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夏に活動的になる「ノミ」、ヒトが刺されると激しいかゆみや感染症のおそれ 被害を防ぐ方法とは

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
イラストはイメージ(提供:イメージマート)

「ノミ」と聞くと、ペットなどの動物だけ関係があると思う方が多いかもしれません。でも、ノミは人も刺してきます。刺されると、かゆみが激しく、感染症にかかる心配もあります。7~9月に活動的になるノミについてお話しします。

ノミってどんな虫?

ノミは、世界には約2,000種、日本には約80種類が知られています。イヌノミ、ネコノミなどさまざまなノミがいますが、現在の日本では、ノミによる被害のほとんどは「ネコノミ」です。ネコノミはイヌノミに比べて人に付きやすい傾向があり、近年イヌノミより優勢で被害例が多く報告されています。ヒトノミもいるのですが、現在の日本ではほぼ確認されていません。この記事ではネコノミについて解説していきます。

ノミの特徴は?

ノミの成虫の大きさは、1.5~3.5mm、褐色で、左右(縦)に扁平な体をしています。この扁平な体が、寄生する犬や猫の毛の間に潜ったり、移動したりするのに適しているのです。また、体には多くの剛毛が生えていて、動物の毛に絡みつくことができ、動物から離れにくく落ちにくい構造になっています。メス成虫は寄生している動物の上で産卵し、平均約160個、最高432個を産みます。

※リンク先にノミの画像が掲載されています。苦手な方は閲覧ご注意ください。

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ノミの得意技はジャンプ

ノミは、吸血しようとする際、動物や人の呼気の二酸化炭素や体温を感知して、近づいてくるのを待っています。垂直方向に30cmくらいジャンプできるので、近づいてきた動物や人を目がけて跳んできて、くっ付いてしまいます。自分の体長の100~200倍をジャンプできるので、もし、ノミの体長が人間並みにあれば、東京タワーくらいまでジャンプしている計算になります。

どこにいてどこで刺されるの?

家の中で繁殖するときは、飼っているネコやイヌなどのペットがノミを持ち込む場合が多いです。ほかにも物置やガレージや床下に侵入した野良猫などに付いているノミが繁殖して家の中に入ってくることもあります。

また屋外では、ノミが付いている野良猫などがいる公園などの場所は要注意です。そういった場所で遊んだ際に被害に遭うことがあります。ノミがさなぎになるとき、砂粒などを集めて繭を作るので、砂場は特に注意が必要です。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

ノミに刺されると遅れて反応し、とんでもなくかゆくなる

メスだけしか血を吸わない蚊とは違い、ネコノミはオスもメスも血を栄養源としているので、オスメスともに吸血します。吸血時間は長く、20~25分もかかります。

また、吸血された翌日頃からかゆみや皮疹が出る遅延型反応を起こすことが多いため、ほとんどの人は刺されたことにすぐには気づきません。

症状は、人によってかなり違いがありますが、蚊に刺されたときよりひどくなり、かゆさはしつこく残って何日間かは続きます。

刺されたところがひどくなるときは

ノミの唾液によるアレルギーにより、強いかゆみ、紅斑、水疱などが出る場合もあります。また、かゆくて引っ掻くことで、化膿してしまう場合があります。お子さまの場合は、搔きすぎるのを防ぐため、爪を短く切ってあげましょう。

症状がよくならない場合は、皮膚科を受診することをお勧めします。

人獣共通感染症になることも

「猫ひっかき病」という名前の感染症があります。「バルトネラ菌」を持ったノミがネコやイヌを吸血することによって感染し、感染したネコやイヌに引っ掻かれたり、かまれたりすることで人に感染・発症する病気です。バルトネラ菌は、ネコやイヌには常在菌なので無症状ですが、人が感染すると傷口の腫れや化膿、発熱、リンパ節の腫れなどが起こります。この感染症は、ノミが活動的になる7~12月にかけて増加します。

ノミの被害を防ぐには

予防するには

ネコやイヌなどのペットにノミが発生することが家での繁殖や人が刺されるいちばんの原因になるので、ペットの体毛や寝ている場所を日頃から清潔に保つことが重要です。

野良猫などがいる公園ではノミが発生していることが多いので、ペットとの散歩時やお子さまが遊ぶときなどは、持ち帰らないために注意が必要です。ノミのジャンプ力はすごいのですが、30cm程度なので、成人の場合はひざ下が狙われます。暑い夏はサンダルを履きたいとは思いますが、肌の露出を避けるスニーカーを履く方がリスクは低くなります。虫よけスプレーをかけてからお散歩に行くことをお勧めします。犬猫用にも虫よけスプレーがありますし、ノミやダニを駆除する薬剤滴下の製品などがありますので活用しましょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

ペットとのお散歩帰りには家に上げる前にペットとご自身の身体をチェックして、部屋の中にノミを入れないようにしましょう。そのときはマダニも付いていないか一緒に確認してください。

※参考記事:感染症を媒介するマダニ、「刺されない」ことが重要 野外に行く前後のチェックポイントとは

駆除方法は

ノミがネコやイヌなどのペットに寄生してしまった場合、ノミはペットの毛の中で産卵します。ただ、卵は高温に弱く、動物の体温では生きていられないため落下します。ペットが使用していた毛布などは廃棄して、床に掃除機をかけ、ノミに対する効果のある殺虫スプレーやノミ捕獲器などを使えば安心です。

最後に…

私は1度ノミに刺されたことがあるのですが、治まったと思ったら、またかゆくなってきて、搔くと再び腫れてかゆくなるなど、ぶり返しが1週間くらい続き、夜寝ていてもかゆくて目が覚めることもあり、とても不快でした。

「搔く(かく)」という漢字が、手へんに蚤(ノミ)というのは納得です。ノミは目に見えないわけではないのですが、とても小さく見逃しやすいです。刺されないように十分注意し、予防しましょう。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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