2020年、あなたの水道料金は減免された?「わからない」39.8%、「されなかった」39.7%
コミュニケーションや制度の運営に課題
今年は、新型コロナ禍の生活対策として、複数の自治体が水道料金を減免した。4月15日、堺市が「全利用者(一般家庭、事業者など)の水道基本料金を4か月間、8割減額」と発表すると、その流れが全国に波及した。自治体WEBサイトなどから集計すると7月末で約3割が何らかの減免を行っている。
ただし、対象、方法、期間、財源などはまちまちである。
対象:個人、事業者を対象とするケースが多いが、特定の業種のみを対象とするケースもあった。
方法:基本料金のみのケースと従量分も含むケースがあった。
期間:1か月から数ヶ月とまちまちであり、最近、再度実施している自治体も多い。
財源:水道事業の黒字分からというケース、自治体の一般財源からというケースがあった。
また、減免がしくみとして機能していないケースがあるという以下のような報道もあった。
【特集】「水道の基本料金“無料”のはずが...なぜ?大阪市の減免措置を「受けていない人」がいる実態」
個人が直接水道局と契約している場合は減免された。しかし、マンションなどの賃貸物件で、棟全体の水道を、管理会社やオーナーが水道局と一括で契約しているケースで問題があった。
この場合、管理会社から水道局への支払いは「減免措置」のため行われていないが、住民から管理会社への実質的な水道料金の支払いは続いていた(共益金などで固定費化していたケースもある)。自治体から管理会社へは「あくまでお願い」であり、法的にも管理会社が住民に水道料金を返す必要があるわけではないという。
自治体はコロナ禍での生活支援のために減免を行ったが、契約方法によっては機能していないケースがある。
実態を把握するためにYahoo!ニュース「みんなの意見」で「水道料金、減免された?」という調査を行った。その結果が以下である。
「減免措置の有無はわからない」という意見が4299票、また「減免措置はとられたが、実際に減免されたかわからない」という意見が443票あり、自治体と市民のコミュニケーションに課題を感じる。
前述のような「減免措置は取られたが、実際には減免されなかった」という意見は209票あり、制度の運営に課題を感じる。
そもそもを言えば、減免措置を実施する自治体、しない自治体があり、不公正である。
減免することで今後の水道事業への影響
料金の減免の財源は、前述のとおり、水道事業の黒字分というケース、一般会計からの繰り入れというケースがある。
水道事業の黒字分は本来、老朽化した施設や管路などを更新する費用だ。今回、水道料金の減免を決めた自治体の「水道ビジョン」「水道経営計画」などには苦しい現状が報告されている。「人口減少による料金収入の低下」「老朽化した施設の更新がまったなしであること」「水道料金の値上げの検討の必要性」などの言葉が並ぶ。
その流れをお金をプロは感じている。ソニー損保が全国のファイナンシャルプランナー200名を対象に、家計の支出や見直しに関する調査を実施した。2021年1月以降に値上げが予定されている家計の支出の項目のうち、影響が大きいと予測されるものの第3位に「水道料金」が入っている。
参考:「マネーのプロ指摘、2021年の値上げで影響大きい「水道料金」「火災保険」」
長期的に経営計画を見直している水道事業も多くあり、今回の首長の決定が、水道事業の持続を揺るがすケースもあるだろう。
折しも、千葉県富津市で水道管が壊れ、約5000戸が断水している。40年以上前に設置された地下5メートルから7メートルの深い地点の送水管が破損したとみられている。水道管の老朽化は全国で進んでおり、富津市以外でもこうした事故が起きる可能性は髙い。
資金不足は水道事業に重くのしかかる。設備の更新はいま以上に遅れる。新型コロナウイルスによる感染拡大防止に手洗いはなくてはならない。その水道の持続性を考えることが大事である。