組み合わせ決定の高校サッカー、開幕前から過密日程も 問われるマネジメント力

日本一を競う高校サッカーの祭典。強豪校はマネジメント力が欠かせない【著者撮影】

 開幕してからでは、間に合わない。戦いは、すでに始まっている。冬の風物詩となっている「高校サッカー」の組み合わせ抽選会が18日に都内の日本テレビタワーで行われた。第98回全国高校サッカー選手権大会は、12月30日に駒沢陸上競技場で開幕し、2020年1月13日に埼玉スタジアム2○○2で決勝戦を迎える日程で行われ、47都道府県の代表48チームが日本一を争う(チーム数の多い東京都のみ2校)。

 毎年、強豪校同士の初戦や因縁ある対戦カードなどが実現して盛り上がるが、今年も例に漏れず、インターハイ準優勝の富山第一高校(富山)と松本山雅に加入内定のMF山田真夏斗を擁する立正大淞南高校(島根)の1回戦や、昨季インターハイ4強の昌平高校(埼玉)とJ内定2選手を擁する注目の初出場校である興国高校(大阪)の2回戦など興味深いカードが実現した。

 抽選が終わり、相手と会場が決まると、各チームは相手の研究を始めるとともに、会場付近での宿泊地や練習場の手配などをしていくことになる。興国高の内野智章監督は、初舞台とあって「いつから関東へ移動するか。どこと練習試合をしたら良いかな。昌平に似たスタイルは、あまりいないですよね……」と早速、頭を悩ませていた。抽選会後には必ず見られる光景なのだが、近年は、技術指導や戦術浸透などのピッチ内の指導力だけでなく、ピッチ外のチームマネジメント力がこれまで以上に重要になっている。

過密日程は、全国大会に限った問題ではない

國學院久我山高(東京B)は、リーグで優勝すると過密日程の問題を抱えるという、もどかしい状況だ【著者撮影】
國學院久我山高(東京B)は、リーグで優勝すると過密日程の問題を抱えるという、もどかしい状況だ【著者撮影】

 例えば、近年、全国大会の過密日程(1月2日、3日の連戦など)が問題視されているが、実は年間で見ても強豪校はハードスケジュールと戦っている。2011年に年間リーグ(高円宮杯JFAU-18サッカー)が導入されたが、従来のカップ戦がそのまま残っており、どの大会も勝ち上がるとなると試合数が多くなる。リーグ戦が12月まで行われ、場合によっては12月中旬から下旬にかけてプレーオフを行うことになる状況だ。抽選の結果、開幕戦を戦うことになった國學院久我山高(東京B)の清水恭孝監督は「12月に参入戦をやるかもしれないというのが、一番心配。だから、本当は2回戦(2020年1月2日)からが良かった。でも、1回戦を戦うなら絶対に開幕戦が良いと思っていました(開幕戦のみ12月30日、他の1回戦は31日開催で2回戦までの期間が1日違う)」と話していた。

國學院久我山高の試合日程。すべて勝ち上がった場合、12月22日から15日間で6試合を消化。平均でも中3日を切る間隔だ【著者作成】
國學院久我山高の試合日程。すべて勝ち上がった場合、12月22日から15日間で6試合を消化。平均でも中3日を切る間隔だ【著者作成】

 参入戦というのは、12月22日(1回戦)、25日(2回戦)に行われるプリンスリーグ関東参入戦のことだ。國學院久我山高は、東京都1部リーグで残り3試合の段階で首位に立っており、優勝した場合は、リーグ昇格をかけて参入戦に臨む。リーグ戦が12月に2試合、参入戦を勝ち上がればさらに最大2試合、それから選手権の全国大会となり、開幕前から疲労との戦いを余儀なくされる。清水監督は「優勝を次の試合で決めてしまえば、次のリーグ戦は少しメンバーも代えられるけど……」と思案を巡らせていた。優勝が決まらなければ、その次の試合でもプレッシャーがかかり、選手の疲労度が増す。疲弊した状態で12月の連戦を迎えれば、間違いなくチーム力を保てなくなる。

セカンドチームから戦力を供給できるか

 年間リーグと夏(インターハイ)、冬(高校選手権)の2大カップ戦でいずれも結果を求める強豪チームは、もはやプロ並みの試合スケジュールになっている。すべてを戦い抜くためには、大人数の中から戦力をやり繰りできるようなチーム作りが求められる。7年前に全国高校選手権で準優勝し、年代最高峰の高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグの戦いも経験している京都橘高校(京都)の米澤一成監督は「夏を過ぎてからは、選手層を厚くするようにチームを作って来ました。ポジションを奪われて必死になる3年生、試合経験を積んで伸びた2年生、慣れてきて力を発揮できるようになってきた1年生を混ぜて、プリンスリーグ関西を戦う(トップ)チームと、京都府リーグを戦う(セカンド)チームの循環がうまくできました。2チームを見るのはしんどいけど、その方がカップ戦では力を結集できるので強い。今の時代、マネジメントは、すごく大事」と意図的にベストメンバーを固定せず、先発候補を多く育てる方針を採って来たことを明かした。他チームでも下級生の積極起用は確実に増えている。

