「アラブの春」から10年、大統領選挙を月末に控え、シリアとサウジアラビアが国交回復に向けて動き出す

(写真:ロイター/アフロ)

抵抗枢軸に近い情報ウェブサイトのスクープ

英国の首都ロンドンを拠点とする情報ウェブサイトのラアユ・ヤウムは5月3日、シリアの首都ダマスカスの複数の外交筋に話として、サウジアラビアのハーリド・フマイダーン総合情報局長官(大将)を代表とする同国使節団がシリアを訪問し、バッシャール・アサド大統領、アリー・マムルーク国民安全保障会議議長と会談、二国間関係の改善と国交回復について意見を交わしたと伝えた。

同サイトによると、会談ではサウジアラビア使節団がイード・フィトル(5月12日)に伴う休日までシリアに滞在すること、両国関係を修復する第一歩として、在シリア・サウジアラビア大使館を再開することが合意された。

ラアユ・ヤウム(アラビア語で「今日の意見」の意味)は、パレスチナ人ジャーナリストのアブドゥルバーリー・アトワーン氏が編集長を務め、イラン、シリア、レバノンのヒズブッラーといったいわゆる「抵抗枢軸」に近いとされる。

シリアでは5月26日に大統領選挙の投票が予定されているが、欧米諸国は、現体制下での選挙を国連安保理決議第2254号に反していると主張、その正統性を一方的に否定している。

欧米メディアも伝える

この報道に関して、英日刊紙『ガーディアン』も5月4日、サウジ高官の話として、地域情勢の変化がシリアとサウジアラビア関係の緊張緩和を促したと伝えた。

さらに、米国のアラビア語衛星テレビ放送のフッラ・チャンネルも5月4日、米国務省の高官が匿名を条件に、米国が会談を承知していると述べたと伝えた。

この高官は、会合が在シリア・サウジアラビア大使館の再開と二国間関係正常化を検討するのが目的だとしたうえで、シリアと地域の安定はすべてのシリア人の意思を代表する政治解決に至らない限り実現し得ないと付言した。

シリア・サウジアラビア関係

サウジアラビアは、2011年春のシリアへの「アラブの春」が波及に伴う抗議デモの弾圧を理由に、シリア政府と断交、カタールとともにアラブ連盟におけるシリアの加盟資格凍結、経済制裁の発動を主導した。また、2016年末頃まで、トルコ、カタールとともに、アル=カーイダ系組織を含む反体制武装集団や、国連主催のジュネーブ会議および制憲委員会(憲法制定委員会)に参加する反体制派代表を支援してきた。

2018年10月にトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア総領事館内で発生したサウジアラビア人反体制系ジャーナリストのジャマール・カーシュクジー(カショギ)の暗殺事件以降、トルコ、欧米諸国との関係が悪化、これと前後してヨルダンなどとともに、シリア政府との関係改善を模索するようになった。

ドナルド・トランプ前政権はシリア政府との関係改善に「ブレーキ」をかけるよう忠告、こうした動きを牽制した。だが、2020年11月、イラク国境に位置するアルアル国境通行所が30年ぶりに再開、イラク(さらにはヨルダン)経由でのシリア産食料品などの輸入を加速させている。