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抹茶ミルク飴?ビー玉?ポケモンのモンスターボール?=カレハガの卵は虫好きの垂涎の的

天野和利時事通信社・昆虫記者
甘い抹茶ミルク飴のように見えるカレハガの卵。

 カレハガ(枯葉蛾)は、その名が示すように枯葉擬態で有名な蛾だ。しかし、昆虫記者がずっと以前から見つけたいと願ってきて、今年ついに見つけたのは、そんなカレハガの成虫ではなく、その卵だ。

 白と緑の渦巻き模様に覆われたカレハガの卵は、拡大してみると抹茶と練乳を混ぜ合わせた飴玉のようで、つい嘗め回したくなる。凝った模様のビー玉や、ポケモンのモンスターボールのようにも見える。

 しかし、桜、桃などの葉に産み付けられたこの卵からは、しばらくするといやらしい毛虫が出てくる。その毛虫は全然美しくないし、胴体の前の方に付いた黒い毛束は毒針毛と呼ばれ、毒があるという。

ずっと探し続けていたカレハガの卵を今年ようやく見つけた。
ずっと探し続けていたカレハガの卵を今年ようやく見つけた。

可愛いカレハガの卵から出てきたのは、ちょっと強面の毒毛虫。
可愛いカレハガの卵から出てきたのは、ちょっと強面の毒毛虫。

カレハガの幼虫は、黒い毛の部分に毒針があるというが、それほど危険ではないという話も。
カレハガの幼虫は、黒い毛の部分に毒針があるというが、それほど危険ではないという話も。

 カレハガの仲間の幼虫の中には、強烈な毒虫が多い。ただし、本家カレハガの幼虫の毒針は皮膚に刺さりにくく、危険性は比較的低いらしいので「触っても大丈夫」と言う人もいる(それでも怖がりの昆虫記者は絶対触らない)。

 また、幼虫の毒針毛は上向きに生えているので、指の上に幼虫を這わせても、毒の被害を受けることはないという(それでも昆虫記者はそんな無謀なことはしない)。

 一方、幼虫の側面の長い毛は、下向きに生えており、幼虫が樹皮に張り付いていると、幼虫と樹皮の境目が分かりにくくなる。これも一種の擬態だろう。

 カレハガの成虫が翅を閉じて静止すると、周囲がギザギザの一枚の葉のように見える。この蛾が木の枝の上や地表にいたら、擬態を見破るのは難しいだろう。この姿勢のカレハガを指に乗せてみると、非常に格好いい。成虫には全く毒がないので、臆病者の昆虫記者もこの段階でやっと一安心だ。

野外にいたらまさに枯葉に見えるカレハガ成虫。
野外にいたらまさに枯葉に見えるカレハガ成虫。

指乗せしてみたカレハガは結構かわいいし、格好いい。
指乗せしてみたカレハガは結構かわいいし、格好いい。

カレハガは、横から見ても上から見ても1枚の枯葉に見える。
カレハガは、横から見ても上から見ても1枚の枯葉に見える。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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