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【最新研究】アトピー性皮膚炎が片頭痛のリスク因子に?頭痛との関連性を解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【アトピー性皮膚炎と頭痛の関連性 - 最新の研究結果とは】

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性の炎症性皮膚疾患です。最近の研究で、アトピー性皮膚炎が頭痛、特に片頭痛のリスク因子となる可能性が示唆されています。Frontiers in Neurology誌に掲載された研究によると、アトピー性皮膚炎を持つ患者さんは、そうでない人に比べて頭痛を発症するリスクが高いことが明らかになりました。

研究チームは、2023年12月1日までに発表された関連研究を抽出し、メタ分析を行いました。その結果、アトピー性皮膚炎患者における頭痛の発症リスクは、オッズ比で1.46倍(95%信頼区間: 1.36-1.56)高いことが分かりました。さらに、片頭痛に限定した場合でも、アトピー性皮膚炎患者のリスクはオッズ比で1.32倍(95%信頼区間: 1.18-1.47)高いという結果が得られています。

この関連性は、アトピー性皮膚炎の重症度によっても異なることが示唆されました。軽度のアトピー性皮膚炎患者の頭痛リスクはオッズ比で1.26倍、中等度から重度の患者では1.23倍高くなっていました。地域別では、北米、アジア、ヨーロッパのいずれにおいても有意な関連性が認められました。

【アトピー性皮膚炎が頭痛を引き起こすメカニズム】

アトピー性皮膚炎と頭痛の関連性については、まだ完全には解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。一つは、アトピー性皮膚炎による慢性的な炎症が、頭痛の引き金となっている可能性です。炎症性サイトカインが神経系に影響を及ぼし、頭痛を引き起こしているのかもしれません。

また、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみや睡眠障害が、ストレスを増大させ、頭痛のリスクを高めている可能性も考えられます。実際、診察室で診るアトピー性皮膚炎の患者さんの多くは睡眠障害を抱えており、質の良い睡眠を取れていない可能性が高いです。アトピー性皮膚炎と頭痛の関連性を明らかにすることで、両疾患の予防や治療法の開発に役立つ可能性があります。今後、より大規模な前向きコホート研究を行い、交絡因子を考慮しながら、詳細な関連性を調べていく必要があるでしょう。

【日本におけるアトピー性皮膚炎と頭痛の現状】

日本では、成人の約1割がアトピー性皮膚炎を抱えていると言われています。一方、頭痛も非常に多くの人が悩まされている症状の一つです。日本頭痛学会の調査によると、日本人の約40%が何らかの頭痛を経験しているとのことです。

今回の研究結果は、海外のデータに基づくものですが、日本においても同様の傾向があると考えられます。アトピー性皮膚炎を持つ方は、頭痛の症状にも注意を払い、必要に応じて医師に相談することをおすすめします。また、頭痛を予防するために、ストレス管理や睡眠の質の改善にも努めましょう。

参考文献:

Yang W, Dai H, Xu XF, Jiang HY, Ding JY. Association of atopic dermatitis and headache disorder: a systematic review and meta-analyses. Front Neurol. 2024;151383832. doi:10.3389/fneur.2024.1383832

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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