日米欧28社がプラスチックごみ削減へ連携。下水道に紙おむつを流す国交省プロジェクトはどうなるか

ドラッグストアにならぶ紙おむつ(著者撮影)

プラスチックごみ削減で日米欧28社が連携

 海に投棄されたプラスチックごみによる環境汚染が大きな問題となる中、日本の大手化学メーカー3社を含む、日本やアメリカ、ヨーロッパなどの28社が非営利団体を設立し、連携してプラスチックごみの削減に取り組むことになった。

「プラスチックごみ削減で日米欧28社が連携」(NHKニュース/2019年1月17日)

 このニュースで思い出したのが、紙おむつを下水道で受け入れるというプロジェクトだ。紙おむつの原材料は、紙だけではない。不織布、パルプ、ポリエチレンフィルムなどの素材が使われ、表面材や吸収材など、たくさんの層からできている。つまり、紙おむつを下水道に流すということは、プラスチックを流すことでもあり、前述の流れに逆行する。

 ドラッグストアには様々な大人用紙おむつがある。赤ちゃん用のように、パンツ型、テープ型だけではない。パッド型というシート状のもの、軽失禁用の小さめのパッドもある。商品の多様化とともに売り場面積は年々拡大している。

 大人用の紙おむつの生産量は毎年過去最高を更新している。2017年の国内生産量は78億枚。過去10年で約33億枚増えた。今後はさらに高齢化が進み、大人用紙おむつの需要は増えるだろう。

 気になるのは、使用後の紙おむつの行方。

 家庭で使用した紙おむつは、一般廃棄物として自治体のごみ収集場から清掃車で回収される。その際、紙おむつを可燃ごみとして回収するか、不燃ごみとするかは自治体によって異なる。一方、デイケアセンターや老人ホームなど医療行為を伴わない介護施設の場合、使用済み紙おむつは事業系廃棄物となり、基本的には自治体の清掃部門の収集対象外。専門の収集業者に収集・処理を委託することになる(自治体によっては無償または有償での収集を行っているところもある)。

 使用済み紙おむつは重い。

 未使用の大人用紙おむつは50グラム程度だが、排泄物を含むと4倍の200グラム程度になる。約100人が入所するある介護施設では1日4回のおむつ替えをするが、1日に45リットルのごみ袋が25袋出る。介護施設の職員がごみ置き場まで運ぶが、1袋が5キロ程度ある。職員に話を聞くと「女性や高齢の職員にとってはきつい仕事」「若手職員が任されることが多く、離職の原因になることもある」という。

 では回収後はどうなるか。多くの場合、焼却処理されるが、大人用は水分を多く含んでいる。まとまった量が入ると焼却炉の温度を下げてしまう。そのため重油などの助燃剤が必要で、そのコストは1キロ当たり数十円となる。さらに紙おむつは高カロリーであるため、乾燥し一旦燃え出すと高熱燃焼となり、焼却炉を傷め寿命も短くしてしまう。

 そうしたことから、介護施設や病院から出される使用済み紙おむつの搬入を認めていない自治体もある。

紙おむつを下水道に流すプロジェクト

 2018年、国土交通省は、紙おむつを下水道に流すことを検討し始めた。人口減少で下水道施設に余裕ができるため、紙おむつを流せるようにして高齢化社会に貢献するという。

 しかし、強い違和感を覚えた。これまで私たちは下水道への負荷をなるべく減らすことを意識して暮らしてきた。油のついた食器は紙などで拭いてから洗う、飲み残し、食べ残しは流さない、洗剤は少なめに使うなどだ。水は一度汚してしまうと元に戻すのは大変なので、あらかじめ汚さないようにしようとしてきた。

 では、具体的にどんな方法で紙おむつを下水道に流すのか。もちろん国交省のプロジェクトでもそのまま流すと言っているわけではない。「下水道への紙おむつ受け入れ実現に向けた検討会」は、3つの処理方式を打ち出している。

固形物分離タイプ

【利用方法】トイレ個室内で使用済紙おむつから汚物を分離させ、紙おむつはゴミとして回収

【想定されるユーザー】一般住宅・介護施設での利用

【メリット】紙おむつ保管時の悪臭とゴミ出し時の重さが軽減

【デメリット】軽量化した紙おむつの保管・ゴミ出しが必要

 汚物が付着・吸水した紙おむつから大便を分離し、紙おむつはゴミとして回収。分離された大便は、下水道に流す。使用済み紙おむつから大便を分離すると、重さが軽くなり、介護者、介護施設や病院の職員の負担を軽くできるだろう。臭いや衛生面も改善される。ただし、保管とごみ出しは必要だ。また分離に薬品を使うため、排水が環境に悪影響を及ぼさないかの確認が必要だ。

破砕・回収タイプ

【利用方法】トイレ個室内から投入した使用済み紙おむつを破砕装置で破砕し、建物外の分離・回収装置で固形物を分離してゴミとして回収

【想定されるユーザー】一般住宅・介護施設、特に集合住宅や規模の大きい介護施設での利用

【メリット】紙おむつの保管・ゴミ出しが不要

【デメリット】破砕の他に分離・回収装置の維持管理が必要

 使用済み紙おむつを、装置内で破砕する。破砕物は水道水とともに専用配管から流し、下水道に入る前に固形物は分離・回収してゴミとして処分もしくはリサイクル。排水は下水道に流す。使用済み紙おむつの保管とごみ出しは不要になるが、建物外の分離・回収装置が必要なため、集合住宅や賃貸住宅など、設置できないケースもあるだろう。

