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男子は桃田の復調がカギ「粘り強いプレーを」、女子は主力復帰で王座奪還へ=バドミントン団体戦

平野貴也スポーツライター
会見の場であいさつをする男子主将の桃田【写真提供:(公財)日本バドミントン協会】

 バドミントン日本代表は12日、男女の団体戦トマス&ユーバー杯(5月8~15日、バンコク)の出場メンバーをオンライン会見で発表した。男子は桃田賢斗(NTT東日本)、女子は髙橋沙也加(BIPROGY)が引き続き主将を務める。桃田は「前回はベスト4で、満足いく結果を出せなかった。今回は、みんなの力を合わせて、優勝を目指して頑張っていきたい。一人一人がしっかりと責任を果たせる、良い雰囲気のチームにしたい」と抱負を語った。女子は、準優勝だった前回大会を負傷等で欠場したシングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)、ダブルスの永原和可那(北都銀行)、廣田彩花(丸杉)と東京五輪の代表3選手が戦列復帰。最強の布陣で2大会ぶりの頂点を狙う。

 男子トマス杯、女子ユーバー杯は、ともに2複3単の団体戦でチームの総合力が問われる。日本は、男女とも、シングルス4名、ダブルス3組、混合ダブルスから1名の計11名でチームを編成。シングルスでは、日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチが「次のパリ、ロス五輪に向け、大きな大会の経験。出場のチャンスがあればチームでサポートできるようにと考えてピックアップした」と説明した次世代のホープを4番手として選出。男子は20歳の奈良岡功大(IMG)、女子は19歳の郡司莉子(再春館製薬所)が日本B代表から抜てきされた。女子の混合ダブルスからの1名は、2016年リオデジャネイロ五輪で髙橋礼華との「タカマツ」ペアで女子ダブルス金メダルに輝いた松友美佐紀(BIPROGY)が選出された。

 昨秋に行われた前回大会では、男子がベスト4、女子が準優勝と惜しくもタイトルには手が届かなかったが、どちらも上位候補に名が挙がる。朴ヘッドコーチは「どちらも昨年より良い成績が出せるように頑張りたい」と目標を掲げた。

男子は「桃田の復調具合」と「渡辺の起用法」に注目

男子は、混合ダブルスが主戦場の渡辺(一番右)の起用法が注目される。※B代表の奈良岡は海外遠征のため撮影時不在【写真提供:(公財)日本バドミントン協会】
男子は、混合ダブルスが主戦場の渡辺(一番右)の起用法が注目される。※B代表の奈良岡は海外遠征のため撮影時不在【写真提供:(公財)日本バドミントン協会】

 男子は、2014年以来8年ぶり2度目の優勝を目指す。戦力面で気がかりなのは、エース桃田の復調具合だ。2019年は国際大会で通算64勝5敗(欠場は含まず、試合開始後の棄権は含む。以下同)で勝率92%超と圧倒的な強さを見せていたが、20年1月の交通事故後、目の手術などで長期ブランクを余儀なくされた。国際舞台に復帰した21年3月以降は、東京五輪の予選敗退も含めて18勝9敗と敗れる試合が増えている。昨年12月には腰痛でBWFワールドツアーファイナルズを棄権し、世界選手権も欠場した。3月の全英オープンで国際大会に復帰したが、準々決勝で敗退している。どこまで調子を取り戻しているかが、チームの浮沈のカギを握る。出場メンバーは単複ともに世界ランクの高い順にオーダーが組まれるため、桃田はチームの1番手を務める可能性が極めて高い。「第1試合は緊張すると思うが、良い流れを持ってこれるような、泥臭く、粘り強いプレーをしたい」と主将としての責任感をうかがわせた。

