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金属アレルギーと食事:チョコレートで湿疹が悪化?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

金属アレルギーは、時計やネックレス、ピアスなど、多くの人が身につけるものから引き起こされます。しかし、それ以外の金属アレルギーもあることが知られています。例えば、虫歯の治療で使用される金属が原因で引き起こされることもあります。また、食事から摂取する金属も、アレルギー反応を引き起こす可能性があります。今回は、金属アレルギーと食事について、知っておくべきことを紹介します。

金属アレルギーの原因

金属アレルギーは、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛、銅など、特定の金属に対する免疫系の反応によって引き起こされます。多くの場合、皮膚症状を引き起こします。たとえば、時計やネックレスなど、身につけるものに反応することがよく知られています。この場合、皮膚にかゆみや炎症、水ぶくれ、発疹などが現れます。

しかし、金属アレルギーは、身につけるものだけが症状を引き起こすわけではありません。食べ物によって症状が出ることもあります。特に、豆類コーヒーチョコレート紅茶ココア香辛料オートミールなどに多く含まれる金属が原因で、アレルギー症状が現れることがあります。

金属アレルギーによる症状は、金属が触れた部位に、かゆみ、発疹、ひどい場合は水ぶくれを引き起こします。アトピー性皮膚炎の患者さんの一部には、金属アレルギーを合併している人も報告されており(文献1)、金属を含む食材でアトピー性皮膚炎が悪化する場合もあります。

金属アレルギーと食事

金属アレルギーによる食事の影響は、すべての人に同じように現れるわけではありません。しかし、アレルギー反応を起こす金属を避けることは、金属アレルギーを持つ人々にとって重要です。

アレルギー反応を引き起こしやすい金属には、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛、銅が含まれます。これらの金属は、さまざまな食品に含まれています。たとえば、コーヒーチョコレート紅茶ココアには、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛、銅が含まれています。また、豆類にもこれらの金属が多く含まれています。

写真:アフロ

以下に、金属アレルギーを起こしやすいニッケル、クロム、マンガン、亜鉛、銅を多く含む食材の3つをあげます。

ニッケル

チョコレート

そば粉を使ったお菓子(そばがきなど)

カシューナッツを使ったお菓子(ナッツバーなど)

クロム

シリアルバー

グラノーラ

チョコレート

マンガン

くるみを使ったお菓子(ウォールナッツケーキ、クッキーなど)

シリアルバー(特にオーツ麦やナッツが含まれるもの)

ピーナッツバター

亜鉛

チョコレート

カシューナッツを使ったお菓子(ナッツバーなど)

シリアルバー(特にナッツが含まれるもの)

チョコレート

ゴマを使ったお菓子(ごま団子、ごまプリンなど)

グラノーラ

上記はあくまでも嗜好品やお菓子に絞ったものです。ご覧いただくとわかるように、チョコレートは金属が多く含まれる食べ物です。

金属アレルギーの診断

金属アレルギーを疑う場合には、皮膚科医による金属パッチテストが行われます。これは、皮膚に試験用の金属を貼り付け、一定期間経過後にアレルギー反応が起こるかどうかを確認する検査です。この検査により、どの金属にアレルギーがあるかを特定することができます。

写真:アフロ

食事制限について

金属アレルギーを持つ人々は、食事によってアレルギー反応を引き起こす金属を避ける必要があります。ただし、食事制限をしすぎることは、健康に悪影響を与えることがあるため、専門家(アレルギー専門医)に相談することが重要です。アレルギーの症状によって、どれくらい制限が必要かが異なります。個人で判断せず、食事制限する際は、必ずアレルギー専門医の指導に従いましょう。

アレルギー専門医を探す際は、以下のリンクが便利です。

日本アレルギー学会専門医・指導医一覧(一般用)

まとめ

金属アレルギーは、時計やネックレスは気が付きやすいものです。しかし、忘れてはならないのが食事から引き起こされるものです。特に、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛、銅などの金属を含む食品によって、アレルギー反応を起こすことがあります。アトピー性皮膚炎の患者さんの一部には、金属アレルギーを合併していることが知られています。食べ物に含まれる金属にも注意してみてください。金属アレルギーを疑う場合には、皮膚科を受診し金属パッチテストを受けることをおすすめします。過度な食事制限は健康を害します。専門家の指導の下、適切な食事制限をすることを心がけてください。

文献1:Allergol Int. 2022 Jan;71(1):14-24.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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