「防御率0.00」―驚異の数字を残し、元阪神タイガース・西村憲投手が12球団合同トライアウトに挑む!

防御率0.00。独立リーグ・石川ミリオンスターズのクローザー、西村憲投手(元阪神タイガース)が今季、ルートインBCリーグで残した数字だ。

タイガースから戦力外通告を受けたのは、ちょうど1年前のこの時期だった。再びNPBで輝く為に―。戦う場を探し求めた西村投手がたどり着いたのが、石川ミリオンスターズだった。(過去記事参照⇒西村憲・前編西村憲・後編完全復活した西村憲

独立リーグとはいえ、防御率0.00は見事!
独立リーグとはいえ、防御率0.00は見事!

■「目に見える数字」―防御率0.00

NPBに返り咲く為には、「目に見える結果」「目に見える数字」が欲しかった。「スカウトや見ている人達からは『スピードがどれくらい出ているか』とか、そういうところを見られる。数字の世界なのでね。それを求めながら0で抑えるという感じでやっていました」と話す西村投手。

トライアウトに向けて追い込み中!
トライアウトに向けて追い込み中!

スピードピッチャーではないことは自認している。キレ、コントロールで勝負するタイプだ。だから「目に見える数字」となると、防御率が最もわかりやすい。

そして実際に0.00という数字は残せた。独立リーグとはいえ、見事な結果だ。この「目に見える数字」を残す為に実践したのは、自分で自分を追い込むことだ。「独立リーグだから抑えて当たり前」と周りの見る目も厳しい中、「『絶対にここでは打たれないぞ。点を取られないぞ』という強い気持ちを、自分の中でプラスのプレッシャーにしてやっていました。あえてプレッシャーを増やしてプレーすることで、甘えることなくシーズンを戦うことができたかなと思います」。ストイックな西村投手だからこそ、どのような環境にあっても自分との戦いに負けることはなかったのだ。

股関節の可動域が広い!
股関節の可動域が広い!

ただそんな中、難しかったのは登板間隔だったという。ゲーム数自体が少ない上に、クローザーという役割ゆえ、登板はゲーム展開に左右される。長い時は2週間も間隔が空くこともあったそうだ。

しかしそれさえも、プラスに捉えた。「ブルペンの質を高めるようにしました。自分自身の意識であったり、実際にバッターを立たせてみたり。要するにどれだけイメージできるかなんですけど」。

その“訓練”は、試合中から実践していた。「試合をしっかり見て打者のイメージを膨らませるというように。抑えというポジションをやらせてもらっていたので、試合を見る時間も長かった。そういう時間を大切にしたいなというのもありました」。全てにおいてプラスに考え、全ての時間をパフォーマンス向上の為に使った。

ちょっとひと休み
ちょっとひと休み

そして何より、多田野数人ピッチングコーチのバックアップが大きかったという。「やりやすい環境でやらせてくれたし、NPBを意識した使い方や調整法を考えてくれた」と感謝している。

例えばタイミングを見ながら「連投しておこうか」とか「今日はイニングをまたいでみるか」といった、今後を睨んだ起用をしてくれたり、調子の波を小さくするべくアドバイスを与えてくれたりした。

「『もっとやんないと、もっとやんないと』と詰め込むタイプ」という西村投手の性格を把握し、「ひと呼吸入れてくれた」のも、多田野コーチだった。

多田野コーチは話す。「西村は練習から違っていたからね。準備やケア、試合に臨む姿勢…あの姿を見ていたら、こういう結果が出るのは当然だと思う。西村にはNPBにいつ戻ってもいいように、同じような緊張感を持たせてやらせたかった」。チームを挙げて、西村投手のNPB復帰を後押ししているのだ。

■12球団合同トライアウトに向けて

NPBに復帰する為のチャンス―12球団合同トライアウトは半月後に控える。シーズンが終了して40日。実戦からはかなり遠ざかっている。「すごく間隔が空くので、難しいことは難しいんですけど、逆にそれだけ調整する時間があると考えれば、気持ちも楽にいけるんじゃないかなと思っています」。得意のポジティブシンキングでプラスに捉えるようにしている。

ジムでトレーニング
ジムでトレーニング

現在、球場を借りられる日はブルペンで50球ほどのピッチングを行い、そうでない日は公園などで走り込んだりジムでトレーニングしたりで、コンディションを上げることに腐心するという日々だ。

「やはり、焦りもありますね」と正直に吐露する。それでついつい追い込んだトレーニングをしてしまいがちだ。「体調を崩さないようにはしないといけないですけどね。体のコンディションを上げて、もっともっと仕上げていかないと」。

公園の坂を一気に駆け上がる
公園の坂を一気に駆け上がる

今後に不安がないわけではない。「プレーをしている時はそういうことは全然考えないし、グラウンドに出たら自分のパフォーマンスを上げること、試合で相手を抑えることしか考えないんですけど、やっぱり夏が終わって秋になって、周りから『来年、どうするんだ』とか訊かれると、『あぁそうだな。考えないといけないな』って思いますし、どうなるんだろうという不安はありますね」。

しかし今は、目の前のチャンスに向けて邁進するしかない。「ただもう一日一日必死にやって、それで結果がついてきて、必要とされるところが見つかればと思ってやっています」。

とにかくやるしかないのだ。野球を続けたいし、できる自信もある。「まだまだ自分のパフォーマンスは上げられると思っていますし、今年1年、数字も出てくれたので、それも材料に見ていただけたら嬉しいですね」。言葉にぐっと力を込めた。

故障から完全復活し、輝きを取り戻した西村投手。新たな環境、新たなポジションから得た“引き出し”を武器に、12球団合同トライアウトで自身の未来を掴み獲る。

真摯にインタビューに答える西村投手
真摯にインタビューに答える西村投手