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「今年こそチームに貢献して連覇を達成する!」 湯浅京己(阪神)は守護神に返り咲いてタイトル奪取を誓う

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
2024年の“相棒”を前に笑顔の湯浅京己

■今年に懸ける並々ならぬ思い

 新しい年を迎えて湯浅京己投手は気持ちを新たに、そして闘志をたぎらせている。

 昨年は侍ジャパンのメンバーとしてWBCで世界一に輝き、シャンパンファイトで歓喜した。阪神タイガースでもリーグ優勝と日本一でビールかけを2度経験した。だが、自身は度重なる負傷でチームに貢献できなかったことが、とてつもなく悔しかった。

 日本シリーズで電撃復帰し、「少しでも力になれてよかった」とホッとはしたが、とてもじゃないが満足できるものではなかった。

 オフのテレビ番組やイベントで日本一戦士が笑顔を弾けさせる中、湯浅投手に声はかからなかった。「出たかったな…」とポツリ。呼ばれるのは、シーズンを通して活躍をした選手たちだ。もちろんそれはわかっているが、そういう場にチームの顔として出られていない淋しさや歯がゆさを感じていた。

 それだけに、だ。今年に懸ける思いはひとしおである。

今年に懸ける
今年に懸ける

■優勝旅行には貢献してから行く

 昨年のシーズンが終わると、その目は既に2024年に向いていた。

 12月上旬にはアメリカに飛んだ。WBCで知り合った通訳に、トレーニング施設を紹介してもらったのだ。「体が動いてるうちに行きたかった。ほんとやったら秋季キャンプが終わってすぐに行きたかったけど、さすがにすぐはいけないから」。キャンプ直後は球団行事などが続いたためだ。

 アメリカでは動作解析をし、いろいろな話を聞いた。今月に再渡米し、みっちりと本格的なトレーニングをする。

 優勝旅行は断念した。来季の活躍へ向けてアメリカ行きを優先したのだが、やはり今季の自身の貢献度を考えると、大手を振って参加するのもためらわれた。もちろん参加する権利はあるし、チームメイトも歓迎してくれただろう。

 だがそれよりも今の自分には、来季飛躍するための足がかりを作っておくことのほうが、重要だと思えた。だからこそ、「(優勝旅行は)ちゃんと貢献してから行きたいと思っている」ときっぱりと言いきる。

野球教室にて子どもたちに優しい笑顔で接する
野球教室にて子どもたちに優しい笑顔で接する

■アメリカでのトレーニングで習得したいものとは

 さて、湯浅投手がアメリカでのトレーニングで習得したいものとはなんだろうか。

 「12月にやった動作解析にもとづいて、自分に合ったトレーニングとか、ウエイトもそうやし、ケガしづらい投げ方とか…。数値化されることによって、やることが明確になってくるので、そういったところを一つ一つ詰めていきたい」。

 カメラで撮影もしながらの、多角的なアプローチになるようだ。昨季も右前腕と左脇腹の「肉離れ」に苦しめられた湯浅投手にとって、ケガしづらいというのはもっとも求めたいところだ。

2024年バージョンの試合用グラブはシャンパンブラウン
2024年バージョンの試合用グラブはシャンパンブラウン

 さらに考えていることがある。

 「効率のいいフォームで力感なく力強いボールが投げられて、年間通して調子の波が少なくなるようにしたい。そのためには体に負担が少ないフォームで投げないといけない」。

 常に安定したパフォーマンスが出せるように、フォームから見直し、力の伝え方、体の使い方を追求する。

 「投げるっていうだけで、やっぱ負担はくるじゃないですか。その中で、その負担を減らしていかないと、長くはやっていけないから」。

 投手の原資は自身の体だけだ。それをいかにいい状態で長く安定して使えるようにするか。チームに貢献し続けるためには、それは必須だ。

 「いろんな面を全部成長させていきたいので、来年1年だけ見るんじゃなくて何年後も見ながら、考えながら、少しずつ自分の中でも整理しながらやっていきたいと思っています」。

