パートやアルバイトなどの短時間労働者の平均賃金の実情をさぐる(2024年公開版)
正規社員をはじめとしたフルタイム出勤の労働者と異なり、パートやアルバイトのように1日の労働時間が短い、あるいは1週間あたりの労働日数が少ない労働者のことを「短時間労働者」と呼ぶ。この立ち位置にある就労者はフルタイムの労働者と比べ賃金は低く抑えられており、時給制が採用されている場合が多い。今回は厚生労働省が2024年3月に発表した、賃金関連の情報を集約した年ベースでの調査「賃金構造基本統計調査」の報告書を基に、短時間労働者の平均賃金の確認を行う。
まず言葉の定義を確認しておく。
・常用労働者…期間を定めずに雇われているか、1か月以上の期間を定めて雇われている労働者。
・一般労働者…短時間労働者以外の労働者。
・短時間労働者…同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者。
「短時間労働者」は、定義の上では「同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、あるいは1日の所定労働時間が同じでも、1週の所定労働日数が少ない労働者」を意味する。例えば「就業日はフルタイムでの出勤だが、出勤日は週3日」「就業日は一般労働者と同じ平日すべてだが、午後のみの出勤」の場合は「短時間労働者」に該当する。また契約社員の大部分は正規社員と同じ時間帯で働くことから「一般労働者」に該当し、今回の「短時間労働者」には該当しない。
パートやアルバイトの時給に関する話でよく取り上げられるのが、最低賃金制度と最低賃金法。これは都道府県別・産業別で時給単位の最低賃金を法的に定めたもの。例えば東京都の場合は時給1113円(2023年10月時点)となっている。
2023年時点での男女・年齢階層別の短時間労働者における平均賃金(時給)をグラフ化したのが次の図。全体では男性1657円、女性1312円。全年齢階層で女性より男性の方が高い金額である。
男性では40代前半まで大きく上昇した後は大体横ばい-なだらかな漸減、60代後半から落ち始めるが、女性は30代前半でほぼ頭打ちとなりもっとも高い値を示し、それ以降はほぼ年齢とともに漸減している。男女別のパート・アルバイトの需要の違いにもよるが、年を経るに連れて就業可能なパートなどの産業・職種の、男女における違いの表れともいえる(同一職種での比較ではないことに注意。また仮に同一の産業・職種での比較においても、男女で就労内容は異なる場合が多い)。
前年2022年からの額面変移を見たのが次のグラフ。
30代で男女ともに下げの動きが目立つが、若年層と壮齢層はほぼプラス。単純に考えれば、2023年は短時間労働者に関しては若年層と壮齢層では人手不足、30代では人手の余剰が生じていたのだろう。
参考までに男女別・産業別の平均賃金を挙げておく。
男性は教育・学習支援業や医療・福祉が飛び抜けて高い。それ以外は大体1000円強に収まっている。他方女性は医療・福祉がやや高めだが、それ以外は男性と同じく1000円強。
男性は「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」や「教育、学習支援業」「医療、福祉」が飛び抜けて高い。他方女性は「教育、学習支援業」が高めな程度。また、「学術研究、専門・技術サービス業」や「教育、学習支援業」「医療、福祉」で男性との差が大きく開いている。一方で「不動産業、物品賃貸業」のように、男性よりも女性の方が高い値を示している産業もある。
なおこれらの値はあくまでも全国平均であり、地域によって差があること、さらには上記で触れている通り最低賃金法との兼ね合いもある(今回の平均賃金は当然に最低賃金を上回っているが)ことを忘れてはならない。
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