渡辺/東野、土台の見直しからパリへ「金メダルを取りに行く」 五輪メダル輩出、続くか
BIPROGYバドミントンチームが5月10日に練習を報道陣に公開した。注目を集めたのは、7月開幕のパリ五輪に出場する、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗ペアだ。前回2021年東京五輪で銅メダル。世界ランク3位(5月7日更新時)で、パリでもメダル候補に挙がる。
パリ五輪のバドミントン競技は、7月27日に開幕。残すところ2カ月強となり、渡辺は「いよいよだなという気持ちもあるけど、あまり肩の力を入れ過ぎず、リラックスした状態で楽しんでプレーできるように心がけている。練習からしっかりと試合のイメージを持って、金メダルを取りに行くという姿勢で日々の練習を過ごしたい」と五輪制覇に自然体での準備を心掛けていた。
練習では、一人だけ遠藤大由コーチの手投げノックで基本的なショットの質を高める練習を黙々とこなす姿もあった。渡辺は「しっかりとコートの四隅を突いたり(相手エンドの)後ろまで球を運べたり。結局、負けている試合は、そういう差が大きい。戦術やフィジカルで大きく劣っているというより、細かい1本の球の質で劣っている部分が敗因として大きくあった」と土台となるプレーの見直しに余念がなかった。
「前回は銅メダルだったので、満足はしていない。金メダルを獲得できるように、向かって行く気持ち、楽しむ気持ちを忘れずに戦いたい」と話した東野も、地道な練習の積み上げを意識。一つの例として、ネット前の前衛プレーでは、強く打ち込むばかりでなく、正確にシャトルを沈めて次の攻撃につなげる球を練習していると明かした。メダルを争うライバルとは、1年を通して戦うワールドツアーで何度も対戦。得意な球や癖が見抜かれて対策を打たれるケースもある。プレーの選択肢を拡げられれば、試合中の対応も可能になる。
チームから五輪メダリストを連続して輩出、次世代も台頭
1年間をかけて行われたパリ五輪の出場権争いは、4月末で終了。2人は日本オリンピック委員会の承認を経て正式にパリ五輪日本代表に選出される。この日の練習では、ともに五輪レースを戦って来たが、出場権獲得には届かなかった混合ダブルスの金子祐樹/松友美佐紀、女子ダブルスの中西貴映/岩永鈴も元気な姿を見せた。
チームでは、旧社名の日本ユニシス時代に、2016年リオデジャネイロ五輪で女子ダブルスの高橋礼華/松友美佐紀が金メダルを獲得。女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)も当時はチームに所属しており、銅メダルを獲得した。渡辺/東野が東京五輪で銅メダルを獲得。パリでは、チームとしての3大会連続メダルを狙うが、その次の世代も台頭してきている。5月5日に閉幕した国別対抗戦トマス&ユーバー杯では、男子シングルスの渡邉航貴、男子ダブルスの岡村洋輝/三橋健也が日本代表の一員として出場した。
ロス五輪目指す全日本女王の杉山、国内で実力証明へ
5月25日から埼玉県・サイデン化学アリーナで行われる日本ランキングサーキットにも、2028年ロサンゼルス五輪を目指す選手が出場する。女子シングルスでは、23年の全日本女王に輝いた杉山薫が初優勝を狙う。2003年生まれの20歳。今季初めて日本B代表に選出された、期待の若手だ。国内では追われる立場となり、プレッシャーがかかるが、その中で実力を発揮することを一つのテーマに、優勝を目指す。杉山は「全日本総合を優勝して、期待して見てくださる方が増えると思うけど、昨年の日本ランキングサーキットは、1回戦で負けている。代表に入っているか、入っていないかというだけで、みんな強い選手。一つひとつと考えればいいかなと思う」と意気込みを語った。
フィジカル強化を課題に挙げ、以前と同じ練習の中でも、フットワークのスピードの継続などを意識しているという。この日の練習では、ネット前に入る動きの中でのショットの選択について、平山優コーチからアドバイスを受けるなど、レベルアップに励んでいた。
女子複の大竹/高橋、パリ五輪後の代表争いへ意欲
女子ダブルスでは、大竹望月/高橋美優ペアが、次世代日本代表の椅子取りゲームに挑む。大竹が一学年上だが、ともに2002年生まれの22歳。青森山田高時代からペアを組んでおり、日本B代表の経歴もある。女子ダブルスは、東京五輪から日本代表のメンバーが大きくは変わっておらず、パリ五輪後にはメンバーが入れ替わる時期に入る。次の代表に名乗りを挙げるため、高橋は「この大会の後に代表の追加があるかは分からないけど、優勝することには絶対に意味があると思っている」とタイトル奪取にこだわりを見せた。
女子ダブルスは、日本が最も厚い選手層を誇る種目で、ライバルも多い。2人は、日本代表を目指す立場にいるが、代表選手不在の国内大会では狙われる立場でもあり、板挟みのプレッシャーと戦い続けている。大竹は「昨年は、プレッシャーに負けて3位。しっかりと2人で話し合って、その次の全日本社会人選手権では優勝できた。今年は、しっかりと向かって行く気持ちでやっていく」とチャレンジャー精神で臨む姿勢を強調した。2月のS/Jリーグ最終戦から約3カ月、実戦から離れているが、練習で男子選手の強打を受けるなど、課題である守備を強化。日本B代表が2組参加する大会で、存在感を示せるか注目される。
ブリスベン五輪も視野、高卒ルーキー沖本も代表狙う
男子シングルスでは、2032年ブリスベン五輪も視野に入る期待のホープ、沖本優大が社会人初タイトルを目指す。大会中の5月28日に19歳の誕生日を迎える高卒ルーキー。23年のインターハイでは、単複の個人種目2冠を飾った。社会人として初めて臨む大会に向けて「日本代表に入りたい気持ちが、すごく強い。優勝を目指す」と鼻息が荒かった。今大会はチームの方針でシングルスに専念。体力の消耗を押さえ、上位を狙う。
入社前の3月からチーム練習に参加。フィジカル強化に取り組み、疲労感のある中でも社会人のプレースピードに食らいつく日々で、1カ月ほどで慣れたという。「プレー中に身体がブレることがなくなってきた。正確に何回も同じところに打ち続ける力がついたと思う。どれだけ競っても結果を求めて頑張る。自分の長所である長いラリーをしていく」と自信を示した。
リオ、東京と五輪のメダルを獲得して来たチームは、エースの渡辺/東野が東京からパリへとステップアップを目指すが、さらに、次の28年ロサンゼルス、その次の32年ブリスベンを目指す世代も台頭。BIPROGYチームの五輪メダルのリレーが長く続くことも期待される。