 湯浅投手がどのような“お土産”を持ち帰るのか。それは今シーズン、そしてまた近い将来、明らかになる。

2024年バージョンの黒グラブ
2024年バージョンの黒グラブ

■2024年グラブは1cm小さく、軽くて硬め

 そんな湯浅投手の今年の“相棒”が完成した。前回の記事で日本シリーズでのグラブを紹介したが、それをベースにした小ぶりのグラブだ。

 2023年バージョンのグラブがやや大きいと感じていたところ、市販品からヒントを得て、各指の長さを1cm短くした。(いきさつは前回の記事⇒「湯浅の1球」その手にあったグラブのヒミツとは 日本シリーズで甦った湯浅京己(阪神)が明かす秘話

 たった1cm?と思うなかれ。「全然違う」と湯浅投手は強調する。目をつぶって持ち比べてみても「わかりますよ」というくらい、感覚としては違うようだ。湯浅投手にとって、大きさはとても重要だという。

 「小っさいほうが好きというか、扱いやすい。その中で、はめた感じのフィット感とか。感覚の中でも大きさはけっこう大事にしている。しっくりきていたら、投げるときも違和感なく投げられるので、そこはこだわっています」。

 操作性を重視しているのだ。「握り替えしやすいのがいい」というのも、もともと内野手だったことが無関係ではないというが、実際、今もフィールディングのうまさは内野手並みで、投手陣の中でもトップクラスである。

2024年バージョンのグラブの撮影に臨む湯浅京己
2024年バージョンのグラブの撮影に臨む湯浅京己

 クセや球種がバレないようにと大きめを好む投手もいるが、投げはじめの手の位置が高くない湯浅投手にとっては、そこは気になるポイントではない。「相手にバレないようにというのは、フォームで工夫できる」。よって大きくする必要はなく、むしろ大きいことで扱いづらくなるのが嫌だという。

 重量も「軽いっすね。とくに黒はめっちゃ軽い」と笑顔を見せる。これまた湯浅投手の好みだ。「あまり重いのが好きじゃない。軽くて扱いやすくてフィット感があるのがいい」と大満足なようだ。

 また、「硬めが好き」とも語る。「柔らかすぎたら、自分の好きな形で投げられないんで。自分、投げるときに(グラブを)ぎゅって潰しちゃうから」と、投球時に入れる力に耐えられるよう、硬めに仕上がっている。

ザナックス社の丸井悠平氏と綿密に打ち合わせ(写真提供:ザナックス社)
ザナックス社の丸井悠平氏と綿密に打ち合わせ(写真提供:ザナックス社)

■試合用のグラブはシャンパンブラウンと黒

 では、2024年バージョンのグラブを紹介しよう。試合用はシャンパンブラウンと黒。アドバイザリー契約を結ぶスポーツ用品メーカー・ザナックス社の新色であるシャンパンブラウンは、非常に高級感がある。

 これに“湯浅京己らしさ”を出したのが紐の色で、紫と緑の2パターン作った。紫は自身が好きな色だが、緑は初めて取り入れたカラーだ。

 「このチョイスは岩田将貴です。がんさんと話してて、こっち(緑の紐)を決めたのはがんさんっす。かわいいと思ったんで、それでいこうって」。

 仲がよすぎる二人ならではだ。

 さらに従来から取り入れている黒のグラブもある。こちらは紐やはみだしの色を、これまでにないブルーにした。「水色にしたかったんです。普通の青じゃない。スカイブルーみたいなイメージにしたかった」と言ったあと、「オシャレでしょ?」とドヤ顔も忘れない。非常に気に入っているのが伝わる。

 ザナックス社の丸井悠平氏は「シャンパンブラウンも黒も仔牛の革(キップレザー)を使ってるんですけど、黒のほうはさらに肌理が細かく艶のある、今までとちょっと違う種類の革なんです。これはザナックス側からの提案として作りましたが、自信のある革です」と説明する。

熱く語るザナックス社の丸井悠平氏
熱く語るザナックス社の丸井悠平氏

 一般的にグラブに使われる革には仔牛のキップレザーと成牛のステアレザーがあるが、生後6ヶ月から2歳未満とされるキップは繊維が細かく柔らかい。ハリもあり、握ったときの復元力も高い。体が小さいから1頭から取れる量も少なく、ステアに比べると希少な革だ。

