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子どもが頭をぽりぽり「アタマジラミ」の仕業かも 清潔にしていても要注意

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

「アタマジラミ」という虫を知っていますか? 夏に発生すると思われていることが多いのですが、一年中発生しています。今回は、秋や冬でも発生する「アタマジラミ」について生態や対策方法をお話しします。

アタマジラミってどんな虫?

人に寄生するシラミは、「アタマジラミ」「コロモジラミ」「ケジラミ」の3種類です。アタマジラミは、成虫は2~4mm程度で全体に白っぽい灰色をしていて、幼虫も成虫も人の頭皮から吸血します。子どもの頭髪、特に長髪の子に寄生する確率が高いとされています。寿命は1ヶ月程度ですが、人の身体から離れると2~3日しか生きられません。産卵数は1日に3~4個で、一生で約100個産卵します。卵は1週間で孵化して幼虫になり、吸血してきます。また、飛んだり跳ねたりはしません。

刺されるとどうなるの?

「アタマジラミ症」という皮膚寄生虫感染症になります。主な症状は、皮膚の激しいかゆみです。最初、1~2匹のアタマジラミが頭髪に寄生し始めた時にはほとんどかゆみがなくわからないことが多いのです。そこから、3~4週間過ぎて、アタマジラミの数が多くなった頃に激しいかゆみに襲われるようです。「かゆい」と感じた時には既に多くのアタマジラミが頭髪に寄生していることになります。「かゆみ」で不眠になることもあり精神的にも負担になります。またあまりのかゆさに皮膚をかきすぎると、その傷から細菌などの二次感染が起こり発熱などの症状を起こす場合もあります。

どこでうつるの?

アタマジラミは人から人にうつります。清潔にしているからうつらない、不潔にしているからうつる、というものではなく、だれでもどこでもうつる可能性があります。うつる際に一番多いケースは、直接的な頭と頭の接触です。子ども同士は頭を近づけて遊ぶことが多いのでうつりやすいのです。またタオルやヘアブラシ、帽子、マフラーなどを貸し借りすることでうつることがあります。

お子さんにアタマジラミが発生すると、「ちゃんとシャンプーしてあげなかったから」と自身を責めてしまう方もいらっしゃいますが、どんなに衛生的にしていても集団生活の中で発生してうつることがあります。きちんとした対策を心がけていれば、うつることを心配して通園や通学などの制限をする必要はなく、何か病気が感染することはないとされています。

イラストはイメージ(提供:いらすとや)
イラストはイメージ(提供:いらすとや)

ただ、アタマジラミのことを知らないと、お子さんが「頭がかゆい」と言っても見逃してしまうことがあります。知らないと対処ができず、アタマジラミが増えてしまいます。スキンシップを兼ねてお子さんの髪の毛を丁寧にチェックしてあげることで、早期発見ができ、早期駆除に繋がります。

お子さんが頭をかいていたら要注意

もし、お子さんが頭をかいたり、「頭がかゆい」と言ったりしたら「アタマジラミ」を疑ってみましょう。

アタマジラミの見つけ方

成虫、幼虫、卵ともに肉眼で見える大きさです。ただ、成虫は動きが速く、見つけるのは難しいので、卵を探します。卵は白色、楕円形で、髪の毛にしっかりくっついています。耳の周りから襟足にかけて多く見られるので、この辺りの髪をかきわけて注意深く見てください。フケは簡単に動きますが、卵は指で引っ張ってもつまんでも動かず取りにくいのが特徴です。見えにくい場合は虫眼鏡などを使うとよいでしょう。

駆除するにはどうしたらいい?

アタマジラミを見つけた場合の駆除方法をお教えします。

毎日シャンプーする

お子さんの場合、自分では洗いきれないところもあるので、大人がしっかり洗ってあげましょう。シャンプー剤は、普通のものより、シラミ用のシャンプーを使用した方が効果が高くなります。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

毎日、細かなクシで髪をとく

目の細かいスキグシで髪をとかし、卵や幼虫・成虫を取り除きます。シラミ専用のクシも販売されています。ただ、市販のクシの中には皮膚を傷つけてしまうものや目が粗くてシラミを取り除けないものもありますので購入の際は注意してください。

身の周りのものを他の人と一緒に使わない

タオルやヘアブラシ、帽子、マフラー、寝具など、身の周りのものを他の人と共用しないようにし、できるだけ毎日洗いましょう。もし、アタマジラミが見つかった場合、寝具やタオルに直接処理できるシラミ退治用のスプレー剤が市販されていますので、そちらを活用してください。

薬剤に対して強いタイプのアタマジラミもいます

日本では1971年にDDTなどの有機塩素系殺虫剤が禁止された後、アタマジラミ症の集団発生が多く見られましたが、82年にピレスロイド系殺虫剤が発売され減少しました。ただ、長期にわたってひとつの殺虫剤を使い続けることにより薬剤に対して抵抗性遺伝子を持つ個体が増えてきています。国立感染症研究所によると、沖縄県ではアタマジラミの約96%が抵抗性を持っていて、その他の都道府県では平均すると約5%が持っているということです(※)。従来の殺虫剤が効かなくなっていて、今後更に増えていく可能性が高くなると予想されています。

現在、薬剤に対して抵抗性を持っているアタマジラミを駆除できるローションも販売されていて、こちらは卵にも効果があります。

家庭で対処できない場合は

頭にかゆみがあって原因がよくわからない場合は、早めに皮膚科や小児科を受診して医師に判断をしてもらうことをお勧めします。早めに対処することで、もしもの場合にアタマジラミの増殖を防ぐことができます。

また、頭をかきすぎて炎症を起こしている場合や、シラミ用シャンプーやクシを使用しても症状がよくならない場合も早めに病院を受診してください。

最後に…

アタマジラミが発生するのは昔の話だと思っている方も多いかと思いますが、そうではありません。ただ、「頭に虫がいるなんて周りに知られたくない」と対処をためらう方も少なくないとみられます。欧米では、アタマジラミに対してオープンで、駆除剤などのCMが普通に放送されていて、駆除しようという意識が高いそうです。日本でもアタマジラミのことがもっとオープンになれば、早く駆除していけるのではないかと思います。それと同時に、アタマジラミのことを知ることでお子さんの「頭がかゆい」という訴えと「アタマジラミ」を結びつけることができ、見逃さず対処していけるものと考えます。

(※)国立感染症研究所アタマジラミ駆除剤抵抗性の全国調査結果

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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