店だろ」という声が上がっている。

本当に家庭由来の食品ロスは少ないのだろうか。

日本の食品ロスの半分近くは家庭由来

2018年4月17日、農林水産省と環境省が発表した、2015年度の食品ロス646万トンの内訳を見てみる。家庭からが289万トンで約45%。事業者が357万トンで約55%。

家庭から出る食品ロスは全体の半分近くを占めるのだ。

日本の食品ロス646万トンの内訳(2018年4月17日、農林水産省および環境省発表の、2015年度の数値より筆者グラフ作成)
日本の食品ロス646万トンの内訳(2018年4月17日、農林水産省および環境省発表の、2015年度の数値より筆者グラフ作成)

筆者も講演でクイズ「日本の食品ロスの8割以上は事業者由来である」をやる。丸かバツかを答えてもらうと、長野県で開催された、数千人の来場者があった食育推進全国大会では、参加者の9割近くが「丸」と答えた。多くの人が「家庭より企業が出す方が断然多い」と思っている。

新しい日付のを取ると日付の近いのが残り「店が」廃棄コストを払う

しかも、消費者が由来となる食品ロスは、家庭で起こるだけではない。店でも起きている。

事業者由来の中には、買い物の時、消費者が店の棚の奥に手を伸ばして新しい日付のものを買うため、古い日付のものが残ってしまい、割引しても売れ残ってしまって廃棄するものもある。これは事業者由来にカウントされるが、原因は消費者(家庭)とも言える。

筆者が2017年9月から2018年6月20日まで講演した中で、609名にアンケートをとった。「買い物する時、店の棚の奥に手を伸ばして賞味期限表示の新しいものを取ったことはありますか?」アンケートは、朝日ネットが開発したリアルタイムアンケートシステム「respon(レスポン)」を活用した。

その結果、609名中、約89%に相当する538名が「はい」と答えた。「いいえ」は11%の67名。「わからない」が4名。

筆者アンケート(n=609)の結果よりグラフ作成「店で買い物する時、賞味期限の新しいのを取ろうと奥へ手を伸ばして取ったことはありますか?」
筆者アンケート(n=609)の結果よりグラフ作成「店で買い物する時、賞味期限の新しいのを取ろうと奥へ手を伸ばして取ったことはありますか?」

知らなかったけど改善するという人も

家庭と企業と、どちらからどのくらいの割合で食品ロスが出ているか知らなかったが、半分近くも家庭から出ていると知り、改善する、という人もいた。

フードドライブでシェアしようという呼びかけ

シェアしようよ、と呼びかける人もいる。

東京都練馬区や大田区ではフードドライブが始まった。すでに東京都世田谷区や文京区では、余剰食品を受け付ける常設の窓口ができている。

「家庭だけじゃない、事業者だって」

もちろん、事業者のロスへの指摘もある。

事業者のロスについては、2012年10月から食品ロスに繋がる商慣習の緩和のためのワーキングチームが組まれ、業界横断して取り組み、賞味期限の延長や賞味期限の年月日表示から年月表示化、3分の1ルールの納品期限や販売期限の緩和など、少しずつ変わってきているところだ。

コレクティブ・インパクト(CI)でどの立場の人も関わる

消費者に呼びかけると「家庭じゃない、企業だ」という声が上がる。コンビニの食品ロスの記事を書くと「コンビニばかり批判して。他だって出してる」と言われる。メーカーのロスを言うと「メーカーじゃない、小売が欠品すると取引停止にするから多めに作るんだ」と言われ、小売のロスに言及すると「お客様が買いに来たとき、無いと困るから欠品しないようにしてるんだ」と言われる。すべては繋がっているのだ。どこが悪い、自分じゃない、と言っても始まらない。

世界的に注目されている「コレクティブ・インパクト(CI)」は、企業や行政、NPOなど、立場の異なる組織が、お互いの強みを活かして社会的課題の解決に取り組むアプローチを指す。様々な組織の人が集い、平等な立場で議論し、共通の認識を持ち、目標設定して社会的課題の解決に向かっていく。食品ロス問題への取り組みも、「家庭じゃない店でしょ」ではなく、消費者も企業批判だけでなく、それぞれの立場が皆で臨む姿勢でありたい。