複数競技で日本代表も可能? 「ガチ」でなく「レク」から始めるスポーツのススメ

コーフボールとクィディッチで日本代表の眞柴さん、フレスコボールを紹介【著者撮影】

 何かのスポーツの日本代表という肩書きは、とても立派なものだ。一つの競技に身を捧げるかのように打ち込み、人生をかけて勝負をするアスリートのイメージが思い浮かぶ。しかし、知られざる超マイナー競技の場合、事情が少々異なる。

 2月、東京の町田市で行われた「マイナー競技知名度爆上祭」というイベントでは、イメージを覆す日本代表競技者が溢れかえっていた。

「私は、コーフボールとクィディッチで日本代表になっています。モルックも全国大会に出場しました。ウィッフルボールも関東大会に……」

 ちょっと何を言っているのか分からない……と思いつつ、話を聞かせていただいた相手は、100種類以上のマイナースポーツを体験できるという触れ込みで各競技の体験会を行う「スポーツワールド」というサービスの主催者である眞柴啓輔さん。バスケットボールの経験者で、男子の多い理系大学に通っていたある日、バスケットに似ていて、男女4人ずつの8人でチームを組んで行うコーフボールという競技に誘われたのが、転機だった。

趣味のつもりが、日本代表主将へ

「女子と一緒に楽しめるスポーツなんていいなと思って行ってみたら、女子選手から『パス、そこじゃねーよ!』なんて言われちゃったんですけど(笑)、面白かったですね。みんな知らない競技だったので、仲間を誘ってプレーをしていくようになりました」(眞柴さん)

 どこにでもある、趣味の入り口……のはずだった。ところが、社会人になって転勤先でチームを作るうちに日本選手権を開催できるほどの和になり、仲間が増えていく楽しさと、競技を上達する喜びに魅了され、いつの間にかコーフボール日本代表の主将に。そればかりか、国際大会で台湾代表監督の紹介を得ると、会社を辞めて競技の本場であるオランダへ3年間の競技留学に飛び出した。2年前に帰国してからは、スポーツをツールとした地域活性化や仲間の獲得をテーマに活動。他競技に触れる機会を持つようになった。

「ハリー・ポッター」登場競技でも代表入り

 そんな中、大ヒット映画「ハリー・ポッター」シリーズに、魔法の世界の人気スポーツとして登場した、クィディッチという架空の競技が現実世界で行われるようになり(現実世界でも、箒に見立てた棒に跨る)、日本でも協会が立ち上がったことを知って参戦。こちらでも日本代表となった。競技人口の多いメジャー競技の日本代表への道のりとは、競争の度合いがまったく違う。日本代表という肩書きは同じでも、横並びにして語れる物ではない。ただ、それでも、自発的に続ける気にならなければ、代表には到達しない。

 眞柴さんは、少し気になる言葉を残した。

「社会人は、選択肢がいくらでもある中から自分で競技や種目を選ぶし、辞めるのも自由。本当に好きなことをやっているから、キラキラして見えます。好きでやっている人は、やっぱり上達する。部活動も選んで入っているはずなのに、なぜか指導者にやらされていると感じる時間が長いパターンは多い気がします。一度始めると、途中で辞めたり、ほかに移ったりしてはいけない、苦しい中でもやり続けないといけない雰囲気もある。複数の競技をやるようになって感じるのは、何でも運動神経万能な人が活躍するかというと、意外とそうでもなくて、それぞれに向き、不向きがある。やっぱり活躍できた方が楽しいので、そこから自分で上手になっていく人は多いと思います」

マイナー競技に没頭して成果を出すのは、自分の新しい可能性に触れるから

「マイナー競技知名度爆上祭」の発起人、渡邊さん(左)【著者撮影】
「マイナー競技知名度爆上祭」の発起人、渡邊さん(左)【著者撮影】

「好きこそ物の上手なれ」という言葉がある。今回のイベントで取材した多くの関係者が、マイナースポーツで自分自身に新たな可能性を感じてのめり込んだ人たちだった。

 イベント発起人であるスポーツトレーナーの渡邊史郎さん(Strong Care代表)は、少年野球や中学バドミントンで挫折を味わう中、進学先の新潟南高校で全国大会出場のボート部に入部。大学でも続け、指導者としては東京都代表チームの国体優勝に貢献した。

「変身願望でボート部に飛び込みました。最初に出た新潟県の小さい大会で3位。3チームの最下位です。でも、スポーツで初めて賞状をもらって、嬉しかったんです。新潟で3位だぞって中学の友達には自慢しましたし(笑)、もっと頑張りたいと思いました。国体優勝は、選手に恵まれたものですけど、好きになった競技で運動神経のない自分がどうやったら勝てるか考え続けたことが指導に生きた部分はあると感じています」(渡邊さん)

あの遊びも競技、大活躍の可能性を秘めた未知の種目は多数ある

 もちろん、一度歩むと決めた道を、辛くなっても突き進むことで、課題を乗り越えるという貴重な人生経験を積むことにも意味がある。だからこそ、成功を経験した者や、成功者の過程を見てきた者は「人は変われる」という。しかし、自分の可能性を実感できる者は、実際のところ、そう多くない。競技人口が少ないマイナー競技は、メジャー競技や「教わる」姿勢の強い部活動では感じにくくなっている成長の可能性を信じるきっかけを与えてくれることが多いようだ。

 フライングディスクを用いたアルティメットという種目のPRを行っていた能勢雷人さん(文化シャッターBuzzBullets)は「色々なスポーツがあります。野球出身の私も、新しいスポーツに出会ったことで日本代表になれたり、世界で成績を出したり(世界選手権、銀メダル)できたので、たくさんのことに挑戦してみてほしいです。やっぱり、成果が出ると自信になります」と話した。

 フライングディスクは、公園などでよく見かける遊び道具だが、競技としてはあまり知られていない。アルティメットのほかにもディスクゴルフなど複数の種目がある。自分に適した、未知の競技。その可能性を宿した知られざる種目は、無数に存在している。

「ガチ」でなく「レク」なら、メジャー競技との両立で副産物も

 3、4月は、卒業や入学・入社のシーズン。新しいスポーツを始めやすい時期だ。ただ、いきなりマイナー競技に「転向」するのは、勇気が要る。そんな心配を笑い飛ばしたのは、コーフボールとクィディッチで日本代表の眞柴さん。「いきなり、コーフボールをガチ(真剣)でやろうなんて人は、いませんよ。レクリエーションで良いんです。スポーツの楽しみ方は、2段階あります。まず、体験。楽しかったら続けて、ガチの勝負を楽しめば良いですし、頑張るのが苦しくなったらレクに戻せばいい。マイナー競技でも、クィディッチでは真剣勝負で日本代表になり、コーフボールではエンジョイプレーヤーというスタイルの人もいます。スポーツの楽しみ方は、人それぞれ」と話した。

 コーフボールに関しては、活動地域が近いバスケットボールの強豪高校に、レクリエーションとして取り組むことを提案しているという。複数の競技への取り組みは、新しい身体の使い方を覚えたり、一つの競技内で感じてしまうヒエラルキーからの解放を促したりと、メジャー競技の選手にとっての副産物も期待できる。新しい競技に関心を持てば、別競技での活躍の可能性も見えてくる。レクリエーションを入り口とするマイナー競技の姿勢には、学ぶべきところは多い。触れてみれば、思わぬ未来が開けるかもしれない。(了)

「マイナー競技認知度爆上祭」(https://minorsports.love/)出展競技

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