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40代未婚男性はなぜ不幸なのか?未婚と既婚男性で比較した「不幸にしている不満」の要因

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

未婚の不幸度は高い

「未婚の中年男性不幸MAX説」は、当連載でも何度か取り上げているが、少なくとも2014年から2020年にかけて継続的に調査している中では、不幸度は、女性より男性の方が高く、既婚より未婚の方が高く、年代別には40-50代あたりが一番高くなる傾向は変わらない。

未既婚各年代別の幸福度の違いについてはこちらの記事にグラフを掲出してあるのでご確認いただきたい。

なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか

調査の対象期間は、ちょうど40代に該当する世代が氷河期世代に当たるという時代環境要因もあるだろうが、年代別に見て40-50代あたりがもっとも不幸度が高くなるという点は、日本に限らず、米国においても普遍的なものでもある。

幸福のU字曲線

拙著「結婚滅亡」の中でもご紹介したが、アメリカで35万人を調査したストーン博士の研究によれば、「幸福度は10代と80代でもっとも高く、一番低いのが40代から50代前半」とされている。これが、いわゆる「人生の幸福のU字曲線」といわれているものである。日本においても同様に、40-50代が底辺で60代以降はやや回復していくU字曲線を描く。

但し、重要なのは、同じ男性でも未婚と既婚とでは有意に大きな違いがある(未婚の不幸度が高い)ことである。

短絡的に考えれば、「結婚していないから不幸」と判断しがちである。

確かに、男性の幸福度において恋愛経験の有無や恋人の有無は大きな影響を与えることはその通りだが、今回は恋愛以外の部分についても掘り下げてみたい。

つまり、「仕事」「人間関係」「収入」などの要因で幸福度が変わるのかという点である。

従来、幸福の要因を判断する際に「幸福度の高い人たちの共通因子は何か?」という視点が多い。それはそれで意味のあることではあるが、普通に考えれば、幸福度の高い人は「仕事が充実している人が多い・人間関係が良好な人が多い・収入が高い方が多い」というのはある意味当然である。

むしろ、仕事・人間関係・収入という部分が「不満足」であるという場合にどれだけ幸福・不幸を感じているかという視点で見ることも大切だ。

よって、今回は、「仕事」「人間関係」「収入・給料」「恋愛愛情関係」の4つの要因それぞれについて「不満である」と回答した対象だけを抽出して、「不満だが幸福」「不満で不幸」という割合を未既婚年代別に並べてみた。

未婚は不満=不幸

未婚男性は非常にシンプルに「不満=不幸」と連動している。

特に、「仕事に不満」「人間関係に不満」という未婚男性は全年代圧倒的に6割以上が不幸である。

「収入・給料に不満」群も不幸度は高いが、意外に「仕事」や「人間関係」の不満を持つ群より不幸度は低い。収入の不満より、不幸を感じさせるのは、普段の仕事の内容や仕事上の人間関係であることの方が深刻なのだろう。

さらに、意外なのは、「恋愛関係」部分の不満が不幸度がもっとも低いということだ。低いといっても既婚と比べれば高いのだが、恋愛が充実していないからといってそれだけで即不幸というわけでもないようだ。

もっとも不幸度の高い40-50代未婚男性に限ってみると、「収入」と「恋愛」部分の不幸度の伸びが20代と比較すると大きいことがわかる。20代から続く「仕事」や「人間関係」の不満に加えて、40代になってもあがらない「給料」の不満や気が付いたら40歳過ぎて未婚のままだったという状況が加わり、トータルで不幸度がMAXになってしまうのかもしれない。

それでも、40代よりは50代の方が若干不幸度は低下しており、「幸福のU字曲線」はここでも踏襲されている。

こうして見ると、未婚男性が不幸なのは別に結婚できないからではなく、モテないからでもなく、そもそも現在の仕事内容への不満や職場の人間関係が元凶である場合が多いわけで、不幸感を払拭するにはまずその環境を変えるという新たな解決視点が生まれるのではないだろうか。

既婚は「不満でも幸福」

一方、既婚男性は傾向が大きく違う。

「仕事」と「人間関係」でいえば、不満があっても幸福と不幸の割合はほぼかわらない。むしろ、30代だけはなぜか「仕事が不満でも幸福」「人間関係が不満でも幸福」という部分が逆転している。「収入」に関しては、20-40代まで既婚男性は「収入が不満でも幸福」なのである。

この「不満を言えばいろいろあるけれどまあ幸福だよね」と感じられる既婚男性と「不満だから俺は不幸なんだ」という未婚男性。

この幸福に対する感受性の違いが、未既婚の幸福差を産んでいるのだろう。いわば、未婚男性の方が不幸に対して敏感すぎるのだ。

あるいは、既婚男性の方が、仕事や人間関係においていろいろ問題があったとしても、「それはそれ」と区切りをつけることができ、家庭に帰ればそうした不満も打ち消すほどの充実感を得られているのかもしれない。

写真:アフロ

ちなみに、オタク的趣味をもつ未婚男性の幸福度は高いのだが、それも既婚者と同様、仕事や人間関係に不満があっても、そこを離れれば、没頭できるオタク趣味や推し活などがあれば幸福度が高まっているのかもしれない。

既婚男性は高齢後不幸か?

気になるのは既婚男性の「恋愛愛情関係」の部分で、これだけは不満=不幸という形がどの年代でも明確になっている。既婚者であるので愛情関係とは配偶者になるのだが、結婚生活が長く続いて50代にもなるとさすがに愛情が冷めてしまう夫婦もいるのだろう。

提供:イメージマート

子どもが大学卒業した後での熟年離婚も増えている。既婚男性とてその幸福は永遠ではないのだ。

また、既婚男性においては、50代がすべて「不満=不幸」の割合が最大値となっていて、未婚男性に並ぶ勢いになっている。60歳以上は調査していないので不明だが、もしかすると、既婚男性は高齢になって、特に定年退職後になって以降が「不満=不幸」体質が顕在化していく可能性を秘めているのかもしれない。

ちなみに、このグラフでは割愛しているが、未婚も既婚も「健康」に問題がある場合の不幸度は当然ながらもっとも高いということを付け加えておく。何はなくともまずは健康が一番である。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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