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夏休み到来 全国各地で星まつり

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
寝苦しい夜は夜空を眺めて涼んでは? この夏、全国各地でさまざまな「星まつり」が。(写真:アフロ)

山や海や高原に出かる機会が増えるこの時期、夜中に空を眺めると南空から立ち上る入道雲のような白いかたまりに気づくことがあります。入道雲と違って形が変わらないまま、時間をおいてみると東から西へと移動していくこの白いかたまりが、私たちの住む天の川銀河(=銀河系)の姿です。天の川は天空を一周していますが、もっとも明るいのがいて座やさそり座の方向、夏の南天の方向です。今年はそのさそり座周辺に火星(-1等)と土星(0等)もいますので、さそり座の1等星アンタレスとともに南天が華やかです。

火星、土星、そしてアンタレスは今夏だけのスペシャルな「夏の三角形」。日を置いて観察すると、その形が日々変わっていくことにも気づかれることでしょう。まさに、惑星は人を惑わす星なのです。

夏は星まつりのシーズン。特に7月7日七夕は、日本や中国をはじめ東アジア圏の人たちが楽しみにしているスター・フェスティバルです。ただし、日本では梅雨の時期。7月前半に星を見る機会は僅かです。七夕は本来、太陰太陽暦(旧暦)の7月7日にお祝いする習わしであり、太陽暦に移行した明治6年以降、日本では仙台市や愛知県安城市のように月遅れで8月に七夕を行う地方もあります。

渋谷センター街の七夕まつり 8月7日まで
渋谷センター街の七夕まつり 8月7日まで

一方、伝統的七夕、つまり旧暦の7月7日には、宵空には七夕の織姫星 (おりひめぼし)と彦星 (ひこぼし)、そして上弦の月が輝きます。伝統的七夕は年によって日付が異なりますが、今年の伝統的七夕は8月9日(火)です。夜遅くに半月が西の空に沈むとともに、天の川が漆黒の闇夜に浮かび上がって、その両岸に織姫星と彦星が明るく輝く姿を古来より人々は楽しんできました。

「伝統的七夕」とは、太陰太陽暦(旧暦)の7月7日宵のことで、今年は8月9日です。
「伝統的七夕」とは、太陰太陽暦(旧暦)の7月7日宵のことで、今年は8月9日です。

七夕や伝統的七夕以外にも全国各地で夏に星まつりが開催されています。例えば、沖縄県石垣島では、今年15回目の「南の島の星まつり」が8月6日~14日に開催されます。特に、全島ライトダウンが8月6日(土)に予定されています。例年1万人近くの参加者を集める大イベントです。他にも、今年33回目を迎える「胎内星まつり」(新潟県胎内市、8月26日(金)午後~29日(日)正午)、同じく23回目を迎える「サマーホリデーin原村星まつり」(長野県諏訪郡原村八ヶ岳自然文化園、8月5(金)~7(日)9時)など、星に親しむイベントが今年も全国各地で予定されています。各イベントの詳細を主催者のウェブページ等で確認の上、安全に十分配慮して家族や仲間と一緒に参加しましょう。

星まつりの他にも、日本天文学会が呼び掛けている「全国七夕同時講演会2016」など、夏休み中に全国各地で天文・宇宙の講演会も多数予定されています。

7月29日(金)、30日(土)には、JAXA相模原キャンパス(宇宙科学研究所)にて特別公開が開催されます。また、国立天文台でも、鹿児島県入来町で「八重山高原星物語2016、VERA入来観測局施設公開」(8月7日(日)正午から午後8時)、岩手県奥州市で「いわて銀河フェスタ2016、国立天文台水沢施設公開」(8月20日(土) 午前10時から午後8時30分)、長野県野辺山にて「野辺山宇宙電波観測所 特別公開2016」(8月27日(土) 午前9時30分から午後4時(入場は午後3時30分まで))を実施予定です。多くの皆さんのご来場を心よりお待ちしております。

全国各地の星まつりや天文関連のイベントの他、公開天文台やプラネタリウム館に家族や友達同士で出かけるのも良いと思います。全国の公開天文台や科学館・プラネタリウム館で開催される観望会などの情報は、「PAO Navi」というポータルサイトで調べることも可能です。今年も素敵な夏の想い出を残しましょう。

夏のお楽しみと言えば・・・ペルセウス座流星群。今年は月明かりもなく観察をお勧めします。

夏の星空の風物詩とも言えるペルセウス座流星群は、毎年8月12~13日の晩を中心に前後1週間程度見られる流星群です。1月のしぶんぎ座群、12月のふたご座群と並んで3大流星群に数えられていますが、年間通じてもっとも流れ星が飛ぶのはこのペルセウス座流星群です。

今年は、8月12日22時頃(日本時間)に活動が最も活発になる(極大)と予想されています。この日は上弦過ぎの月が深夜に沈んだ後、明け方にかけて流星群が楽しめます。今年から8月11日が「山の日」として国民の祝日に加わったため、11日(木)から14日(日)まで流星三昧も可能ですね。空の暗い場所で観察すれば、1時間に30~50個の流星を見ることができるかもしれません。ペルセウス座流星群の母天体は、スイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)と呼ばれる彗星で、太陽の回りを約130年の周期で公転しています。

ペルセウス座流星群
ペルセウス座流星群

国立天文台では、できるだけ多くの方にこのペルセウス座流星群を観察していただこうと、8月10日の夜から15日朝までの期間に「夏の夜、流れ星を数えよう 2016」キャンペーンを実施します。この間に夜空を観察し、流星がいくつ見えたかを、特設サイトから国立天文台に報告してください。

慌ただしくて、ついついうつむき加減に過ごしてしまいがちの毎日ですので、星空が素敵な夏の夜はぜひ、夜空を見上げて「上を向いて歩く」元気を培ってください。

ペルセウス座流星群の流れ星。ハワイ島マウナケア中腹にて撮影 国立天文台提供
ペルセウス座流星群の流れ星。ハワイ島マウナケア中腹にて撮影 国立天文台提供
自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。宙ツーリズム推進協議会代表。国立天文台で国際天文学連合・国際普及室業務をを担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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