「関西ダービー」再び! 2020年の阪神タイガースジュニアがオリックス・バファローズジュニアと対戦
■もう一つの日本シリーズ?
2023年のプロ野球界は阪神タイガースが席巻した。18年ぶりのリーグ優勝を達成すると、日本シリーズは同じ関西に本拠を置くオリックス・バファローズとの対戦となり、第7戦までもつれた好ゲームはタイガースファンのみならず野球ファンを魅了した。
そしてみごと、38年ぶりの悲願の日本一に輝いた。
さて、「関西ダービー」とも称された日本シリーズだが、その“場外戦”が今月6日、大阪府内のグラウンドで開催された。「阪神タイガースジュニアVSオリックス・バファローズジュニア」の一戦である。
ともに2020年の小学6年生時に「NPB12球団ジュニアトーナメント2020」に出場した、いわば関西の“世代代表”の猛者たちだ。
本大会でのタイガースジュニアは1勝1敗で決勝トーナメントには進めず、バファローズジュニアは2連勝したが惜しくも準決勝で敗退した。
あれから3年ー。中学でも中心選手として活躍してきた彼らが、高校進学を前に再び相まみえることとなった。
■迫力ある「ウル虎」ユニフォーム
朝から集合した彼らは、すぐに当時の顔に戻ってキャッキャキャッキャとはしゃぎだした。その様子は小学6年時とまったく変わらない。
だが違うのは、その体だ。当時とは比べものにならない。背が伸び厚みが増した体躯は3年という時の長さを、そして彼らの日々の鍛錬のすごさを物語っている。
まず午前は、タイガースジュニア対バファローズジュニアの試合が7イニングス制で行われた。幾度となく練習試合を行った両チームだが、3年後の今、どんな思いで臨むのか。
タイガースジュニアは白仁田寛和監督が「この試合のために」と持参した「ウル虎の夏」のユニフォームを着用した。ウル虎史上もっとも迫力のあるリアルな虎の顔が描かれた2021年バージョンのものだ。
さらに頬にはアイブラックで「T」の文字を描き、ちびっこ虎戦士たちは威圧感を前面に押し出していた。
■得点経過
先攻・タイガースの得点経過をお伝えしよう。
【一回】
おそらく久しぶりのゲームだったからだろう、バファローズの守備が乱れ、いきなり無死一、二塁となった。
3番・大津昴偉留選手がレフトへ引っ張って先取点を挙げると、ここから辻竜乃介選手、丸山滉惺選手、門田和也選手の4連打、四球をはさんで高井周平選手の3点タイムリー二塁打と、怒涛の攻撃で6点を刻んだ。
【二回】
連続四球と暴投で1死二、三塁の場面を作ると、丸山選手が右越え二塁打で2人を迎え入れた。
【四回】
先頭・門田選手の右前打から連続四球で満塁とし、暴投や野選、大津選手のライトの頭を越す2点タイムリー三塁打で4得点。
【五回】
連続四球から鈴木悠悟選手が右前打で2点を叩きだした。
【七回】
前田翔斗選手の内野安打、中尾勇貴選手の左前打から伊藤歩夢選手の2点タイムリー三塁打、敵失を挟んで熊谷謙臣選手の左前打で1点、大津選手の中前打で1点。
満塁からファーストを襲った丸山選手の当たりはイレギュラーして2者が生還、さらに内野ゴロで1点を追加してスコアボードに7点を書き込み、合計21点とした。
■完封リレーの4投手
【一回、二回】
一方、投手陣も奮闘した。先発の高井選手は投球練習から周囲の目を奪うボールを投げ込んでおり、先頭から2者連続奪三振で立ち上がると、2回を1安打、3三振、無失点と好投を見せた。
【三回、四回】
三回からマウンドに上がった鈴木選手は2イニングスをパーフェクトピッチングで、三振も4つ奪った。
【五回】
五回に登板した木下瑛二選手は先頭を四球で出したものの次打者をきっちりと一ゴロ併殺に取り、最後は三振に斬るなど1回無安打無失点。
【六回、七回】
六回、七回に投げた伊藤選手は最終回に2死満塁のピンチを背負ったが、最後の打者をレフトフライに仕留めて2回を2安打、2三振、無失点でみごと完封リレーを完成させた。
■選手コメント《野手編》
◆大津昴偉留(4打数3安打4打点、2四球、1三振)
「(チーム初安打、初タイムリーは)3-2と追い込まれて、三振するかなと危なかったんですけど、当たったんで安心したっす(笑)。ちょっと、たまたまもあるかな。
今日は打てないと思ってたんです、レベル高いから。上デキですね。ここまで打てるとは思ってなかったです。
中学最後のいい思い出になったっす」。
◆辻竜乃介(5打数2安打1打点、1四球)
「僕、そんな活躍したっけ(笑)?
