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ガーデニングや人にも害? ナメクジが梅雨時期に多いのはなぜ? 被害に遭わない方法は?

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(提供:イメージマート)

梅雨の季節に多く発生するナメクジ。同じ仲間であるカタツムリは童謡まであり、かわいいと感じる人もいるのに、ナメクジは嫌いな人が多いようです。ナメクジはどんな害をもたらし、なぜ嫌われているのでしょうか? 今回はナメクジについてお教えします。

ナメクジは何の仲間?

姿形からは想像しにくいのですが、陸に棲む巻貝の一種です。ナメクジもカタツムリも、同じ祖先が進化したもので、進化の過程で、ナメクジは殻が退化し、カタツムリは殻を付けたまま進化したものと考えられています。

ナメクジの好きな場所は?

生きていくためには十分な水分が必要なので、ジメジメしたところに生息していて、地面や植物からの水滴を飲んだり、皮膚を通して吸収したりしています。夜行性で、日中は植木鉢やプランターの下、ブロックやレンガの下、草花の裏など湿度の高い場所にいます。乾燥が苦手なので、天気のいい日に見かけることはほぼないのですが、雨の日や雨上がりの時などは、日中でも見かけることがあります。

ナメクジは何を食べているの?

ナメクジの口は、「おろし金」のような多数の歯を持つ舌があり、かじって食べるというより、すり潰して食べているので、硬いものはあまり食べることができないようです。好んで食べるものは、柔らかい葉っぱや花びらなどです。葉や花びらがボロボロと欠けている場合はナメクジが食べた跡でしょう。またイチゴやイチジクなどの柔らかい果実も好んで食べます。暗いところが好きなので、キャベツやレタスなどの結球しているものの中に入り込んで食べることもあります。無農薬のキャベツなどをいただいた時に中からナメクジが出てきてびっくりしたという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

ナメクジに寄生虫が潜んでいることも

ナメクジの体内には広東住血線虫(かんとんじゅうけっせんちゅう)という寄生虫が潜んでいることがあります。この寄生虫は、「ネズミの肺」→「ネズミの消化管」→「ネズミの糞中」→「糞を食べたナメクジ(やアフリカマイマイ)の体内」→「ナメクジを食べたネズミの肺」…という順番で成育しています。

この寄生虫が人の体に入ると、髄膜脳症を起こすことがあり、1~2週間の潜伏期間後に激しい頭痛や発熱などの症状が出ます。まれに後遺症を残すこともあり、2000年には日本で初めての死亡例も出ています。今のところ沖縄県でしか感染していませんが、他の地域でも起こる可能性はあります(※)。

一般的に、「ナメクジを食べる」ということはないと思いますが、レタスなどの野菜に紛れたものを誤って食べてしまうことがあるので注意が必要です。ナメクジを触った時は必ず手を洗い、ナメクジが這ったかもしれない野菜を食べる時は、よく洗ってから食べるようにしてください。

ナメクジを発見するコツ

水分があるところはナメクジにとって歩きやすい(這いやすい)のですが、水分がないところは、歩きやすくするために自ら粘液を出してから歩いているので、ナメクジが通った後は白い筋が付いています。その白い筋の先の葉っぱや花びらが傷んでいたら、ナメクジが食べている証拠です。ネバネバの粘液は乾燥や外部の菌からナメクジの体を守っています。

ナメクジ被害を防ぐために

家の周りの除草や掃除をする

ナメクジの好きなジメジメした場所をなくすことが大切です。雑草や落葉を掃除したり庭木の剪定をしたりして風通しをよくすることで、ナメクジの嫌いな日当たりがよく乾燥した場所になり、ナメクジは別の場所へ移動するので徐々に減っていきます。

イラストはイメージ
イラストはイメージ提供:イメージマート

薬剤を効果的に使う

1まずは寄ってこないよう予防

ナメクジを寄ってこさせないようにするには、忌避タイプの製品を使用するとよいでしょう。最近は化学殺虫成分不使用のものもたくさん出ています。ナメクジが出そうな場所へ撒いておくと、商品にもよりますが忌避効果が1ヶ月以上続きます。

2気配があるなら毒餌

出てくる場所がだいたいわかっていたら、毒餌タイプが効果的です。直接手で触らなくてもよい容器に入った毒餌をナメクジの通り道に設置しておくと、誘引されて中の餌を食べ、退治できます。容器に入っているので雨や散水に強く、ペットの誤食を防ぐ構造にもなっているので安心です。

3見かけたらスプレー

ナメクジを見かけた時には、スプレー剤(シャワータイプもあり)をかけるとよいでしょう。即効性があるのに天然成分由来で作られたスプレー剤も多く出ていますのでペットにも安心です。

ナメクジに塩をかけると溶ける?

やってみたことがある人もいらっしゃるかと思うのですが、ナメクジに塩をかけても溶けません。浸透圧の関係で体内の水分が出て行っているので、小さくなりダメージは受けるのですが溶けることはありません。実際にやってみたところ、パラパラとかけるだけでは、一旦はダウンしたように見えるものの、数時間後には動いていて、退治にはかなりの塩が必要でした。また、庭の土に塩が混ざると植物や土壌を悪くする塩害になるのでお勧めはできません。

ビールトラップは効果あるの?

ビールトラップでナメクジを退治できるという方法もよく耳にします。この方法は、ビールでナメクジをおびき寄せて溺れさせるという方法です。効果はあるのですが、ビールを入れる容器は、ナメクジが溺れる高さが必要です。また、何メートルも先のナメクジは寄ってこないので、たくさん設置しないといけないことから、コストも手間もかかるので効率的ではないと考えられます。

最後に…

私は、仕事で「チャコウラナメクジ」という種類のナメクジを飼育しています。このナメクジは戦後、アメリカ軍物資に紛れ込んで、日本に定着したと考えられていますが、現在は、日本の住宅の庭や畑などで最も普通に見られる種となっています。

民間療法では、ナメクジを生きたまま飲み込むとぜんそくに効くと言われることがあり、私の祖母はそれを信用していたようですが、上記のように広東住血線虫が潜んでいる危険性がありますので、絶対にやめてください。

(※)国立感染症研究所HP 「広東住血線虫とは」

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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