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競技者急増の「カバディ」に戦国時代到来、19日に全日本選手権開幕

平野貴也スポーツライター
【画像提供:日本カバディ協会】

 カバディの全日本選手権が、11月19、20日に国立オリンピック記念青少年総合センター大体育室で行われる(観戦無料)。マイナースポーツの一つに挙げられる競技だが、近年は人気漫画「灼熱カバディ」の影響で社会人を中心に競技者が急増。今大会は男子26チーム、女子4チームが参加し、日本一の座を争う。来年に延期された第19回アジア競技大会の日本代表候補選考も兼ねており、どのような選手が活躍するかも注目される。

「大正大学」系の時代に異変、前哨戦は新チームが優勝

前哨戦の東日本選手権を優勝したBabylon Breakers(バビロン・ブレイカーズ)【チーム提供】
前哨戦の東日本選手権を優勝したBabylon Breakers(バビロン・ブレイカーズ)【チーム提供】

 特に競技者が増加している男子は、新たな時代を迎えている。日本におけるカバディは、発祥の地であるインドと関係性が深い仏教系の大正大学にカバディ部が創設されたことから、国内に少しずつ広まった経緯がある。そのため、国内大会では大正大学か、またはOBチームが優勝争いをするのが常だった。

 前回王者のBUDDHA(ブッダ)、同準優勝のLapis Lazuli(ラピス ラズリ)、3位のABHIJIT KABADDI SANGA(AKS=アビジット カバディ サンガ)は、いずれも大正大学OBが中心となって結成されたチームだ。

 しかし、その構図が崩れ始めている。9月の東日本選手権では、大東文化大学サークルOBを中心に立ち上げた新チームのBabylon Breakers(バビロン・ブレイカーズ)がAKSやBUDDHAを破って優勝した。主将を務める千葉央人は「東日本大会は、あくまでも前哨戦。全日本でもう一度BUDDHAを倒して優勝したい。今までは、大正大の時代だったけど、新しい風を吹かせたい」と世代交代にかける意気込みを示した。チーム名は、大東文化大の同期で今季インドのプロリーグに挑戦した阿部哲朗が考案したもので「王国を打ち破る者たち」の意味合いが込められているという。

3連覇を狙う王者BUDDHA「最強でなければならない」

昨年決勝、攻撃を仕掛けるBUDDHAの畠山(14番)。カバディの攻撃(レイド)は、敵陣に1人で入り、最大7人を相手にして、タッチをして自陣に戻り、タッチ数分の得点を得る【筆者撮影】
昨年決勝、攻撃を仕掛けるBUDDHAの畠山(14番)。カバディの攻撃(レイド)は、敵陣に1人で入り、最大7人を相手にして、タッチをして自陣に戻り、タッチ数分の得点を得る【筆者撮影】

 Lapis Lazuliの代表を務める高野一裕は「これまでは大正大学系列のチームが優勝争いをしていましたが、昔のようにはいかないなと思っています」と続々と現れる新興勢力に警戒心を示した。AKSの主力で男子日本代表監督である新田晃千も「以前のように大正大のOBが大会の時だけ集まる同窓会カバディでは、通用しない」と時代の変化を認める。

 ただし、王者は簡単に日本最強の座を渡すつもりはない。3連覇を狙うBUDDHAの主軸を担う下川正將は「東日本も3連覇を狙う大会でしたが、敗戦はショックでした。もうあんな気持ちにはなりたくないと気合いが入っています。強いチームも増えていますが、BUDDHAは最強、打倒ブッダと言われるチームでなければいけないというプライドがあります」と闘志を燃やした。

 東日本大会から現役復帰した元日本代表のベテラン太田雅之や、2018年にチャレンジカップでMVPを受賞した若手の佐藤優らを補強。課題だった人数不足を解消し、主力選手が日本代表練習に参加するだけでなく、チーム練習も開始。3連覇での最強証明に全力を挙げている。「日本最強の僧侶」河野雅亮をはじめ、日本代表でも主力の下川、澤津慎、畠山大喜ら攻守両面で活躍できる選手が揃う、絶対的な優勝候補だ。

