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【梅雨入り】ムカデによく会う季節到来 家への侵入防止と駆除方法は

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

ムカデをご存知ですか? 漢字では「百足」と書きますが、100足あるムカデはいません。脚がたくさんあるので気持ち悪い、かまれるから怖いと感じる方が多数かと思います。6月~7月の梅雨時期に活動的になるムカデについて生態と対策をお話しします。

日本のムカデ

日本では約150種類が生息していますが、日本で人や動物をかんで傷を負わせる種類は、主にオオムカデ科に分類される体長5~20cmの大型種です。中でも、トビズムカデ、アオズムカデ、の2種が私たちの身近にいる種となりますので、こちらでは、「トビズムカデ」について説明します。

トビズムカデの一生

春の最低気温が15度を超える頃に活動を開始します。その後、5月上旬から約2か月間、繁殖期を迎えます。ムカデはいわゆる交尾はせず、オスとメスが出会うと、オスは精子の入った袋(精包)を落とし、メスはそれを拾って受精します。その後、メスは産卵するために、外敵の少ない湿気のある静かな環境を探します。子ムカデたちは、9~10月頃自立します。

ムカデは基本、肉食なので生きた昆虫類、クモ、ミミズなどを餌としています。寿命は6~7年とされています。

梅雨時期によく見るのはなぜ?

それは、繁殖期がちょうど梅雨時期と重なるためです。繁殖期のムカデは子孫を残す相手を探すため、1年のうちでもっとも行動範囲が広がります。また、産卵場所を探したり、梅雨の大雨で棲み処(すみか)を失ったりすることなどから、住宅の敷地内の庭に、石や砂利、芝生などがあると外から侵入してきます。

ムカデはなぜ人をかむの?

ムカデは自分から人を襲うことはありません。ムカデが人や動物をかむのは、自分の安全を確保するための防衛本能なのです。偶発的に人と触れてしまった際、身を守るためにかみます。知人がキャンプで海辺に行った時に、サンダルを履いた瞬間、足の親指をかまれました。これは、ムカデがたまたまサンダルに潜んでいて、それに気付かず履いた結果、驚いたムカデが身を守るために防衛してかんだと考えられます。自ら攻撃することはないので、1回かんだ後は猛烈な勢いで走り去ります。また、洗濯物の隙間に潜んでいて取り込むときなどに不意にかまれることもあります。

そんなムカデに対処するにはどうしたらいいでしょう?

シーン別にご紹介します。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:アフロ

家の中でムカデを見つけた時は?

ムカデの素早い動きを瞬時に止めることが大切です。凍結剤の入った殺虫スプレーを使用することで、ムカデの動きを瞬時に止めることができ、殺虫成分で駆除もできます。

家の外でムカデを見つけたら?

外にいるムカデを家の中に入らせないようにするには、家の周囲に侵入防止の粉剤をまいておくことをお勧めします。粉剤には雨水をはじくものもあり、梅雨でも使用できます。

家の周りに隠れているムカデには

ムカデは家の周りに潜んでいることも多く、家の中に入って来る前に対処したいものです。生きた昆虫を餌として食べることが多いのですが、樹液などもなめています。ムカデに食べさせて駆除する毒餌(どくじ)剤を家の周囲に置いておくことで隠れたムカデにも対処できます。粉剤をまくのが嫌な方にもお勧めです。

最後に…

トビズムカデのメスは、10個から数十個の卵を産みますが、卵が孵化(ふか)して幼体になり、自分で生活できるようになるまでずっと子供の世話をしています。その間約1ヶ月。ムカデのお母さんは、飲まず食わずで必死にわが子を守っています。

ただ、見た目が気持ち悪いという方もいらっしゃいますし、何より、かまれると激しい痛みと赤い腫れが出ます。痛みは数時間で治まってきますが、翌日以降にさらに腫れる場合もあります。また、アナフィラキシーショックと呼ばれる急性アレルギー反応が起きる可能性もありますので、注意が必要です。

ムカデを見ることが多い梅雨時期は、侵入防止、毒餌剤などの殺虫剤などを用いての予防をお勧めします。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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