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10年に1度の寒波による水道管破裂、断水に注意。空き家や過剰な「出し水」など意外な原因も。

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
(写真:イメージマート)

水道管はマイナス4度以下で凍結

非常に強い寒気が入ってきています。「明日22日から24日にかけては、強い寒気の影響で、朝晩は内陸部で氷点下の厳しい冷え込みとなり、日中も真冬の寒さに」(tenki.jp)なる模様です。

そうなると心配なのが水道管の凍結です。水道管はマイナス4度以下で凍結したり破裂したりする可能性が高くなります。数軒で漏水が重なると水道水を貯めている配水池などの水がなくなり、周辺で断水が発生し、被害が広い範囲におよぶこともあります。

ですから屋外でむきだしになっている管、日陰、風当たりの強いところの栓などは凍結しやすいので、保温材や保温チューブ、凍結防止ヒーターなどを取り付けるなどの対策が必要になります。

空き家の水道管をどうするか?

対策が難しいのが空き家です。空き家で水道管の破裂によって漏水が起きても、誰も気づかないため発見が遅れます。2016年1月、九州、中国、四国地方で、寒波にともなう水道管破裂で約29万世帯に上る大規模な断水が発生したときには、空き家の漏水が問題になりました。

石川県では今年1月下旬から2月初旬にかけての寒波で、水道管が凍結により破損し、能登地方を中心とした7市町で1万世帯以上が断水しました。その後の県の調査で、漏水被害6000軒のうち9割が居住家屋、1割が空き家だったことがわかりました。

自治体によっては水道局が空き家の止水栓(水の元栓)を閉めるなどの対策をすることもありますが、給水装置(道路に埋設された配水管から分岐して各家庭へ水道水を引き込むための給水管や、これに直結している蛇口など)は個人の所有物で、個人が管理しなくてはなりません。

空き家まで出かけ、むき出しの水道管に保温カバーを巻く、水道メーター付近の保温カバーを設置するなどの対策を行うか、長期にわたって水道を使用しない場合は止水栓を閉めます。このときすべての蛇口から水が出ないことを確認します。水道管内部の水をすべて出し切っておけば水道管の凍結を防ぐことができます。

「出し水」の量が多すぎて断水

意外なことに、前述の石川県の調査では、凍結対策である「出し水」による送水量の増加も、断水の要因になったと分析しています。「出し水」とは凍結対策として水を出しっぱなしにすることです。石川県の各自治体は、凍結を防ぐために事前に「少量の水を出すよう」呼び掛けていましたが、その量については明確に伝えていませんでした。そのため凍結を恐れて必要以上の水を流した家庭があり、断水につながったと見られています。

「出し水」は凍結防止の有効な方法とされていますが、蛇口から出す水の太さは「箸1本分ほど」と言われています。しかし自治体のなかには「出し水」を止めるよう呼びかけるところもあります。仙台市では水道水を出したままにするのは基本的にはやめてほしいと呼び掛けています。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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