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ペルセウス座流星群、そして夏の夜空に輝く「金・木・土」

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
ペルセウス座流星群が極大を迎えます。惑星観望も含めて楽しめます。提供:国立天文台

夏休みには金・木・土を楽しもう

多くの人がオリンピック・ロスに落ちいっている今、競技者の皆さんの活躍、特に地上の星(?)となった金・銀・銅の名シーンを思い返すとともに、天上の星空にも目を向けてみませんか?この夏のお薦めは、金・木・土(!)です。

夕空に輝く一番星・金星

今年の夏から年末までは、太陽が沈んだ直後、西の空に宵の明星・金星が輝いています。一般に空の色合いや明るさの変化が最も美しく感じられるのは、日没後または日の出前の約1 時間半です。地平線の下にある太陽の光が、大気中の塵や水蒸気によって散乱し、空が薄明るくなるこの時間帯が「薄明(トワイライト)」です。薄明の中の一番星・金星を楽しみましょう。金星の明るさはマイナス4等級、1等星の100倍もの明るさのため、薄明中でもはっきりとその輝きを捉えることが出来るのです。

国立天文台「ほしぞら情報」より引用
国立天文台「ほしぞら情報」より引用

月は毎晩、その場所や形が変化しますが、8月11日には三日月型の月が、金星に近づきます。金星と細い月のランデブーをスマホなどで撮影してみてはいかがでしょうか。

遅れて登場する土星・木星 -8月は観望の好機-

金星が20時前後に西の空に沈んでいくのに対し、土星と木星が相次いで、夕暮れに南東の方角から昇ってきます。木星は約マイナス3等級、土星も約0等級と、今年の夏空では、金星、木星、土星の順で明るさを競っているのです。

国立天文台「ほしぞら情報」より引用
国立天文台「ほしぞら情報」より引用

土星は8月2日、木星は8月20日に相次いでやぎ座にて衝(しょう)を迎えます。衝とは、地球から見て惑星が太陽と反対側に見えることです。衝の頃に地球と惑星との距離がもっとも近くなるため、明るく見えますし、天体望遠鏡で見ると大きくはっきりと見ることが出来ます。また、衝の頃、惑星は太陽が沈む頃に東の空から昇って、一晩中見ることが出来ますので、惑星観望の好機と言えます。また、衝を過ぎると昇る時刻が次第に早くなっていきますので、夕方に観望しやすくなり、今後の2か月ぐらいが観望に適した時期となります。

国立天文台「ほしぞら情報」より引用
国立天文台「ほしぞら情報」より引用

期待が高まるペルセウス座流星群 

夏の夜空、深夜の時間帯になりますと、北から東の空にはカシオペヤ座の下方に秋の星座ペルセウス座がすでに姿を現しています。毎年の夏の風物詩とも言えるペルセウス座流星群(以下、ペルセ群)が、8月13日の夜明け前に極大を迎えようとしています。ペルセ群は、毎年8月12~13日頃を中心に前後1週間程度見られるもっとも活動が安定した流星群の一つです。1月のしぶんぎ座流星群、12月のふたご座流星群と並んで3大流星群にも数えられています。

提供:国立天文台
提供:国立天文台

今年は、日本時間で8月13日午前4時頃に極大、すなわち活動が最も活発になると予報されています。幸い、月明かりの影響もなく、今年は8年に一度の好条件と予想されています。仮に晴天に恵まれ、空の暗い場所で観察するのなら、13日の午前3時前後には1時間に50個以上の流星を見ることができるかもしれません。

また、極大日に限らず次第に数は減るものの8月20日頃までは毎年出現していますので、ご都合や天候に合わせて、ペルセ群観察に挑戦されることをお勧めします。

ペルセウス座流星群 2016年8月12日午後10時53分から13日午前3時27分までに出現した明るいペルセウス座流星群の流星を合成した画像です。提供:国立天文台
ペルセウス座流星群 2016年8月12日午後10時53分から13日午前3時27分までに出現した明るいペルセウス座流星群の流星を合成した画像です。提供:国立天文台

流れ星には、散在流星と群流星の2つのタイプがあります。散在流星とは、いつどこを流れるか全く予測が付かない流星です。毎晩、出現しています。一方、群流星とは、ある時期に同じ方向から四方八方に飛ぶようにみられる流星のことです。群流星が飛んでくる方向を放射点(または輻射点)と呼びます。放射点がどの星座に含まれているかで、その流星群の名前が決まります。

ペルセウス座流星群とは

ペルセ群の場合、放射点はペルセウス座ガンマ星の近くにあります。8月中、放射点は夕方には地平線の上にありますが、実際に群流星を目にし始めるのは、もう少し放射点が高くなる午後9時から午後10時頃となります。明け方まで放射点は高くなり続けるので、真夜中頃から空が白み始めるまで観察しやすい時間帯が続きます。

ペルセ群の母天体は、スイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)と呼ばれる彗星で、太陽の回りを約130年の周期で公転しています。彗星から放出された塵粒の集団は、それを放出した彗星の軌道上に密集していますので、彗星の軌道と地球の軌道が交差している場合では、地球がその位置にさしかかると、塵粒がまとまって地球の大気に飛び込んでくることになります。地球が彗星の軌道を横切る日時は毎年ほぼ決まっていますので、毎年特定の時期に特定の流星群が出現するというわけです。

観察の仕方は?

観察の仕方ですが、流れ星を楽しむのには望遠鏡も双眼鏡も必要ありません。肉眼で見える範囲をなるべく広くとることが流星を見るコツになります。なるべく開けた方向を見てください。ペルセウス座の方向でなくて構いません。空のどこを飛ぶかは分からないのです。地上の明かりをうちわや帽子で隠して、人工の明かりが少ない方向の空を眺めることをお勧めします。快適に楽しめるようブルーシートや寝袋、ベンチか椅子を用意されるとよいでしょう。蚊などに刺されないよう、虫よけ対策もお願いします。何よりも安全に観察することをご留意ください。

2018 年8 月13 日午後10 時32 分に出現したペルセウス座流星群の明るい流星 クレジット:佐藤幹哉(国立天文台)
2018 年8 月13 日午後10 時32 分に出現したペルセウス座流星群の明るい流星 クレジット:佐藤幹哉(国立天文台)

より詳しい解説は、国立天文台ほしぞら情報をご覧ください。

曇ってしまった場合は、、、

ペルセウス座流星群のみならず、予定していた星空観望があいにく天候に恵まれなかった場合は、インターネット中継でオンライン観望はいかがでしょう。例えば、国立天文台と朝日新聞は、ハワイ・マウナケア山頂の国立天文台すばる望遠鏡サイトからの星空を毎日配信中です。

https://www.youtube.com/watch?v=Py_gzzVhFdc

ハワイは日本に比べて19 時間の時差があるため、ペルセ群の観望でしたら、日本時間で午後7時頃から午後11時頃までがお勧めの時間帯です。

Perseids Meteor Shower 2021 Live Stream 24/7 from Maunakea,Hawaii ペルセウス座流星群ライブ ハワイ・マウナケアの国立天文台すばる望遠鏡
Perseids Meteor Shower 2021 Live Stream 24/7 from Maunakea,Hawaii ペルセウス座流星群ライブ ハワイ・マウナケアの国立天文台すばる望遠鏡

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。宙ツーリズム推進協議会代表。国立天文台で国際天文学連合・国際普及室業務をを担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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