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暖かくなると警戒が必要 トコジラミが活動を始める季節がやってきます

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

「トコジラミ」という虫の名前、最近よく耳にしませんか? 昨年秋にフランスや韓国などで大発生し、ニュースになりました。刺されるととても痒くて眠れなくなるほどの被害が起こります。冬の間は活動していなかったトコジラミは、暖かくなるこの春から再び活動を始めます。今回はこのトコジラミについて、生態と駆除方法を2回に分けて詳しくお話します。

トコジラミはどんな虫?

成虫の大きさは約5mmで、茶褐色の平べったい虫ですが、吸血すると膨らんで厚みが出ます。翅がないため飛ぶことはできません。暗いところが好きなので、日中は見かけることがほとんどありません。夜になると出てきて人を刺します。

「シラミ」という名前が付いていますが、シラミ類ではなくカメムシの仲間です。

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※リンク先にトコジラミの画像が掲載されています。苦手な方はご注意ください。

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明るい場所は苦手

トコジラミは部屋の中にいますが、明るいところが苦手なので、昼間は暗い潜み場所に隠れています。厚みのない虫なので、布団やベッド、室内の壁の割れ目や家具の隙間、カーテンの重なった部分や畳の裏側などに潜むことができ、夜になると出てきて寝ている人を吸血してきます。刺される場所は、寝具から出ている首や手足部分が多いようです。吸血時間帯は夜の暗い間で、朝明るくなるまでにまた潜む場所に戻るため、朝起きた時には虫は見当たらず、刺されたことに気づかないことがあります。

どうして人を刺すのか

トコジラミにとって、血液は自分たちが生きていくために必要な栄養源です。蚊のようにメスが産卵に必要な時だけ血を吸うのではなく、自分自身が生きていくために食事として血が必要なので、成虫も幼虫もメスもオスも刺します。

刺されるとどうなる?

刺されると、皮膚に赤い発疹が現れて、強いかゆみを感じることが多いです。ただし、初めて刺された場合は(たくさんのトコジラミに一度に刺された以外は)、発疹は出ません。何度も刺されると、体が反応を示して、発疹やかゆみが現れます。ですので、いちばん最初に刺された時は、どこで刺されたか、場所を特定するのが難しくなります。

トコジラミ刺症(著者撮影)
トコジラミ刺症(著者撮影)

刺し口が2つ並ぶとトコジラミの仕業?

「トコジラミに刺されると刺し口が2つになる」とよく言われますが、これは一部の事例を指しています。実際にはトコジラミは一度刺すことで吸血を終えることがほとんどです。ただ、たまに2つの赤みが並んで現れることがあり、その特徴的な様子が強調されて伝えられてきたのでしょう。時には、5つや6つといった複数の赤みが並ぶこともあるようです。

寒さと飢餓に強い

トコジラミは、寒さに強く10度程度あれば2年近く生きていたという報告もあります。また、吸血しなくても2か月~1年近く生きることができます。冬の間は活動をせず、これから暖かくなってくると活動を始めるので注意が必要となります。

日本におけるトコジラミの歴史

昔は「ナンキンムシ」と呼ばれていたトコジラミは、幕末から日本に生息していて、第二次世界大戦後にも一般的に生息していましたが、DDTなどの強力な殺虫剤の普及によって、1970年代にはほとんど見られなくなりました。しかし、2000年代以降、再び被害が広がり始め、特に殺虫剤(ピレスロイド系)が効かない「スーパートコジラミ」が増加しています。

トコジラミに関する相談件数の増加

私が勤務しているアース製薬では、トコジラミの相談件数は2023年は前年比312%増の975件ありました。日本でもじわじわとトコジラミが広がっているようです。

やはり、ニュースなどで海外で大量にトコジラミが増加していることが報道され、それをご覧になった方が、旅行に行くときに何か対処できる方法はないでしょうか?というお問い合わせがあるようです。

最後に…

今回は、トコジラミの基本的な生態についてお伝えしました。次回はトコジラミの対策をお伝えします。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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