 ザナックス社ではキップを使うことにこだわっており、プロ用だけでなく市販品までもキップを使用している。プロのグラブと同じ素材というのは、業界内でも珍しい。

 新しい黒のグラブは、キップの中でもとくに若い仔牛の革を使っている。つまり、より質の高い最高級の革のグラブということだ。

 「もしかしたら、この黒で開幕戦を迎えている可能性もありますね」と丸井氏。これから自主トレ、キャンプ、オープン戦を経て、どれをメインでゲームに使っていくのか決めていくことになりそうだ。

2024年バージョンのグラブたち
2024年バージョンのグラブたち

■亡きおばあちゃんへの思いを込めた練習用グラブ

 練習用も2種作った。一つは好きな色である紫と白のコンビで、この紫の発色が非常に美しい。そして、もう一つは昨年逝去した父方の祖母・さんが好きだった色、ピンクと緑のコンビにした。

 いつも応援してくれていたおばあちゃんへの思いを込めて、両親におばあちゃんの好きな色を訊いて作ったのだ。

おばあちゃんの好きな色で作った練習用グラブ
おばあちゃんの好きな色で作った練習用グラブ

 小学5年のころから一緒に住みはじめたおばあちゃん。プロ入りしたときには大喜びしてくれた。ただ、おばあちゃんは昔から読売ジャイアンツのファンだった。

 「家にジャイアンツグッズもめっちゃありましたよ。でも、どこにやったんかな。捨てたんかな。なくなってるなぁ」。

 かわいい孫のあっくんが、“宿敵”のタイガースに入団することになったわけだ。となると宗旨替えするのは当然で、気づけば家中にあった「ジャイアンツグッズ」は、いつしか「湯浅京己グッズ」に替わっていた。

 家に電話をかけると時々電話口に出てきて、「頑張れよぉ~」と励ましてくれた。

 「日本シリーズの登板をめっちゃ楽しみにしてた。ずっと野球を見てたっすもん」。

 一昨年は何度も登場して楽しませてくれたあっくん。昨年は負傷により、あまり見ることができなかった。野球中継にかじりついていた忍さんにとっては、さぞかし淋しかったことだろう。それだけに、日本シリーズでの復帰を心待ちにしていた。

 だが、その前に天国に旅立つことになってしまった。でもきっと、甲子園の夜空から見てくれていたに違いない。復帰登板をした日はおばあちゃんの誕生日だった。おばあちゃんが1球で打ち取る力をくれたのだ。

 これからもきっと傍で見守ってくれる。“おばあちゃんカラー”のグラブが、常にそれを感じさせてくれるだろう。

おばあちゃんに抱っこされる4歳の湯浅京己(写真提供:湯浅京己)
おばあちゃんに抱っこされる4歳の湯浅京己(写真提供:湯浅京己)

■クローザーに君臨してタイトルを獲る!

 球団として初の連覇(注:2リーグ制後)がかかる今年のタイガース。湯浅投手も「連覇できるように、チームに貢献したいっていう気持ちが一番。やっぱ昨年できなかった分、それが一番大きい」と昨年来、何度も発してきた「貢献」という言葉を口にして、気合いを入れる。

 だから「どんな場面でも、どんな場所でも、行けって言われたら行きます」とフル回転を誓う。が、そう言いながらも「やっぱ、狙う場所は守護神」とニヤリ。

 「そこはブラさずに」。強い意志をもって照準を定めている。

 昨年はクローザーとしてスタートしながらも、負傷で途中離脱した。その悔しさを払拭したいし、マウンドでまたあの『あと1人』『あと1球』のコールも聞きたい。勝ったときのマウンドでのハイタッチが格別だということも、忘れてはいない。

“相棒”とともに戦う
“相棒”とともに戦う

 さらにその上で、「タイトル、獲りますよぉ」とも宣言した。「大勢(ジャイアンツ)ともタイトル争いしたいっすよ」と、仲よしの同学年右腕の名前を挙げ、熱い戦いを宣言した。

 それでこそ、湯浅京己だ。常に明確な目標を設定し、そこに向かって臆することなく邁進する。

 2024年、湯浅投手はこれまで以上にアツアツなピッチングを見せてくれるに違いない。

「バモス!」
「バモス!」

(表記のない写真の撮影は筆者)

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フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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