Yahoo!ニュース

2019年、期待の天文現象とは?

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
IAU100の2019年、日本では2回の部分日食が起こります。画像提供:IAU

しぶんぎ座流星群が極大(1月4日の明け方)

 毎年、年始めの天文現象として注目される「しぶんぎ座流星群」。8月のペルセウス座流星群(ペルセ群)、12月のふたご座流星群(ふたご群)とともに三大流星群とは呼ばれていますが、しぶんぎ流星群は、活動が盛んな時間が短く、かつ年ごとの出現数に幅があるため、安定して毎年多くの流星が出現するペルセ群、ふたご群と比べると、とっつきにくい流星群と言えましょう。しかし、あいにく今年はペルセ群とふたご群が、月明かりのため観察条件が良くないのに対し、今年のしぶんぎ群は、月明かりの影響をほとんど受けない最良の条件で観ることが出来るのです。寒くて夜中外に出るのがおっくうになりがちな時期ではありますが、流れ星ファンの皆さんには、ぜひ、挑戦してほしい今年の一押し流星群です。

 今年のしぶんぎ座流星群の極大は、日本時間で1月4日の11時頃と予報されています。3日の夜遅く(4日の夜明け前)が観察に適した時間となります。しぶんぎ座流星群の放射点は、春の星座うしかい座にあります。放射点が地平線から昇ってくるのは夜10時過ぎ。放射点の高度が高いほど見られる群流星は増えますので、明け方に向かって流星数が増えていくことでしょう。4日の明け方には、空の暗い場所で、1時間あたり30個程度の出現数ではないかと予想されています。

しぶんぎ座流星群の放射点は春の星座うしかい座にあります。このため、深夜遅い時刻ほど沢山の流れ星が見られる可能性が高くなります。 (提供:国立天文台天文情報センター)
しぶんぎ座流星群の放射点は春の星座うしかい座にあります。このため、深夜遅い時刻ほど沢山の流れ星が見られる可能性が高くなります。 (提供:国立天文台天文情報センター)

 流星群見物のコツは、少しでも空が暗くかつ安全な場所を見つけて肉眼で観察することです。屋外に出てから周囲の暗さに目が慣れるまで、最低でも10分以上我慢しましょう。この時、地上の光が目になるべく入らないように見上げる方向を調整しましょう。群流星が流れる方向は放射点(うしかい座)の方向とは限りません。空のどこを見上げていても、見られる確率は同じです。

 一般的に群流星の特徴としては、放射点に近い流星ほど、ゆっくりと短い経路で流れ、放射点から遠い流星ほど、速く長い経路で観察されることです。群流星のみならず散在流星も明け方に向けて多く見られるはずです。

 この時期、大事なことは風邪をひかないよう防寒対策をしっかり行うことです。リラックスした服装・姿勢で無理をせずに楽しんでください。この流星群の傾向から言えることは、4日の明け方しか多くは流れないということです。この日、東京での薄明開始時刻は5時20分頃。このため、天気が良ければ、4日の3時頃から明け方まで観察することをお勧めします。

約3年ぶりの部分日食(1月6日午前)

 まだ松の内の1月6日(日)には、晴れれば日本全国で部分日食を観ることができます。前回、部分日食が日本国内で楽しめたのは2016年3月9日の事でした。東京では、朝8時43分頃に欠け始め、10時06分頃に最大となりこの時、直径で約4割が欠ける現象となります。11時36分頃に終了し太陽は元の形に戻ります。今回は、下図のように北に行くほど大きく欠けて見える現象となります。詳しくは、国立天文台ほしぞら情報の部分日食(2019年1月)紹介ページをご確認下さい。

 日食とは、太陽-月-地球の順に宇宙空間で3つの天体が一直線に並ぶことで起こる現象です。昼間、太陽からの光を受けた月の裏側、すなわち月の影に地球が入ってしまい、そこだけ昼間なのに光があたらない、または太陽の一部が欠けてしまうのが日食です。年に2回程度地上で日食は発生しているのですが、月の影になる範囲はとても狭いため、広範囲で見られる月食とは異なり、地上の同じ場所からはめったに起こらない現象となっています。今年は地球全体では3回の日食があり、そのうち2回が、日本国内から部分日食として観察可能です。今年2回目の日食は7月2日(現地時間)に南アメリカ大陸を横断する皆既日食ですが、日本からは残念ながら観察することは出来ません。3回目の日食は12月26日の午後に、アラビア半島、インド南部、スリランカ、シンガポール、インドネシア(スマトラ島、ボルネオ島)、グアム島などで観察される金環日食です。日本国内は午後から夕方にかけて部分日食を楽しむことが出来ます。

 太陽の観察は危険を伴います。太陽の光と熱のエネルギーは膨大なため、直接、太陽を見ると失明する危険があります。肉眼でも危ないのですから、天体望遠鏡や双眼鏡を使うことは極めて危険です。科学館スタッフや星のソムリエ(星空案内人)のような天体観察に詳しい人と一緒に、太陽投影法という間接的な方法で観察する以外は、天体望遠鏡や双眼鏡は絶対に使わないでください。太陽観察用の遮蔽版または日食グラスを用いて観察することをお勧めします。または、木漏れ日やピンホールカメラを用いて観察する方法もあります。より詳しい情報は国立天文台の解説ページをご覧ください。

 太陽の光を見かけ上減光できるからといって、黒いごみ袋、アルミホイル、ポテトチップスなどの袋、色付きの下敷きなどで見ることもとても危険です。これらは赤外線を通してしまうため、可視光を減光していても、熱によって網膜が傷ついてしまう可能性が指摘されています。

 なお、2012年の金環日食の際に入手した日食グラスをお持ちの方は、表面が傷ついていないか、色が変色していないか等を確認してから使うようにしましょう。

全国各地で見られる部分日食。北に行くほど食分が大きい。東京では食分約0.4に。 (提供:国立天文台天文情報センター)
全国各地で見られる部分日食。北に行くほど食分が大きい。東京では食分約0.4に。 (提供:国立天文台天文情報センター)
全国各地での1月6日午前中の部分日食のようす。 (提供:国立天文台天文情報センター)
全国各地での1月6日午前中の部分日食のようす。 (提供:国立天文台天文情報センター)

国際天文学連合(IAU)100周年

 今年、2019年は国際天文学連合(IAU)の創設100周年(IAU100)、そして、アポロ11号の月面着陸50周年の年です。さまざまな関連イベントが国内外で予定されていますので、平成から新しい元号へと時代が変わるこの年、星空や宇宙をより一層気軽に楽しめる一年となることでしょう。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。宙ツーリズム推進協議会代表。国立天文台で国際天文学連合・国際普及室業務をを担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

縣秀彦の最近の記事