みんながバンバン打ってくれて、ピッチャーもよくてレベル高いんで、ほんとゲームが締まってすごく楽しかったです。
なんか、みんながなつかしいなって感じで…。やっぱり全員と会いたかったですし、どれくらい成長したか見られてよかったです。
みんなすっごく成長していてビックリしました、ほんとに。僕も負けてられへんなと思います」。
◆丸山滉惺(6打数3安打5打点)
「めちゃくちゃ楽しめたし、それなりの成績も残せたんで、よかったかなぁって思います。
(長打はあったが、ホームランがなかったのは)まぁまぁまぁ、そこはまぁね(笑)。また今度ってことで。
こういう再会はめちゃくちゃ嬉しいっす。またやりたいなぁと思います。何年後かなぁ…僕はいつでも。招待がかかれば、いつでも来ますよ(笑)」。
◆門田和也(3打数3安打1打点、2四球)
「いやまぁ、しっかり打てたんでよかったです。
昨日、ちょっと(バットを)振ってきました。
すごく楽しかったし、こういうリラックスした状態で打てたのが、すごくよかったです」。
■選手コメント《投手編》
◆高井周平(2回1安打0失点)
「すごく楽しかった。この時期はもう投げてないですし、寒いんで、体を使って投げるように気をつけました。肘をいわさんように(痛めないように)。
バッティング(1打数1安打3打点)も楽しくできたし、ほんとレベルの高い選手と野球ができてよかったです」。
◆鈴木悠悟(2回0安打0失点)
「引退してから期間が空いてたから久しぶりの野球で、寒かったんですけど、いい感じに投げられてよかったです。
向こうもジュニアのすごい選手ばっかなんで、しっかり自分のピッチングをするようにというのだけは考えていましたが、普段やってることがそのままできました。
バッティング(2打数1安打2打点)では2ストライクと追い込まれてたんで、しっかりミートすることを意識して打ちました。
今日はめっちゃ楽しかったです」。
◆木下瑛二(1回0安打0失点)
「もう寒くて…。寒くて緊張もあったけど、大胆に投げました。
先頭バッターに四球を出したけど、次のバッターには引っかけさせようとインコース低めに投げた。いい当たりやったけど、ちょっと詰まっとったけん、ゲッツーが取れました。
いやぁ、レベル高くて楽しかったです。
(最後キャッチャーをしたが)普段はしません!小学5年まではやってたけど。怖かったぁ~(笑)。でも楽しめました」。
◆伊藤歩夢(2回2安打0失点)
「いつもよりいいピッチングができました。まっすぐが今日は走ってましたね。
バッティング(1打数1安打2打点)はたまたまです。まじ、たまたまです、ほんまに(笑)。バッティングはほんまにヤバイんです。でも打ててよかったです。
今日はみんなと会えて嬉しかったし、すごく楽しかったです」。
■仁義なき戦い、ホームラン競争
全員で記念撮影を行ったあと、昼食をはさんでホームラン競争が行われた。両チーム8人ずつがそれぞれ1分間の時間制限の中で何発打てるか、その合計数で競う。
結果、44―36でタイガースジュニアが勝利した。
タイガースジュニアのチームトップは11本を放り込んだ西村奏太選手だ。自慢のパワーにさらに磨きがかかっている。
負けたチームには「わさび入りいなり寿司のロシアンルーレット」が用意されており、バファローズジュニアがこれ食べて終了かと思いきや、“泣きの1回”のお願いが入った。そこで、誰がわさび入りを食べたか当てるということになった。
実は、わさびはどれにも入っていないという仕掛けだったのだが、バファローズジュニアの演技力にしてやられたタイガースジュニアは正解できず、最後にもうひと勝負することとなった。
結果、7本対11本でバファローズジュニアも大健闘したものの追い上げ及ばず、タイガースジュニアが51-47と逃げきった。
午後からは“ドラフト指名”で選手を獲得し、両軍シャッフルしての5回制で試合を行い、お互いに大爆笑しながらゲームセットを迎えた。