 ダブルスは、昨年12月に世界選手権で初優勝を飾った保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)と、古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)の2ペアが主軸だが、東京五輪で混合ダブルスの銅メダルを獲得した渡辺勇大(BIPROGY)の起用法がポイントになる。前回大会では、前衛タイプの保木あるいは古賀と組む形で後衛として出場した。日ごろから組むペアの連係を重視するか、渡辺の能力を生かして組み替えたオーダーで勝負するか。「男子の渡辺選手、女子の松友選手は、今は混合ダブルスの専門ですが、2人とも男女のダブルスで素晴らしいパフォーマンスをした選手(※渡辺は、引退した遠藤大由との男子ダブルスでも東京五輪に出場した)。相手(の特長や強さ)、長い大会の中での各選手のコンディションを考えて、担当コーチと作戦を考えて起用したい」と話した朴ヘッドコーチの手腕が問われる。予選グループは、強豪のマレーシア、英国、ニュージーランドと同じD組。2位以内で突破できる可能性は高いが、その先で、豊富な戦力を有する中国、インドネシアに対抗できるか。前回の成績を上回る決勝進出が、一つの目標となる。

女子は優勝候補、東野不在でも豪華布陣

髙橋沙(手前一番右)を主将とする女子代表。奥原は欠席。B代表で海外遠征中の郡司も撮影時不在【写真提供:(公財)日本バドミントン協会】
髙橋沙(手前一番右)を主将とする女子代表。奥原は欠席。B代表で海外遠征中の郡司も撮影時不在【写真提供:(公財)日本バドミントン協会】

 女子は、2大会ぶりの優勝を目指す。前回大会は、負傷者続出で即席ペアのダブルスで戦う苦しい台所事情だったが、それでも準優勝だった。今回は、負傷者が戻り、豪華な布陣となった。シングルスは、昨冬の世界選手権を制した山口茜(再春館製薬所)と、16年リオデジャネイロ五輪の銅メダリストで17年世界選手権女王の奥原希望(太陽ホールディングス)の2枚看板が健在。山口は「ここにいる選手みんな強いと思いますし、信頼しているので、自分は自分のことに集中して良いプレーを出して、その上で良い流れを作っていけたらいい」と意気込みを語った。3番手の髙橋沙も3月に2大会連続で格上選手を撃破しており、好調なのは頼もしい。

 ダブルスは、世界ランク1ケタ3組と充実している。ただし、廣田や永原は負傷で離脱していた期間があり、復調途上だ。前回大会では、志田千陽(再春館製薬所)を含めて主力3人を負傷で欠いてペアを組み替える中、松友が前衛タイプ同士の即席ペアでも対応力を発揮して健闘し、準優勝の原動力となった。前回は、混合ダブルスで東京五輪銅メダルの東野有紗(BIPROGY)も即席ペアで女子ダブルスに出場するなどチームをサポートしていたが、今回はメンバー外。本職の3組が揃い、緊急時にも松友が控えている盤石の体制だ。

 バドミントン日本代表は、8月に東京開催の世界選手権を控えており、主将の髙橋沙は「優勝することで、個人的に世界選手権にも(勢いや経験が)生きてくると思う。ほかの選手も(勝つことで地元開催の大会に向けて)注目されると思うので、今回はみんなにとって大事な大会でもある」とタイトル奪取にかける強い気持ちを示した。予選グループは、強豪のインドネシア、フランス、ドイツと同じA組。朴ヘッドコーチは「グループ1位が目標」と話した。総合力を考えるとベスト4以上に入る可能性は極めて高い。4年ぶりに同じバンコクの地で頂点に立つことが期待される。

■トマス杯&ユーバー杯、日本代表選手

▽男子:トマス杯

桃田賢斗(NTT東日本)

常山幹太(トナミ運輸)

西本拳太(ジェイテクト)

奈良岡功大(IMG)

保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)

古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)

竹内義憲/松居圭一郎(日立情報通信エンジニアリング)

渡辺勇大(BIPROGY)

秦野陸(トナミ運輸) ※4月21日に追加

▽女子:ユーバー杯

山口茜(再春館製薬所)

奥原希望(太陽ホールディングス)

髙橋沙也加(BIPROGY)

郡司莉子(再春館製薬所)

福島由紀/廣田彩花(丸杉)

松本麻佑/永原和可那(北都銀行)

志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)

松友美佐紀(BIPROGY)

川上紗恵奈(北都銀行) ※4月21日に追加

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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