新世代の旗頭、高校生チーム「ジモディ」も優勝に意欲

唯一の高校生チーム「ジモディ」は、埼玉県・自由の森学園高校のチーム。中学から競技を始めた選手も多い【チーム提供】
唯一の高校生チーム「ジモディ」は、埼玉県・自由の森学園高校のチーム。中学から競技を始めた選手も多い【チーム提供】

 BUDDHAを筆頭とする大正大学系が意地を見せるか、新世代が日本一のタイトルを奪うかが、大会の大きな構図と言える。中でも、新世代は、2011年に日本の高校で唯一となるカバディ部を発足した自由の森学園中学・高校(埼玉県)系列のチームが増えている。現役生チームのジモディに加え、OBが主体となっているJimO`b(ジモオビ)、百足(ムカデ)も若くて競技経験の長い選手が揃う。

 現役生チームのジモディは、最大7人で行う組織的な守備の完成度が魅力。全員で集まれる機会が少ない社会人チームにはない、抜群の連係力を誇る。中学1年から競技を始めたという主将の泉諒和(3年)は「守備は、誰かがきっかけを作ったら全員でフォローする」と伝統の守備に自信を示した。過去最高成績はベスト4だが「自分たちが引っ張る立場での最後の大会。優勝を目指す」と目標も高い。社会人に比べるとゲームメイクなど駆け引きの面では劣る部分もあるが、若さを生かした勢いで躍進を目指す。

 高校から競技を始めた中山憲太郎(2年)は「コロナ禍で2年生が学年閉鎖になってしまい、直前の練習が少しできなくなった部分は不安ですが、昨年の大会で初めて有観客で試合をして楽しかったので、頑張って盛り上げたい」と意気込みを語った。

台風の目は新チームか、前回大活躍のインド人選手も注目

前回大会で大活躍したインド人選手ジャラダラン マヌ ラジは、上方ManGunnersでエントリー【筆者撮影】
前回大会で大活躍したインド人選手ジャラダラン マヌ ラジは、上方ManGunnersでエントリー【筆者撮影】

 ほかに注目されるのは、赤スパッツ軍団という名の新チーム。東日本大会で準優勝したH.C.WASEDAの若い世代の主力が抜けて結成。日本代表の守備のエース格である倉嶋彪真を筆頭に、河手佑天、沼野創ら実力者が揃う。また、前回大会で驚異的な攻撃力を見せた長身インド人のジャラダラン マヌ ラジが加入した上方ManGunners(カミガタ マンガナーズ)もダークホースとなり得るチームだ。

 一方、新興チームも目立つ。鴨ディ(カモディ)は、京都大学の学生を中心に今春に立ち上がったばかり。1回戦で当たるVijeta静岡(ヴィジータ シズオカ)も同時期に結成された1年目のチームだ。

アメフト選手も参戦

 また、選手個々も興味深いキャリアや特長を持つ選手がいる。Lapis Lazuliの今井龍之介は、アメリカンフットボールX2リーグのラングラーズでプレーしている選手だが、カバディの日本代表候補にも入っており、今大会には初参加。アンクル戦隊カゴシマン(鹿児島大学カバディ同好会)の小峯凌河は、甲南高、鹿児島大の野球部で活躍。プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの小峯新陸投手の兄で、カバディでは、昨年のチャレンジカップでMVPを獲得している。

 AKSは新田が男子、井藤光圭が女子の日本代表監督。さらに、スリランカのジュニア代表経験者のガヤーン・タミーラもおり、経験豊富な選手が多い。コンビ「星のグリル」で漫才大会M-1に出場した伊藤一星は、今年のチャレンジカップMVPの若手だが、負傷欠場が濃厚だ。

女子は前回と同じ4チームの争い

女子は4チームが参加。前回はAkatsukiが優勝【筆者撮影】
女子は4チームが参加。前回はAkatsukiが優勝【筆者撮影】

 なお、女子は、前回と同じ4チームが参加。前回はAkatsuki(アカツキ)が優勝。準優勝のLapis Lazuli L、3位の横浜カバディクラブ、自由の森学園中学・高校の生徒で構成される唯一の学生チームであるコイワイ613が覇を競う。

 大会は、11月19、20日に国立オリンピック記念青少年総合センター大体育室で行われ、入退場は自由、無料で観戦できる(入場時に検温あり、マスク着用必須)ほか、日本カバディ協会公式YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCsp3yn3dvCjpuJXYDm1OPOA)でライブ配信が行われる。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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