捨てられる米(コメ)をどうすれば減らせるか

(写真:アフロ)

1971年から実施されてきた米(コメ)の減反政策が、TPPに関する議論をきっかけに、2018年度産より廃止となった。減反政策とは、価格の低下を防ぐため、作付面積を縮小したり、生産量を抑制したりするなどの方策でコメの過剰生産を抑えるものである。減反政策が廃止され、生産量が増加することで余剰が出て廃棄になることも考えられるが、まだ始まったばかりで、米(コメ)市場への影響はわからない。

田植えが始まった田んぼ。雲が映っている(筆者撮影)
田植えが始まった田んぼ。雲が映っている(筆者撮影)

あるスーパーでは「精米して1ヶ月経ったものはすべて廃棄」

地方のあるスーパーマーケットを取材したところ、袋入りの米(コメ)は、「精米して1ヶ月経ったものは商品棚から撤去して廃棄している」と言う。これを聞いてから、スーパーへ行くたびに袋の精米年月日を見るが、確かに、何ヶ月も経った米(コメ)は棚に並んでいない。

袋入りでスーパーやコンビニで販売される米(コメ)の多くには精米年月日が表示される(筆者撮影)
袋入りでスーパーやコンビニで販売される米(コメ)の多くには精米年月日が表示される(筆者撮影)

最近では1合ずつパックされた米(コメ)も市販されている。これらは精米年月日と賞味期限とが併記されており、6ヶ月か1年くらいのものが多い。

1合ずつパックされたブランド米(まい)の裏面表示。精米年月日と賞味期限とが併記されている(筆者撮影)
1合ずつパックされたブランド米(まい)の裏面表示。精米年月日と賞味期限とが併記されている(筆者撮影)

大量に炊いてから捨てる米(コメ)も

米飯加工会社を取材したところ、製造ラインをいったん回すと、10キロ以上の米飯が自動的に炊けてしまうため、たとえ1キロだけ必要だとしても、残りを廃棄しているという事例もあった。

炊いたものの、製造ラインで必要量以上が炊けてしまい、商品としては流通できない米飯(筆者撮影)
炊いたものの、製造ラインで必要量以上が炊けてしまい、商品としては流通できない米飯(筆者撮影)

最近ではフードバンクに寄付を始めている。筆者が取材した日も、フードバンクが車で取りに来ていた。

炊け過ぎてしまい不要となった米飯を受け取りに来たフードバンク団体(筆者撮影)
炊け過ぎてしまい不要となった米飯を受け取りに来たフードバンク団体(筆者撮影)

米(コメ)加工メーカーでは「精米し直したり業務用にしたり」

ある米(コメ)加工メーカーは、出荷したものの、返品されてきた米(コメ)は、精米し直して活用したり、集団給食や飲食店などで使う業務用に回したりするので、余剰や廃棄は出にくいと語る。

百貨店のもったいないセールで販売されていた米(コメ)。精米してから数日しか経っていなかった(筆者撮影)
百貨店のもったいないセールで販売されていた米(コメ)。精米してから数日しか経っていなかった(筆者撮影)

百貨店が行なう「もったいないセール」や「ギフト解体セール」などへ何度か行ってみると、精米して数日しか経っていない米(コメ)が売られていることもあった。玄米の状態で長く保管しておいた「古米」を精製したものなのかもしれない。

フードバンクには輸送途中で包装破損したものが寄贈

米(コメ)の廃棄理由は、精米年月日からの経過日数だけではない。輸送途中に袋が破損したものなども該当する。

筆者が食品メーカー勤務時代に食品を提供していたフードバンク、セカンドハーベスト・ジャパンには、スーパーに納品されるまでの間の輸送途中で袋に破れが生じたものが寄贈されていた。袋全体が破損してこぼれたわけではないので、わずかな破れであれば、セロテープで留めれば問題なく使うことができる。

静岡県のフードバンクふじのくにへ寄贈されていた米(コメ)(筆者撮影)
静岡県のフードバンクふじのくにへ寄贈されていた米(コメ)(筆者撮影)

