なぜ食品ごみは減らないのか ~環境衛生週間に廃棄カツ横流し事件を振り返る~

食品廃棄物リサイクル工場に集まる大量の食料品(写真:ロイター/アフロ)

9月24日から10月1日まで、環境衛生週間が始まった。9月25日「清掃の日」は ”もったいない”で有名なワンガリ・マータイさんの命日でもある。2017年8月末、愛知県の食品製造業者が産業廃棄物処理業者に約2000万円の損害賠償を求めて提訴した。多くの人に衝撃を与えた、2016年1月の廃棄カツ横流し事件。果たして産業廃棄物処理業者だけが悪かったのだろうか。

9月26日、日本食糧新聞社の食品産業文化振興会が主催したセミナー「食品ロスの削減と容器包装の高機能化事例」に参加した。農林水産省食品産業局バイオマス循環資源課食品産業対策室の講師の方が、2016年1月に発生した廃棄カツ横流し事件に言及し、「産業廃棄物処理業者だったダイコーに批判が集まった。その後、関係者に詐欺罪等の有罪判決が下され、確かに責任はあるが、廃棄物処理法においては排出事業者である食品事業者に処理責任がある」と述べた。私も同感で、2016年1月に出演したテレビ東京系の報道番組WBS(ワールドビジネスサテライト)でもそのように述べた。元食品メーカー勤務者として、なぜダイコーだけが非難され、事業者側が「被害者」になっているのか、不思議でならなかった。

東京都23区内の家庭ごみから抽出された、賞味期限・消費期限前の食品(NHK撮影時、取材を受け同行した筆者撮影)
東京都23区内の家庭ごみから抽出された、賞味期限・消費期限前の食品(NHK撮影時、取材を受け同行した筆者撮影)

360度全方向すべての関係者に責任はある

廃棄物処理法において、事業者は、その事業活動に伴って排出されるすべての廃棄物において、自らの責任において適正に処理しなければならない。たとえ廃棄物処理業者に処理を委託した場合であっても、排出事業者に処理責任が残る。不適正な処理業者に自社の廃棄物を委託していたことが判明すれば、廃棄物処理法の罰則や措置命令の対象になる。となれば、社会的評価や信頼性も失墜する。

2016年1月当時の報道では、多くのマスメディアが、産業廃棄物処理業者を「悪者」として扱っていた印象を受けた。だが、プラスティック片が混入しており、もはや安全な食品とはいえないものを、転売可能な状態で社外に出していたことにも問題はあったと考える。事件の起きた後になって、事業者は「今後は(転売できないよう)汚泥を混ぜて廃棄物として処理に出す」と発表したが、食品事業者自身が「包装を破損させてから出す」「スプレーをかけて出す」などの処置も最初から考えることができたからだ。

さらに言えば、過去6年間もダイコーに監査に入っていて見抜けなかった行政(県)にも落ち度はあるし、不正流通をしていた事業者(卸業者・小売業者)にも責任はある。食品製造業者、産業廃棄物処理業者、卸売業者、販売事業者、行政、すべての関係者に責任はある。

忘れてはならないのは、われわれ消費者の責任だ。カツ1枚の値段で5枚も買える、というところに何の疑問も持たず、ただ「安い」というだけで買っていた消費者の責任は否めない。買う人あってこそ、商売が成り立つのだ。あの事件で悪者を批判し、他人事のような顔をしていたわれわれこそ、責任の一端を担っているという自省が必要だと考える。

なぜダイコーだけが悪者にされたのか

情報量があまりにも過剰で、受け手である我々が処理しきれず、「他人事」化してスルーする傾向があるのを感じる。最近の報道でも、誰か特定の人物、あるいは組織が「犯人」「悪者」となり、批判の対象となる傾向がある。どんな分野の報道であっても、他人事にしてしまい、何か事件・事故が起きたとき、その報道を目にしたとき、無意識に「悪いのは誰か」を特定しようとしている自分がいる。