破砕・受入タイプ

【利用方法】トイレ個室内の破砕装置で使用済紙おむつを破砕し、そのまま下水道に流す

【想定されるユーザー】一般住宅・介護施設での利用

【メリット】紙おむつの保管・ゴミ出しが不要

【デメリット】下水道施設や水環境への影響について十分に評価が必要

 汚物が付着・吸水した紙おむつを装置内で破砕する。破砕物は水道水とともに専用配管から流し、下水道へ。使用済み紙おむつの保管やごみ出しが不要で一般住宅でもできるが、環境への負荷を考慮する必要がある。

 雨水を一緒に流す合流式下水道の場合、豪雨などで下水が溢れたときに、破砕した紙おむつ片は下水処理場に到達する前に河川、海へ流れ出す可能性がある。また、流した紙おむつ片が、下水処理場で完全に除去できるか疑問だ。微細な破砕物は処理場のフィルターをくぐりぬけ、河川や海に流出する可能性がある。

 プラスチックは20世紀後半に広まり、容器や医療品から飛行機にまで使われるようになった。安く大量に作れ、軽くて丈夫。しかしごみになると厄介だ。木や紙と違い自然界で分解しないため、海に流れ込むと蓄積し、海流に乗って遠くの沿岸や海にも拡散する。やがて波や紫外線によって砕かれ、細かな破片や粒子「マイクロプラスチック」となって海中に残り続ける。

 マイクロプラスチックは有害な化学物質を吸着しやすく、魚がマイクロプラスチックを食べることによる生態系への影響のほか、その魚を人間が食することの影響などが懸念されている。

国交省の事業の進展

 国交省の事業は前述したデメリットの部分を克服しようと、企業と連携しながら動いている。

 固形物分離タイプの場合、パナソニックが試作機を開発中で、高齢者施設で試用する。問題がなければ実用化に踏みきる方針だ。

 破砕・回収タイプについては、国土交通省の「18年度第2回サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」に、LIXILの「破砕・回収型紙おむつ処理による介護負担と環境負荷低減」プロジェクトが採択された。紙おむつ処理機は使用済み紙おむつを破砕。次に分離回収装置で、し尿と紙おむつ成分に分離、し尿は下水道、紙おむつ成分はごみとして回収する。

 破砕・受入タイプについては、天然素材への転換が進む。合成繊維がマイクロプラスチックの発生源と指摘されていることを受けて、欧州のスポーツメガブランドや大手SPAが合繊の採用を控えるようになった。紙おむつの原料組成はポリエステルやポリプロピレンなど合繊100%が一般的だが、世界的に脱プラスチック・脱合繊の流れが加速すれば、グローバル展開する大手紙おむつメーカーなどが紙おむつの原料に占める合繊比率引き下げに動く可能性がある。

 ただ、新素材の紙おむつは高価になるだろう。どのような紙おむつを購入するかは消費者の自由。新素材への切り替えが確実に行われるまでは、下水道へプラスチックが流れ出すことになる。それに使い捨てであることから、資源の有効活用という点からものぞましくはない。

環境省、来年度にリサイクル手引

 国交省が使用済み紙おむつを下水道に流す方針を掲げる一方で、環境省は紙おむつをリサイクルする方針を打ち出している。使用済み紙おむつのごみの減量化に向け、リサイクルを自治体に促すガイドラインの策定を進めている。ガイドラインでは、いくつかの先進自治体の事例も紹介される見込みだ。

福岡県大木町のケース

 福岡県大木町では、2011年から町内約50か所に家庭から出される使用済み紙おむつの回収ボックスを設置し、町が週2回回収している。

 回収量は年間約84万トンで、回収された紙おむつはパルプや廃プラRPF等に再生され、建築資材や土壌改良材、燃料として利用されている。

鹿児島県志布志市のケース

 鹿児島県志布志市では、2016年から「使用済み紙おむつ再資源化事業」を実施している。この事業では、ユニ・チャームが開発した技術が用いられている。ユニ・チャームは、2015年に独自の紙おむつ資源化技術を開発。鹿児島県志布志市と協定を結び、使用済み紙おむつからパルプを再生する実証試験を開始した。

 リサイクル紙おむつは内部の吸収体など2~3割が再生原料で、見た目や手触りは新品と変わらず臭いもない。分別収集したおむつからビニールなどのごみを外し、パルプとポリマーから便や尿を取り除く。オゾン処理による殺菌と漂白、脱臭を経て再利用できる。

島根県伯耆町のケース

 島根県伯耆町は民間企業と連携して使用済み紙おむつを固形燃料に変える事業に取り組み、年間約120トンのごみの減量化に成功した。

 2016年から町が病院や介護施設から週5日、使用済み紙おむつを回収しペレットに再生。町営温泉施設の燃料として利用している。このリサイクル設備は7000万円台で導入したもので、自治体は介護施設等から回収した紙おむつを、ビニール袋ごと機械に入れるだけだという。

 本格的な高齢者社会を向けて使用済み紙おむつは増えていく。紙おむつを下水道に流せれば便利なのかもしれない。しかし、さまざまな工夫で循環型の社会をつくることはできるのではないか。