韓国のお祝い事で使う米(コメ)輪を使い終わった後に寄贈

韓国では、お祝い事に「米(コメ)輪」が飾られる。筆者が食品メーカー退職後、セカンドハーベスト・ジャパンで広報を務めていた時、韓国の音楽グループから複数回にわたって米(コメ)輪の使い終わったものの寄贈があった。

お正月のお祝いで作られた寿司。日本人にとっても韓国人にとっても、米(コメ)は日常の食生活やお祝い事に深く根付いている(筆者撮影)
お正月のお祝いで作られた寿司。日本人にとっても韓国人にとっても、米(コメ)は日常の食生活やお祝い事に深く根付いている(筆者撮影)

捨てられる米(コメ)をどうすれば減らせるか

様々な理由で捨てられる米(コメ)。どうすれば減らせるか。

「精米して1ヶ月経ったものは廃棄」などの商慣習の緩和

スーパーやコンビニなどで、精米してから1ヶ月経ったものを処分する、などの規則や商慣習があるならば、その期限を少し緩和することは難しいだろうか。冒頭のスーパーでは、すでにフードバンクへの寄付を始めている。

スーパーの棚にある米(コメ)。精米年月日をチェックすると、日が経ったものはもう置かれていないことがほとんどだ(筆者撮影)
スーパーの棚にある米(コメ)。精米年月日をチェックすると、日が経ったものはもう置かれていないことがほとんどだ(筆者撮影)

備蓄米の活用

農林水産省によれば、備蓄米の活用は難しいようだが、これを活用できないだろうか。平成30年産米等の作付動向について(第1回中間的取組状況)によれば、備蓄米を増やした都道府県はゼロで、現状維持もしくは減少させている都道府県の方が多いようだが、廃棄されたり飼料用に回ってしまったりするのはもったいない。

5月25日は「食堂車の日」。駅弁や弁当にも欠かすことのできない米(コメ)(筆者撮影)
5月25日は「食堂車の日」。駅弁や弁当にも欠かすことのできない米(コメ)(筆者撮影)

米(コメ)専用の冷蔵庫も

米(コメ)の保存に適した温度で保管できる貯蔵庫もある。静岡県のフードバンクふじのくにへ行ったとき、見せていただいた。

米(コメ)を保管するのに適した貯蔵庫。静岡県のフードバンクふじのくにで(筆者撮影)
米(コメ)を保管するのに適した貯蔵庫。静岡県のフードバンクふじのくにで(筆者撮影)

缶詰加工する

缶詰に加工すると、理論的には半永久的に日持ちする。食品の保存に詳しい、元東京農業大学教授の徳江千代子先生は、味の濃いものであれば10年以上持つという実験結果を述べていた。

炊いてから缶詰にするのではなく、米(コメ)から入れて炊くのと缶詰加工とを同時に行なう。京都市のカンブライトにて(筆者撮影)
炊いてから缶詰にするのではなく、米(コメ)から入れて炊くのと缶詰加工とを同時に行なう。京都市のカンブライトにて(筆者撮影)

京都市の株式会社カンブライトでは、個人でも、少量から缶詰加工の体験をさせてもらうことができる。人数が増えたほうが、一人あたりの参加費は安くなる。作った缶詰は持ち帰ることができる。筆者も、京都市役所の職員の方達と一緒に参加して、タコ飯の缶詰を作る体験をした。

京都市のカンブライトで京都市役所の職員の方達と一緒に作ったタコ飯の缶詰(筆者撮影)
京都市のカンブライトで京都市役所の職員の方達と一緒に作ったタコ飯の缶詰(筆者撮影)

家庭ではペットボトルに入れて保管を

気温が上がってくると、コメは傷みやすい。筆者は、農家の身内が作ってくれた米(コメ)を2リットルサイズのペットボトルに入れ替えて、冷蔵庫の野菜室で保管している。虫がつかないし、計量する時もカップに注ぎやすく便利だ。ぜひ試してみて欲しい。

ペットボトルに入れて冷蔵庫の野菜室で保管すると日持ちするし美味しい(筆者撮影)
ペットボトルに入れて冷蔵庫の野菜室で保管すると日持ちするし美味しい(筆者撮影)

時間と労力をかけて作られた貴重な米(コメ)。

日本中で、米(コメ)の無駄がなくなることを願っている。