少し話が飛躍するのだが、どんな分野においても、インプットは重視されても、アウトプットはおざなりになりがちではないか。「食べる」と「出す(排泄)」は身体の仕組みとして一つのセットになるが、食事の栄養バランスや食材の栄養価は注目されても、トイレや排泄の問題はその次になる。消費生活には必ず「捨てる」「廃棄」が伴うが、人の意識はそこへは向きにくい。備蓄食料を貯めておくことを意識しても、その食料が賞味期限接近したときにどう捨てずに活用するのか、どう処理するかまでは仕組み化されていないことが多い。大学で講義を担当すると、みな、単位を確保すること(インプット)には必死だが、その講義で学んだことをきちんとアウトプットできている学生は限られるのを感じる。ビジネスの世界では、アウトプット(出力)するだけでなく、きっちりアウトカム(成果)まで目指すようにと、所属組織から指示を受ける。

われわれ消費者に「排出者責任」はないのか

事業者に排出責任が問われると同様、われわれ消費者には「排出責任」はないのだろうか。市町村における平成27年度(2015年度)のごみ処理事業経費は約20兆円(19兆495億円)で、国民一人あたりのごみ処理経費は年間15,200円となっている。2015年秋の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が定められた通り、地球温暖化問題や食料問題もふまえ、「2030年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」という目標が決められた(ターゲット12.5)。食品ロスに関しては「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料の廃棄を半減させる」という数値目標も定まっている(ターゲット12.3)。このSDGsを受けて、日本においても、ごみ、および食品ロスの削減対策が進んできている。家庭においても、排出するごみを少なくする責任はあるはずだ。

2015年、国連サミットで決まったSDGs(持続可能な開発目標、出典:国連広報センターHP)
2015年、国連サミットで決まったSDGs(持続可能な開発目標、出典:国連広報センターHP)

家庭ごみを減らすための施策(1)家庭ごみ有料化制度

石川県金沢市は、平成30年(2018年)2月1日から家庭ごみ有料化制度を始めると発表した。その理由として、家庭ごみ有料化制度の先行導入自治体において、減量化や資源化に一定の効果が見られたから、などとしている。

平成23年度(2011年度)に実施された環境省「廃棄物・リサイクル分野における3R・低炭素化の推進に係わるアンケート調査」によれば、平成17~19年度に家庭系一般廃棄物の有料化を実施した自治体のうち、可燃ごみを対象に袋による単純比例制を導入している自治体54件を対象とし、可燃ごみの有料化前と有料化3年目について、年間の一人あたりのごみ量変化をみると、54件中47件で減少している。54件のごみ平均値は、有料化実施前が0.20トン/人に対し、有料化3年目では0.16トン/人となっている。他のデータを総体的に見ても、家庭ごみの有料化制度は、ごみの減量化に寄与すると言える。

家庭系可燃ごみの有料化前後の一人当たり可燃ごみ収集量(出典:環境省「廃棄物・リサイクル分野における3R・低炭素化の推進に係わるアンケート調査」平成 23 年度実施)
家庭系可燃ごみの有料化前後の一人当たり可燃ごみ収集量(出典:環境省「廃棄物・リサイクル分野における3R・低炭素化の推進に係わるアンケート調査」平成 23 年度実施)

家庭ごみを減らすための施策(2)使いキリ・食べキリ

家庭ごみの有料化は有効な手段だが、すべての自治体が取り入れているわけではない。京都市が施策として市民に呼びかけている「3キリ」。このうち、1番目が「使いキリ」、2番目が「食べキリ」。100%実行するのは難しいが、結局はこれに尽きる。環境配慮の3R(スリーアール)の中でも、ごみを出さない、廃棄物の発生を抑制する「Reduce(リデュース)」が最優先だからだ。

