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「犬好きは結婚できるが、猫好きは生涯独身」説は本当か、検証する

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

猫を飼ったら一生独身説

「独身の一人暮らしが猫を飼い始めたら、もう結婚できなくなる」

そんな都市伝説というか噂がある。不思議と、「犬を飼ったら結婚できない」とはあまり言われない。あくまで猫限定の噂なのだが、実際どうなのだろうか。

実際に飼育を条件としてスクリーニングの上調査しても、特に独身者の場合、住んでいるマンションやアパートの契約条件で「ペット禁止」の物件に住んでいる人もいるだろう。そこで、飼育状態に関係なく、「犬好き」か「猫好き」かについて、未婚と既婚との間に違いがあるのかについて調べてみた。

結果がこちらである。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

なぜか「犬好き」が多い既婚者

男女とも各年代を通じて、未婚より既婚の方が明らかに「犬好き」であることがわかる。特に、既婚女性の犬好き率は全年代を通じて高い。20代既婚女性の犬好き率は55%と過半数となっている。

対して、既婚男女の「猫好き」率もまた、全年代を通じて一番低い。これだけ明確に分かれるとなると、既婚者は「猫より犬派が多い」と言っても過言ではないだろう。

写真:アフロ

一方、未婚者を見ると、女性は全年代「猫好き」が多いものの、未婚男性の場合は、40代以上では「犬好き」が多い。未婚の場合、男女で違いがあるし、既婚者ほど明確な分かれ方はしていない。というのも、今現在未婚であっても、将来結婚する「エセソロ」も含まれているからだろう。

なので、未婚男女だけを抽出し、「現在恋人がいる」グループと「今まで一度もいたことがない」グループとに分けて、それぞれ「犬好き」と「猫好き」のどちらが多いかを差分で比較してみた。

「犬好き」の方が恋人がいる

年代別に多少バラつきはあるが、恋人がいる割合は「犬好き」の方が多い。特に、40代男性は40%ポイント以上、30代女性はなんと60%ポイント以上も犬好きの方が多くなっている。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

反対に、「今まで一度も恋人がいたことのない」グループは一部「犬好き」が上回っている部分はあるものの、20代男性と30代女性では約20%ポイントも「猫好き」が多い。

つまり、犬好きの方が恋愛をしている割合が多いということになる。それは、「犬好き」未婚の方がやがて既婚者になっていくという予測もつく。

もちろん、これだけでは「猫好きは結婚できない」とまでは断言できないし、「犬好きな未婚は必ず結婚できる」なんて保証はないし、決して結婚できないことを猫のせいにしてはいけないが、少なくとも「犬好きのタイプの方が結婚に向いている」とは言えるようである。

未婚者にはオキシトシンが足りない

一般的に、既婚の方が未婚より幸福度が高いことは、以前にも書いた通りだが(→なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか)、その要因のひとつに、ストレスホルモンの分泌を抑制する効果のあるオキシトシン分泌量の違いがあるという説もある。

オキシトシンは人間同士のスキンシップによって分泌されるホルモンでもあり、別名「愛情ホルモン」と呼ばれるものだ。スキンシップのできる配偶者や子がいる既婚とそれらのいない未婚との違いが幸福度の違いになっている点もあるだろう。

それは、未婚であっても恋人がいるかいないかでは前者の方が幸福度が高いことからも類推できる。

写真:アフロ

しかし、オキシトシンの分泌は、人間同士だけではなく、ペットとのスキンシップでも促進される。未婚者がペットを飼うという行為は、「結婚以外でオキシトシンを獲得する」というひとつの代替行動ともいえる。

犬好きと猫好きとで未婚者の恋人の有無に差が出るのも、外に散歩に行く必要がある犬と家の中にこもっていても大丈夫な猫という飼育環境の違いや、そもそも群れで行動するのが好きな犬単独で自由気ままに行動する猫という双方の特性と自分自身のソロ度との合致を無意識に見ているのかもしれない。

事実、ペットフード協会が実施している全国犬猫飼育実態調査によれば、飼育頭数で比較すると、2014年に猫が犬を逆転し、2021年段階では犬7106千頭、猫8946千頭と大きく猫の方が多くなっている。というより、犬の飼育数は年々減少傾向にあるのだ。

これは、世帯の家族比率が2割台に激減し、単身世帯が4割に達しようとしていることと無関係ではないと言えよう。

やがては、独身老人と猫の時代になるかもしれない。

写真:アフロ

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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