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「ゲームは1日1時間」は守られているのか、子供達のゲーム事情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ スマートフォンでのやり取りが普及しても、ゲームへの魅力は変わらず!?(ペイレスイメージズ/アフロ)

「ゲームは1日1時間」は守られているのか

昨今では主にスマートフォンを用いたソーシャルメディアやチャットなどを楽しむ人も増えているが、今なお子供にとってプライベートな時間の費やし方のメインとなるのがデジタル系のゲーム。その利用時間の実情を国立青少年教育振興機構が2018年8月に発表した「青少年の体験活動等に関する実態調査」(※)の報告書の内容から確認する。

次に示すのは「テレビゲームやコンピューターゲーム(Wii、PSP、DSなど)をすること」との問いに対する、時間を区分した上での回答値から、概算的な平均値を算出したもの。表記上平日や土日を合わせた全体的な平均時間であること、ゲーム機だけでなくパソコンを用いたゲームも含めるがデジタル系のゲームであること(カードやボードによるゲームは含まれない)、該当機種を持っていない・遊べる環境に無い、さらには意図的に遊んでいない人も回答している(当然「まったく無い」を選択する)ことに留意する必要がある。スマートフォン上のゲームは判断が難しいが、同一の設問内の別選択肢で「スマートフォン(携帯電話を含む)を利用すること」があるため、スマートフォン上でのアプリゲームは今件には該当しないと考えてよいだろう。

 ↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、時間)(2016年度)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、時間)(2016年度)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、男女別、時間)(2016年度)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、男女別、時間)(2016年度)

小学生のうちは学年で大きな違いは無く、大体1時間強。中学2年生になると1時間を割り込み、高校2年生では40分足らずとなってしまう。学業に割く時間が増えるのはもちろんだが、今件設問に該当するゲームと認識しないもの(ソーシャルメディアなど)への利用時間が増えるものと考えられる。

男女別では圧倒的に男子の方が長く、女子は半分程度。どの学年でも女子は1時間を超えることがなく、男子は中学2年生でも1日1時間を超えてゲームを楽しんでいる。具体的なジャンルまでは問われていないが、恐らくは遊んでいるゲームの種類も大きな違いがあるのだろう。詳しくは別の機会で解説するが、携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方)の利用時間は女子の方が長いので、メールやチャット、ソーシャルメディアなどのコミュニケーションに、女子は多くの時間を費やしていると考えれば道理は通る。

子供達のゲーム離れは起きているのか

今件項目に関して、経年動向を確認したのが次のグラフ。

↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、時間)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(概算平均時間、時間)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか

平均時間の限りでは、大きな変化は無い。あえていえば2009年度をピークに少しずつ時間が短くなる雰囲気がある。ただしピークと比べて直近2016年度でも0.08時間=4.8分しか違いが無いため、誤差の範囲と解釈してもよいレベル。

他方、具体的な回答配分を見てみると、平均時間はほぼ同じでも、その中身には大きな変化が生じていることが分かる。2012年度からその兆しが見えていたが、2014年度以降でははっきりと、ゲームに費やす時間の二極化が生じている。

具体的には「まったく無い」「3時間以上」の回答率の増加。今件では「まったく無い」は該当機種を持っていない、あるいは持っていてもゲームにはノータッチと解釈できるが、いずれにせよ小中高校生の3割強が「自分は普段からデジタル系のゲームをしていない」と認識していることになる。

元々女子の方がゲームをしていない人の割合は高い。直近2016年度の場合、小学4年生では男子は11.2%だが女子は29.5%、高校2年生となると男子は45.6%だが女子は77.0%にも及ぶ。

↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(「まったく無い」回答率、男女別)(2016年度)
↑ テレビゲームやコンピューターゲームなどを1日に平均何時間ぐらいしているか(「まったく無い」回答率、男女別)(2016年度)

グラフ化は略するが、経年による「まったく無い」の増加は男女ともに生じている。デジタル機器、インターネットへの接触機会は増えているので、インターネット離れ、デジタル機器離れではなく、ゲームからソーシャルメディアなどのコミュニケーションへのシフトが多分に起きていると見た方が無難だろう。

ともあれ、この約10年で子供達の間で1割強もの「ゲームをしていない」人の増加が生じているのは、色々と考えさせられる結果に違いない。

■関連記事:

ゲームをしているのは7割超え、そのうち3/4はネットゲームも…米の子供達のデジタル系ゲーム事情

学生・生徒のソーシャルメディア利用状況をさぐる

※青少年の体験活動等に関する実態調査

直近年度分は2017年2月から3月にかけて各学校(小学校は1年生から6年生まで各100校ずつ、中学校は2年生対象に150校、高等学校は2年生対象に150校)への調査票発送・返信による回収方式で行われたもので、有効回答数は学校数が879校、子供の回収数が18316件、保護者が15769件。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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