家庭ごみを減らすための施策(3)水キリ

京都市の「3キリ」の3番目に来るのが「水キリ」。家庭ゴミの約4割が食品ロスで、食品は多くの水分を含むため、水分を切るだけでもごみの重量は減ることがわかっている。

筆者は、埼玉県川口市の「クリーン推進員」への食品ロスに関する基調講演を依頼され、7月5日、600~800名の方へ講演した。それに先立ち、生ごみを乾燥させる機器を川口市の助成金制度を利用して購入し、乾燥させることでどれくらい減るのか、測定を続けている。

2017年6月16日から9月25日までの合計74回計測したところ、乾燥前の平均値が467グラム、乾燥後の平均値が197グラム、重量比で61%が削減できることがわかった。

家庭ごみ74回分を乾燥させる前後の重量変化(筆者データ、2017年6月16日~9月25日までの74回計測)
家庭ごみ74回分を乾燥させる前後の重量変化(筆者データ、2017年6月16日~9月25日までの74回計測)

途中経過について、7月に京都府立大学での「食品ビジネス論」の講義で発表したところ、大学外のある先生から「かえってCO2を排出し、環境への負荷をかけるのでは」との懸念を伺った。また、この乾燥機は月に1000円程度の電気代を負担することになる。

これについて、京都市環境政策局 循環型社会推進部 ごみ減量推進課 課長補佐の小川健一郎氏に伺ったところ、「生ごみの80%が水分であり,ご指摘の観点もあることから,京都市では,水キリ,自然乾燥,新聞に包んで乾燥を推奨しています。水キリ等によって,ごみが減る(軽くなる,ごみ袋代が安くなる),イヤなにおいが減る,ごみを燃やすエネルギーが減る(CO2が減る)などのメリットがあります」との回答をいただいた。

生ごみの重量が減るのは、続けていくと、だんだんやり甲斐を感じてきた。が、一方で、電気代も気になり、「もっと電気代のかからないタイプの生ごみ処理機を買えばよかったのだろうか」と思ったりもした。ここ最近は、晴天の日もあったので、ベランダに生ごみを干して乾かし、ある程度の重量を減らしてから乾燥機にかける、数日分をまとめて乾燥機にかける、などの策も試してみた。これについては、今後も検討を続けていきたい。

提言:「面倒くさい」を「楽しい」に変え、各自治体が全国一を狙う

愛媛県松山市は、環境省が毎年発表する「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」の人口50万人以上の都市の部で、9年間、全国で最小の、一人あたりのごみ排出量(家庭・事業系の合計)を誇ってきた。だが、今年3月の発表では、なんと、一円玉2枚分、つまり、たった2グラムの僅差で、東京都八王子市に一位の座を譲らざるを得ず、10年間連続一位は達成できなかった。2017年6月8日、松山市は市の公式サイトでごみ減量(リデュース NO.1 again プロジェクト ★ Matsuyama)を発表し、ふたたび一位の座を取り戻すべく、頑張っている。

自分の住んでいる自治体が全国のトップクラスになるのは誇らしい。しかも、ごみを減らせば、その分の処理費を、福祉や教育に活用することができる。働いて納めた税金を、より有効活用できる。私の住んでいる埼玉県川口市は、今年3月に発表された環境省の「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」の人口50万人以上の都市の部で、一人あたりのごみ排出量の少なさが、全国5位だった。ベスト5を見てみると僅差であり、全国一位を狙えるポジションにある。今年7月の講演でそのことを話したところ、11月に川口市の商工会議所でおこなう講演のメインタイトルは、主催者である商工会議所からのリクエストにより「川口市は一位を狙うことができる!」に決まった。

家庭ごみを減らすための施策や工夫は、多くの方が様々なアプローチをとっている。筆者も、この問題に関わるまで、生ごみを減らそう、水分を切ろうなどと考えたこともなかったし、やったこともなかった。同様の人は多くいると思う。そんな中、この3ヶ月間、生ごみの乾燥とデータ取りを続けてきたら、なんだかゲーム感覚で楽しくなってきた。ごみ処理の「面倒くさい」という気持ちを「楽しい」「やりたい」に転換することができれば、継続できる。それが難しいからこそ、ごみ問題は永遠の課題なのだが。