Yahoo!ニュース

渡辺&東野、8月東京の世界バドミントン頂点へ「新たな色」の歩み

平野貴也スポーツライター
8月東京開催の世界選手権で混合ダブルス金メダルを狙う渡辺(左)と東野【筆者撮影】

 新たな色の環境で、新たな色のメダルを目指す。バドミントン日本代表で混合ダブルスの東京五輪銅メダリスト、渡辺勇大/東野有紗を擁するBIPROGY(ビプロジー)バドミントンチームが3日、都内で公開練習を行った。

 渡辺/東野は、8月に東京で開催される世界選手権で大きな期待を受ける存在だ。同大会では、2019年に銅メダル、昨年末に銀メダルを獲得(※世界選手権は、五輪の開催されない年に行われており、20年は当初、東京五輪が予定されていたため開催されていない)。東野は「ジェレミー(・ガン=日本代表混合ダブルス担当コーチ)さんも『銅、銀で、次は金だね』と話しているので、本当に3人で一つになって、次こそは金メダルを取れるように、まずは(次戦の)インドネシアオープンで良い成績を残して、徐々に(調子を上げて)世界選手権に良いコンディションで臨めるように頑張っていきたい」と意気込みを語った。

 3大会連続のメダル獲得、それもホップ、ステップ、ジャンプでの頂点到達が期待される。渡辺も「おにぎりメダルと呼んでいるんですけど、あれの銅や銀はあるんですけど、金を持っていないので、金がほしい」と中国のオイル会社トータル・エナジーズがスポンサードする主要国際大会の三角形のデザインの金メダル獲得を望んだ。

混合ダブルスは2強から4強へ、覇権を握れるか

混合ダブルス4強時代の覇権を狙う渡辺(左)/東野【筆者撮影】
混合ダブルス4強時代の覇権を狙う渡辺(左)/東野【筆者撮影】

 21年12月BWFワールドツアーファイナルズでも三角形のメダルを手にしたが、銀だった。混合ダブルスは、東京五輪まで中国の2強体制だったが、現在は渡辺/東野を含めて4強の様相を呈している。ライバルは、東京五輪で金のワン・イーリュ/ファン・ドンピン、銀のツェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(ともに中国)、21年世界選手権優勝のデチャポル・プアバランクロー/サプシリー・タエラッタラチャイ(タイ)。し烈な上位争いが予想される。

 渡辺/東野は、3月の全英オープンでは頂点に立ったが、5月のタイオープンでは、準決勝でツェン/ファンとの熱戦にファイナルゲーム21-23で敗戦。東野は「20オールの場面でちょっとしたミスが出てしまった。中国の選手は前衛がすごく速くて、タッチも早い。付いていくのが必死で、それより優位に立てないと勝てない。今は、それをテーマにやっている」と主に女子選手が務める前衛での勝負を課題に挙げた。

 一方の渡辺は、タイオープンの前に男子団体戦のトマスカップにも出場。混合ダブルスは行われない大会だが、男子ダブルスで起用された。そのため、連戦の疲労が溜まっている。渡辺は「課題は、モチベーションの維持。タイの遠征もそうだけど(連戦で)疲れてきてしまう。ケガと紙一重で難しいけど、どれだけ勝ちたいと思い続けられるか。技術やパワーは、急には上がらない。1年を通したトーナメントの戦い方で、どれだけ維持できるか。それが調子に比例する」と心身のコンディション維持をテーマに掲げた。

日本ユニシスが「BIPROGY」に社名変更、所属チームはカラーを一新

赤から青へと基調を変えた新ユニフォームで練習する渡辺/東野(手前)【筆者撮影】
赤から青へと基調を変えた新ユニフォームで練習する渡辺/東野(手前)【筆者撮影】

 精神面では、新しい環境による刺激が助けになっている。渡辺と東野が所属するBIPROGYバドミントンチームは、日本ユニシスからの社名変更に合わせ、4月にチーム名を変更。チームカラーも赤から青へと一新した。2人がそろって青いユニフォームで羽根を打つ姿を公開したのは、この日が初めてだった。

 新しいユニフォームを身にまとって、これまでとは違う色のメダルを目指す2人にとって「色」は、ちょっとしたキーワードと言えるかもしれない。所属チームの新しい名前も「色」にちなんだものだ。BIPROGYは、公共の利益を共有するという意味合いの「コモンズ」をデジタルの力で進化させる「デジタルコモンズ」をコンセプトに掲げているIT企業。前身の日本ユニシスでは、米国のユニシス・コーポレーションとの提携関係から、UNISYS(ユニシス)の赤いロゴを海外で自由には使えないこともあり、今後の海外への展開も見越して、リブランディングに踏み切った。

 新たな社名のBIPROGYは、光の屈折や反射で見られる七色(Blue、Indigo、Purple、Red、Orange、Green、Yellow)の頭文字を並べた造語。多様性や柔軟性を表現している。社名変更と同じタイミングで社員契約からプロ契約に切り替えた渡辺は「いろいろな意味で新しいスタートだと思っている。(国際大会は)連戦が続いているので気持ちの切り替えがうまくいかない部分もあるが(社名変更や契約変更による刺激や責任感が)新しい風を吹き込んでくれている。良い流れで来れていると実感している」と新体制での活動について話した。

 会社がスポーツチームを持つのは、一般的に知名度向上、社会貢献、社員の士気高揚などが目的だ。バドミントンで活躍することで、新たな社名の浸透を促すことも、実業団チームとしては一つの役目になる。国際大会での活躍も目覚ましい2人は、その中でも先頭を走る存在だ。

髪の変色にも注目?

コンスタントに好成績を挙げている渡辺/東野は、日本バドミントン界をリードする存在になりつつある【筆者撮影】
コンスタントに好成績を挙げている渡辺/東野は、日本バドミントン界をリードする存在になりつつある【筆者撮影】

 ちなみに、渡辺は個人でも「新しい色」に挑戦中だ。プロになって渡辺が変わったところはどこかと記者から聞かれた東野は「髪色」と回答。見た目は黒っぽく、普段と変わらない印象だが、カラーリングをしたばかりで、色落ちによって変色するのだという。「これから1カ月くらい遠征に行っている間に、色落ちする。最初は青で、緑っぽくなって、金になったので色を入れ直した。次は、どんな色でしょう」と笑った。

 髪やユニフォームの色だけでなく、メダルの色も今までの銅や銀から変わるのか。世界選手権では初の金が目標。そして、その先には東京五輪の銅を超える24年パリ五輪の金をも見据える。

 異なる色のメダルへの挑戦も、まずは一歩から。渡辺は「インドネシアオープンは、賞金も(世界ランキング)ポイントも高い大会。すごく競技が盛んな地域なので、観客も味方につけたり、いろいろな方に(自分たちの試合を)見てもらったりするためにも、結果を残したい」と目の前の大会に視線を移した。タイで行われた国際大会3連戦から帰国して間もないが、4日からは日本代表合宿が始まり、11日からは東南アジアに遠征し、インドネシアとマレーシアでまた3連戦。帰国後、8月に東京で行われる世界選手権で、新しい色のメダルを目指す。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

平野貴也の最近の記事