朝から夕方まで盛りだくさんの内容で、保護者の企画力の素晴らしさが光っていた。ただ試合だけをするのではなく、イベントを盛り込む。入念な準備がないと成功し得なかったことだ。
そこには子どもたちを楽しませてやりたい、いい思い出を作ってやりたいという親の思いが、存分に満ちていた。
■阪神タイガースジュニア・保護者代表の大津博氏
タイガースジュニア・保護者代表の大津博氏は「準備は10月ごろからしてきました。お互いにアイディアを出し合ってね。日中のイベントはオリックスさん側がメインでやってくれました。夜は懇親会があって、それは阪神側の仕切りでやるんですけど」と明かす。
子どもたちの躍動する姿を見ながら「このメンバーで集まれるのも、そうそうないやろからね」と相好を崩し、「みんな大きくなったなぁ…。成長したなと実感しますね」とうなずく。
それぞれ違うチームで活躍してきた16人だが、お互いに結果を気にして記事などを見たりと「刺激になっていて、いいかなと思います」と、その存在は大きいようだ。
「せっかくこうして野球でつながってるからね。これから先も高校、大学と長いこと野球を続けて、みんな一生懸命に頑張ってほしいね」。
保護者同士も絆が深く、再会を楽しんでいた。今後も一つの大きなファミリーとして、その付き合いは続いていくのだろう。
■白仁田寛和監督
両チームとも当時の首脳陣も顔を見せ、選手たちの成長した姿に目を細めていた。
タイガースジュニアの監督を務めていた白仁田氏は、「一昨年、タイガースカップで会った子は数人いるけど、ほとんどが3年ぶりですね」と目尻を下げる。
「久しぶりに会ったけど、ベースは変わらないなと。顔や雰囲気を見ててね(笑)。ただ、体つきが変わっていて、ほんと大人になったなと思って…。成長していましたね、みんな」。
嬉しい再会に、終始笑顔だった。
「なんか想像を超えるというか、やっぱ今の子は違うんだなってのは、つくづく思った。僕らが中学3年のときって、こんな体の子はいなかったですよ。みんな、ほんとデカい。筋肉質というか太いというか、体がしっかりしているという意味で。そういう時代なのかな。だから、プロでも即戦力が増えているのかなと思う。この体の成長具合、成長の早さを見ると、なるほどなと思いますね」。
中学生ながら、そのトレーニングの量や質に思い及び、感嘆する。
白仁田氏自身、野球人生において初めての監督業だったが、その選手だった彼らのことを「教え子」とは表現しない。一緒に戦ってきた“同志”というイメージで「チームメイトかな」という。そんな彼らに対しては「すごいものを見せてもらっているなぁ」という思いを抱く。
「あのころ6年生で、『こうなっていくだろうなぁ』と考えてた“先”を、この子たちは完全に超えている。本当にすごいなと驚くばかりですね」。
その成長ぶりを喜び、と同時に今後の彼らにこんな言葉を贈る。
「可能性は無限大なので、そこにむけて挑戦し続けてほしい。どこかで壁にぶち当たることもあると思うけど、そこであきらめるんじゃなくて、壁を破ってどんどん突き進んでほしい」。
監督と選手の関係でなくなっても、気持ちは傍に寄り添っている。これからもずっと変わらず応援し続ける。
■4月からは高校生
3年ぶりの再会、そして3年ぶりにチームメイトとして戦った一日。もう「ちびっこ虎戦士」などと呼べないくらい大人っぽく、たくましくなったタイガースジュニアたちだが、この日ばかりは無邪気な「ちびっこ」に戻り、めいっぱい楽しんでいた。
そして、最高の笑顔で球場を後にした。
ジュニアたちも4月からはいよいよ高校生だ。夢や希望がたくさん詰まった彼らの未来を想像すると、わくわくする。
甲子園で激突することもあるだろう。もちろん彼らもそれを望んでいる。大舞台でまた、その勇姿を見せてほしい。
全選手の高校が決まり次第、「阪神タイガースジュニア2020」の続報をお伝えする。
(撮影はすべて筆者)
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