ホワイト・ヘルメットに続いて「自由シリア警察」にもテロ支援の疑い

(写真:ロイター/アフロ)

 BBCのドキュメンタリー番組「パノラマ」は12月4日、「Jihadis You Pay For」と題した回で、シリア国内の反体制派支配地域で活動する「自由シリア警察」を特集し、彼らがアル=カーイダ系のシャーム解放委員会(旧シャームの民のヌスラ戦線)をはじめとする過激派に資金や人材を融通し、その蛮行に加担していることを暴露した。

 自由と尊厳を求めて、独裁に立ち向ってきたはずの反体制派とテロ組織の関係をめぐっては、昨年にもホワイト・ヘルメットに疑惑の目が向けられ、議論が巻き起こった。自由シリア警察やホワイト・ヘルメットといった団体がテロ組織との結託を指摘されるのはなぜなのか?

「パノラマ」の放送内容

 

自由シリア警察(自由アレッポ県警察)の腕章
自由シリア警察(自由アレッポ県警察)の腕章

「自由シリア警察」は、英語で「Free Syrian Police(FSP)」、アラビア語で「シュルタ・フッラ(al-shurta al-hurra、日本語で「自由警察」の意味)」と呼ばれている。シリアでは反体制派の支配下に入ったいわゆる「解放区」で、2013年初め頃から警察組織が整備され、結成されたのがこの組織だ。ただ「自由シリア警察」と言っても、全国的な統一組織ではなく、「自由アレッポ県警察」、「自由バーブ市警察」、「自由イドリブ県警察」、「自由ブスラー・シャーム警察」など、多くの地方組織からなっており、それぞれが各地の自治の一端を独自に担っているのが現状だ。

 4日放送の「パノラマ」は、この自由シリア警察に疑惑の目を向けたのである。

 同番組によると、英国政府は、2014年10月からアダム・スミス・インターナショナル(ASI)社を介して、自由シリア警察に資金援助や技術供与を行っていた。だが、同社の文書や取材などから、彼らが過激派への資金の横流しや戦闘員のリクルート、さらには住民への蛮行に加担していたことが明らかになったという。

 具体的には、自由シリア警察と過激派には次のような関係があったと指摘している。

  1. シャーム解放委員会が運営する法廷に隊員が協力し、住民に対して残忍な刑の執行を行った。そのなかには、コーランが姦通罪に対するハッド刑と定めている「石打ちの刑」を科し、女性を死亡させた事例が確認されたという。
  2. 隊員が、自身が受け取った給与を、活動地域を支配する過激派に資金として提供した。2016年7月には、自由シリア警察の全隊員に支払われた給与の20%が、ヌールッディーン・ザンキー運動に支払われた。
  3. 隊員がシャーム解放委員会の戦闘員に抜擢された。
  4. 死亡者や架空の人物に給与の支払いが行われていた。

 なお、2.にあるヌールッディーン・ザンキー運動は、バラク・オバマ前米政権が支援し、アレッポ市東部街区をめぐるシリア軍との戦いにおいて主導的な役割を担った「穏健な反体制派」と呼ばれた組織の一つで、2017年1月にヌスラ戦線(当時の呼称はシャーム・ファトフ戦線)が中心となって結成したシャーム解放委員会に参加した。その後、7月にシャーム解放委員会を離反した後も、イドリブ県北部、アレッポ県西部で活発に活動を続けている。

 自由シリア警察は、英国以外にも西側5カ国が支援を行っているが、英国政府はこうした事態を受けて、支援を中止したという。

「反体制派のスペクトラ」がもたらす結託

 「パノラマ」の放送に対して、自由アレッポ県警察のアディーブ・シャッラーフ所長は、「英国による自由警察への支援は完全に停止されたのではなく、一時的に停止されただけだ…。自由警察以外のいかなる軍事組織にも資金は流れていない…。自由警察は4年にわたり、ドナーからの条件を守っている」と反論した(2017年12月4日付ドゥラル・シャーミーヤ)。また、アダム・スミス・インターナショナル社も報道内容を否定している。

 だが自由シリア警察とテロ組織の結託(ないしは結託疑惑)は、シリアの反体制派の実態を踏まえると不可避だと言える。

 以下の図は、筆者が「反体制派のスペクトラ」と呼ぶもので、反体制派の実態を示している。

反体制派のスペクトラ
反体制派のスペクトラ

 反体制派と言うと、「アラブの春」に呼応して発生した抗議デモをシリア政府が弾圧するなかで活性化したこともあり、「正義」の市民運動だと思われがちだ。だが、この図からも明らかな通り、反体制派は、「フリーダム・ファイター」としてのイメージが強い「自由シリア軍」や「穏健な反体制派」、アル=カーイダの系譜を汲まないイスラーム軍、アル=カーイダの元メンバーが黎明期に主導的な役割を果たしたシャーム自由人イスラーム運動、そしてシリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放委員会が渾然一体の関係を織りなすことで成り立っている。

 彼らは、合同作戦司令室や武装連合体を結成して共闘することもあれば、各組織、そしてそのメンバーが状況対応的に所属変更、改称、組織改編を通じて合従連衡することもある。それゆえ、彼らを「テロリスト」と「革命家」に峻別することは不可能だ。

 「解放区」は、こうした反体制派の軍事的な傘のもとで治安が担保され、自治が行われている。それゆえ、自由シリア警察であれ、昨年話題になったホワイト・ヘルメットであれ、同地で活動する組織が、反体制派と人的、物的な交流があり、彼らの活動、すなわち武装闘争や暴力行為に正当性を感じていたとしても何ら不思議ではない。

何が問題か?

 問題は、自由シリア警察が連携する反体制派が、「テロリスト」とみなされる組織や個人によって主導されており、彼らを排除しようとすれば、反体制派の存在が根本から揺らぐということにある。だが、だからと言って、反体制派は「悪」で根絶されるべきと考えるだけなら、バッシャール・アサド政権を「悪」と位置づけ、それを破壊さえすればシリア内戦は解決する、と主唱するのと同じく不毛だ。

 留意すべきは、シリア内戦がアサド政権の優位のもとで決着しようとしているタイミングで、自由シリア警察と過激派の結託が指摘されたということかもしれない。

 反体制派が、欧米諸国や国際社会において容認し得ない「テロリスト」を包摂していることは、シリア内戦当初から周知の事実だった。自由シリア警察に向けられている疑惑は、黙認され続けてきたこうした事実を認知することを「正義」と位置づけようとするある種の方便、あるいはシリア内戦において利用価値を失った反体制派の「トカゲのしっぽ切り」にも見える。そして、これによって覆い隠されようとしているのが、「民主化」支援の名のもと、「テロ支援」を行ってきた欧米諸国の二重基準であるという事実は、見過ごされてはならない。