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2020年出生・死亡・婚姻・離婚の確定値。新型コロナとは関係ない大きな人口動態の流れを見る

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

先日、9月10日に厚生労働省から2020年の人口動態統計(確定数)の一部が発表された。私の見たところ、まだ日経新聞以外その報道は確認できないが、最新のデータとしてここに記事化しておく。

2020年出生数

前年の86万5239人から約2.4万人減って84万835人。増減比は▲2.8%であった。

1899年から始まる人口動態総覧に絞れば、これは統計上史上最低の出生数となる。その前の統計も含む人口動態総括表を見ると、1873年(明治6年)の出生数が約84万2千人と記されているので、それ以来の84万人台ということになる。

明治維新となり、「富国強兵・殖産興業」のスローガンを掲げ、庶民には「産めや、増やせや」と号令をかけた時代から、太平洋戦争前後をピークに出生数を増やしてきた日本であるが、約150年間、ちょうど75年ずつ対称性のある形で、スタートの水準に戻ったということになる。

今後も、新型コロナの影響とかとは関係なく、出生数が増えることはありえないので、やがて江戸時代並みの出生数へ下がることだろう。

よくニュースで報道される合計特殊出生率はまだ10日の段階では正式な数値の発表はない。ただし、出生数と姻数数との関係から推計試算すれば、2020年の合計特殊出生率は1.34~1.35程度であると予測される(2019年は1.36)。

2020年の出生男女比は1.05であった。結婚したくても、340万人もの未婚男性には相手がいない「男余り現象」の残酷の記事で書いたように、男余りの原因となる男女比はずっと変わらない。

2020年死亡者数

前年より8338人減って、137万2755人だった。死亡者数が前年を下回るのは実に11年ぶりのことである。

新型コロナによる死亡数は3466人であり、2019年までそれより多くの死因となっていた肺炎は前年比18%減、インフルエンザに至っては前年比73%もの大幅減である。

死因1位の悪性新生物、いわゆる癌による死亡者数は約37万8千人であり、コロナによる死亡者数の約109倍である。自殺者も前年より増えている。

出生数と相反して、死亡数はそもそもの高齢者人口の増加に伴い、今後増加していくことが必至であり、すでに日本は2007年から出生より死亡の多い「人口自然減国家」になっているという事実は認識しておくべきだろう。

2020年婚姻数

婚姻数52万5 507組で前年比▲ 12.3%と、ここ30年間ではもっとも大きい減少率となった。

大幅に減少した要因は、決して新型コロナのせいだけではない。人口動態における婚姻数は結婚式や披露宴をやった数ではないからだ。前年の2019年は令和婚効果によって久しぶりに前年比プラス2%と増加している。その反動があったものと考えられる。

ちなみに、年間婚姻数52万組という規模は、1934年(昭和9年)の約51万組以来の低い婚姻数となる。史上もっとも婚姻数の多かった第二次ベビーブーム期の1972年の約110万組と比較すると半減以下となる。

出生数同様、婚姻数もコロナとは関係なく、今後あがる見込みはない。なぜならもはや婚姻適齢期といわれる20~30代の人口そのものが減っているからだ。

彼らが生まれた1990~2000年代はすでに少子化がはじまっており、絶対人口が減っている以上、婚姻数が増えることは物理的にありえなくなっているからである。

2020年離婚数

離婚数に関しては、近年の婚姻数の減少に伴い、絶対数としては前年比▲7%程度の19万3253組でおさまっているが、離婚数を婚姻数で割ったいわゆる特殊離婚率は36.7%であり、これは年1899年以降の統計上では4番目に高い離婚率となる。

人口千対の普通婚姻率・普通離婚率の公式発表はまだない。

今後、出生率・婚姻率・離婚率などの公開とともに、各都道府県別のデータも発表されると思うが、それはまた発表され次第この連載上で記事化していきたい。2020年の人口動態結果全体を通しての考察はそれを待って行いたいと思う。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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