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シリアに駐留する米軍が住民1人を誤って射殺、ロシア軍が米軍パトロール部隊の進行を阻止(映像あり)

青山弘之東京外国語大学 教授
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日

米軍部隊が住民1人を誤って射殺

シリア南東部のダイル・ザウル県では、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、CONOCOガス工場近くで米軍部隊が5月1日、ダイル・ザウル県とラッカ県を結ぶ街道で住民1人に誤って発砲し、殺害した。

殺害されたのはラッカ県の住民。ダイル・ザウル県を移動中に米軍部隊の発砲を受けたという。

遺体はシリア民主軍によって県内のジャディード・バカーラ村の病院に搬送された。

米国は、2019年10月にシリア領内から部隊を撤退させると発表したが、その後、油田地帯を防衛すると主張し、ダイル・ザウル県やハサカ県の油田地帯に違法に駐留を続けている。

シリア人権監視団、2020年5月1日
シリア人権監視団、2020年5月1日

ロシア軍がハサカ県で米軍部隊の進行を阻止

ハサカ県では、シリア人権監視団や反体制系サイトのドゥラル・シャーミーヤなどによると、ロシア軍憲兵隊が5月2日、カーミシュリー市郊外の街道に展開し、米軍のパトロール分隊に対峙、進行を阻止した。

米軍は、ハサカ県北東部のカスラク村やハイムー村に違法に基地を設置し、カーミシュリー市近郊でパトロール活動を続けているが、これまでたびたび地元住民の抵抗に遭っている。

ロシア軍と米軍のにらみ合いは数時間続き、最終的には米軍が現場を立ち去ったという。

Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日
Youtube(A24 News Agency)、2020年5月2日

これに対し、米軍は5月3日、対抗措置として、ロシア軍部隊が展開するタッル・タムル町一帯の上空にヘリコプターを派遣、1時間以上にわたり偵察・監視活動を敢行した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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