現状は下落、先行きも下落

内閣府は2020年12月8日付で2020年11月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DI(※)は前回月比で下落、先行き判断DIも下落した。結果報告書によると基調判断は「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさが残る中で、持ち直しに弱さがみられる。先行きについては、感染症の動向に対する懸念が強まっている」と示された。

2020年11月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比マイナス8.9ポイントの45.6。

 →原数値では「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「ややよくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が減少。原数値DIは46.1。

 →詳細項目はすべての項目が下落。「飲食関連」のマイナス24.5ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は皆無。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス12.6ポイントの36.5。

 →原数値では「やや悪くなる」「悪くなる」「よくなる」が増加、「ややよくなる」「変わらない」が減少。原数値DIは36.1。

 →詳細項目はすべての項目が下落。「飲食関連」のマイナス26.0ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は皆無。

現状判断DI・先行き判断DIの推移は次の通り。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。前回月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、今回月では再び失速し基準値割れ。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて前回月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に今回月は大きく下落し、基準値を10ポイント以上も下回る結果となってしまっている。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2020年11月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2020年11月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

昨今では(すでに表の対象外となっているが)2020年2月以降において新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化が一気に噴き出した形となり、大きな下落。4月で景況感悪化の動きは底を打ったようで、5月以降は盛り返しを示していた。今回月は前回月までの復調から転じ、全詳細項目において前回月比でマイナスとなった。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は皆無。前回月では5項目もあったのだが。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(~2020年11月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2020年11月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は皆無。「飲食関連」の下げ方が凄まじく、22.1にまで落ち込んでいる。

第三波到来で大きな悪影響

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・観光客を中心に週末の人出が多い。11月の3連休は特によく、観光客が多く今年最高の人出となり、タクシーも大変忙しくなった。ウィークデーは少しずつ回復傾向にある(タクシー運転手)。

・11月は祝日もあり、前半は回復傾向にあった。後半は3連休があり、気温も高かったにもかかわらず、売上の伸びは小さく、厳しい状況が継続している(コンビニ)。

・11月10日以降の新型コロナウイルス感染者増加に伴い、来客数が激減している。防寒アウターなどの必要性が高いアイテムのニーズはあるが、日々の購買人数は減っている(衣料品専門店)。

・新型コロナウイルス感染拡大の第三波により、客足も少ない。忘年会も早くから中止が進んでいる(高級レストラン)。

■先行き

・新型コロナウイルス感染拡大の第三波の影響が懸念されるものの、新型車効果もあり新車販売は改善するのではないか(乗用車販売店)。

・当地域でも今まで以上に新型コロナウイルスの感染者数が増加しているため、当社の重要な客である、高齢者の来店がますます減ることが予想される(百貨店)。

・新型コロナウイルスの感染拡大により、キャンセルが相次いでいる。忘年会、新年会の書き入れ時に相当なダメージとなっており、先行きが全くみえず不安である(一般レストラン)。

・新型コロナウイルス流行の第三波により、宿泊のキャンセルが増えてきた。飲食においては、忘年会、新年会の予約がほぼない(観光型ホテル)。

新型コロナウイルス感染者数の増加による第三波到来が確定的なものとなったことで、外出忌避の動きが強まり、客足が遠のき売上が減るケースが相次いでいる。特に年末年始が書き入れ時の飲食業界では大きな打撃を受けているようだ。

企業関連でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状

・これまで低迷していた自動車関連部品がV字回復し、11月は前年並みにまで戻ってきている(金属製品製造業)。

・年末や年度末にしゅん工期限を迎える工事が佳境に入っているが、新規着工物件が少ないため、総量が減少している(建設業)。

■先行き

・新型コロナウイルスの影響で、今後も巣ごもり需要が増加するため、日用品や食品関係の荷動きが活発になる(輸送業)。

・年末年始の一番出荷が多い時期に、ますます悪化する新型コロナウイルスの影響で、他県との人の移動が制限される上、業務店、飲食店からの受注も大幅に減少すると考えられる(食料品製造業)。

一部では景気のよい話もあるが、新型コロナウイルス流行の継続化、活性化による影響が具体的な形で出ている状況が見受けられる。大手宅配便では巣ごもり化による配送量の増加で生じた遅延が伝えられているが、さらに量は増えるとの認識があるようだ。建設業の「新規着工物件が少ない」とのコメントは要注意かもしれない。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響がうかがえる。

■現状

・求人広告の申込状況は、前年同時期の状況と比べ低い水準が続いている。介護、清掃関連など人手不足が慢性化している一部業種を除いては新規求人の動きが鈍い(新聞社[求人広告)。

■先行き

・新型コロナウイルスの感染者数の急増により、徐々に復活していた接客業の求人が減り、企業も人員の見直しを図ると予測される(民間職業紹介機関)。

雇用市場は景況感を先読みする傾向があるため、「新規求人の動きが鈍い」とのコメントは、今後しばらくは景気の落ち込みが継続するのではとの思惑が支配的であることを推測させる。また新型コロナウイルス流行の第三波で企業が人員の見直しを図るのではとの予測も的外れではないように思える。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントで13件(前回月49件)、先行きのコメントで1件(前回月10件)の言及がある。新型コロナウイルスの第三波の影響が気になり、消費税の話など二の次になっている感はある。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で556件(前回月370件)、先行きで990件(前回月656件)。凄まじいまでの言及数で、消費税率の引き上げも米中貿易摩擦もすべて吹き飛んでしまった状態。特に第三波の到来による先行きへの不透明感の強まりが大きな不安を呼んでいるようだ。そのものズバリ「新型コロナウイルスの終息がみえず、先行き不安がまん延していることから、今後の景気は悪くなる」とのコメントもあるほど。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ特段の警戒が必要なレベルでの流行の終息とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方となるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。人の動きは経済に直結することから、「また流行が拡大するかも」との懸念だけでも経済には大きな足かせとなる(実際第三波到来による現状がその通りの構図となっている)。世界的な規模の疫病なだけに、一刻も早い事態の終息を願いたいものだが。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

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