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バドミントン桃田、最後の国際大会から帰国「優勝以上の物をもらえた」

平野貴也スポーツライター
代表活動最後の大会を終えて帰国した桃田賢斗【筆者撮影】

 バドミントン日本代表を引退する男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)が5月6日に帰国した。国別対抗戦トマス杯の成績は、ベスト8。残念ながらメダルを逃したが、グループリーグで3勝を挙げた桃田は「みんなと優勝したかったのですが、それ以上の物をもらえたので、すごく充実したトマス杯だったかなと思います」と大会を振り返った。

 準々決勝のマレーシア戦は、第3シングルスで起用されたが、出番が回らずに日本の敗退が決定。「(出番が)回って来ると思っていたけど、終わってしまったかという感じ。みんなと過ごした時間を思い返して泣きそうになったけど、めっちゃこらえました」と戦いを終えた瞬間を振り返った。

「僕もそういった(憧れの)選手の1人の仲間入りができていたんだな」

 大会開催地に向かう前の4月18日、桃田は国内で記者会見を行い、今大会を最後に日本代表から退くことを発表した。2018年から3年超にわたって世界ランク1位に君臨し、世界選手権を2連覇した桃田は、世界のバドミントンの中心にいた存在だ。海外でも反響は大きく、現地では、試合前から海外メディアの取材に応じ、敗退が決定した翌日には、特別に記者会見が設けられ、世界中にライブ配信された。

【関連サイト】
BWF(世界バドミントン連盟)公式YouTube「BWF TV」
Kento Momota Says Goodbye!

 また、現役・引退を問わず、海外のトッププレーヤーがこぞって桃田とのツーショット写真をSNSに掲載し、国際舞台からの引退を労うコメントを送った。桃田は「今大会も、すごい多くの方に応援していただいた。自分には、こんなに多くのファンの人がいてくれたんだなというのをあらためて実感して、本当に選手として誇らしい(日本A代表として活動した)10年だったなと思いました。いろいろな方に、一緒に写真を撮ろうよと言ってもらえた。僕もそういった(自分が憧れて来た)選手の1人の仲間入りができていたんだなというのは、すごく嬉しかったです」と、海外での反響の大きさに喜びと感謝を示した。

朴HC「最後の試合で、世界のファン、トップ選手から応援されて良かった」

 日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチも、会場中で反響が大きかったことについて言及。「中国のバドミントンファンもみんな(今大会が桃田の最後の国際大会になると)分かっていた。リン・ダン選手やチェン・ロン選手(ともに、引退した中国のエース格で、男子シングルスの五輪金メダリスト)にも、みんなに「お疲れ様」と声をかけてもらっていた。ビクター・アクセルセン(デンマーク)選手、石宇奇(シー・ユーチ=中国)選手といった、今の世界ランク1位と2位の選手もみんな、桃田と写真を撮っていました」と振り返った。

 試合だけでなく、ホテルのロビーにいるときでも、誰もが桃田を労う姿勢を見せていたといい「最後の試合で、世界のバドミントンファン、トップ選手から応援をもらって試合ができたのは良かったと思う」と世界の頂点で戦って来た桃田が、温かいサポートに包まれて最後の国際大会を終えたことを喜び「私も桃田選手と一緒にいろいろな大会で優勝ができた」と自らが率いる日本代表で活躍したエースを労った。

「これが最後かと、すごい寂しい気持ちになった」

 国内での記者会見、大会会場でのコートでの振る舞い、記者会見など、何度も多くの人に囲まれた桃田は、終始、笑顔だった。明るい表情で終わりたい思いがあったのだろう。唯一、現地入りしてすぐの取材対応では、泣いているように見える映像があったが「いや、泣いてなかったんですよ。あの瞬間を泣いているように見られただけ」と明るく否定した。

 ただ、やはり長く戦って来た舞台との別れに思うところはあったようで「一つひとつ、バスに乗る時、飛行機に乗る時、帰りの準備をするときに、ああ、これが最後かと思いながら、すごい寂しい気持ちになったというのは、正直、あります」と話し、取材を終えた際も、いつもより少し大きな声で「ありがとうございました。これも最後ですね」と付け加えて、微笑んだ。

 今後は、国内で選手としての生活は続ける。代表引退発表の会見では、普及活動に注力したいと話しており、選手としての今後の目標については「まだ、どの試合に出るかは、全然決めていないです。チームと合流して、スタッフの皆さんと話しながら、決めていけたらいいと思う」と話すに留めた。

 大会期間中は、BWF(世界バドミントン連盟)の公式サイトをはじめ、各国の報道サイト、各選手のSNSなどバドミントンに関するあらゆるメディアが、桃田で埋め尽くされていた。2014年に日本A代表に選出されて以降、約10年にわたり、世界のトップで戦い続けた。途中、違法賭博店利用による出場停止処分を受けて出直したり、運転手が亡くなるほどの交通事故に巻き込まれて目の手術を受けるなどパフォーマンスを取り戻せなくなったりと苦しんだ時期もあったが、圧倒的な技巧で、世界のバドミントンファンを魅了したことの価値が「優勝以上の物」として返って来た、桃田の最後の国際大会だった。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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