 セカンドチームの使い方は、選手層強化の大きなツールとなる。前回優勝の青森山田高校(青森)は、セカンドチームがプリンスリーグ東北で他校のレギュラークラスと戦っている状況を作り、実戦の中からトップチームの次の戦力を輩出。高校世代最高峰のプレミアリーグで何年も上位争いを続けるなど、安定して好成績を収めている。より競争相手のレベルが高い関東地方でも、流経大柏高(千葉)や前橋育英高(群馬)が同じ形を目指してセカンドチームの強化に力を入れている。だが、京都橘高の米澤監督が「時間が違うときは、2チーム両方を見るために移動する」と話すように、注力するチームが増えれば、スタッフやグラウンドも必要になる。公立校などでは真似できない規模であり、各校が可能な範囲で努力するわけだが、現代の高校サッカー覇権争いは、カリスマ監督と11人の主力だけで乗り切るのは、かなり難しい。一人の指導力より、指導陣の組織力が求められる時代になりつつある。

前回大会は、強豪チームがピーキング失敗

 チームマネジメント力を最も問われるのは、やはり直前に真剣勝負を行うケースだろう。2016年度の青森山田高は、プレミアリーグファイナルと高校選手権で2冠を達成したが、こちらはマネジメント力の高さが生きたと言える。しかし、稀な成功例だ。多くのチームは、幾重にも重なるハードルに道を阻まれている。前回大会では、プロ内定2選手を擁する大津高校(熊本)が注目を浴びたが、負傷者続出で本領を発揮しきれずに3回戦で敗退。明らかにチームの調子が下り坂になっていた点は、残念だった。平岡和徳総監督が「選手には気の毒なコンディションで、満身創痍だった。12月に入ってから、タイトル戦みたいな試合ばかりで4試合目。タイトな中で体調的に万全ではない選手がいた中、最後までやってくれた」と悔しそうに話したのが印象的だった。昨季、大津高はプリンスリーグ九州で2位になり、プレミアリーグ参入戦に出場。強豪校との激闘2試合を制して昇格を果たしたが、負傷離脱者や軽傷者を抱える状況になり、全国大会で最後まで好パフォーマンスを持続することはできなかった。

リーグの昇格、残留を争うチームは、要注意

2回戦で興国高(大阪)との注目カードに臨む昌平高(埼玉)もプリンスリーグ関東参入戦を控えており、日程との戦いを迫られる【著者撮影】
2回戦で興国高(大阪)との注目カードに臨む昌平高(埼玉)もプリンスリーグ関東参入戦を控えており、日程との戦いを迫られる【著者撮影】

 リーグ昇格、あるいは残留をかけた試合が長く続くと、いくら選手層を厚くしても、戦線離脱をする選手が相次ぎ、戦力を削がれる。特にプレーオフは試合数も増えるので要注意。また、昇降格がかかる試合では、フィジカル面だけでなく、メンタルも消耗する。京都橘高の米澤監督は「私たちも、一昨年は(昇格に意欲を持っていた)プレミア参入戦で前橋育英さんに0-5で大敗をして、チームがおかしくなった。上がって来た調子が落ちて、選手は頑張っているけど好転しない状況になりました。回復させるには、心も休ませないといけないけど……(試合間隔が短いため)難しいです。だから、リーグ戦は、最後に残留が決まっている状態にしておくのも重要。抽選会後は、相手のスカウティング(視察、分析)も始まりますからね」と別の大会の内容や結果で大きな悪影響を受けない流れを作ることも重視していた。

大会直前は体調管理力も問われる

 ただでさえ、大会直前になれば、調整合宿中にインフルエンザのまん延などで大きな戦力離脱を強いられる例が少なくない。トーナメントを確実に戦い抜くには、選手も指導陣もすべてを含めたチーム全体の組織力が問われる。今大会でも注目校の中に、リーグの優勝や昇格、残留を争っているチームがある。たとえば、昌平高(埼玉)は、プリンスリーグ関東参入戦へ。富山第一高(富山)は、プレミアリーグ参入戦へ臨むことが決定している。選手権を勝つ――誰もが夢見る目標だが、その前に大舞台で力を発揮できる準備が整えられるかが課題だ。連戦を戦いきる戦力は揃ったか、心身のコンディション調整は上手く進んでいるか。戦い方にバリエーションはあるか。直前合宿で修正を施せるか。強いチームほど悩みを抱える部分もあるのだ。チームマネジメントも勝負の要素。ピッチの外で、戦いはすでに始まっている。