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この肉食恐竜のような牙の持ち主は誰?意外と身近にいる怪物。

天野和利時事通信社・昆虫記者
こんな恐ろしい牙を持つ生物は誰?

 オニヤンマのヤゴの下唇(かしん)は飛び出しナイフのような必殺凶器だ。拡大すると肉食恐竜の牙のように見える。

 冬の水中の虫探しで、結構よく見つかるのがオニヤンマのヤゴ。オニヤンマは、成虫になるまで何年もかかることもあるので、真冬にも大きなヤゴの姿が見られる。ヤゴなんて飼って何が楽しいのかと思う人がいるかもしれないが、これが結構楽しい。

 ヤゴが他の水中生物を捕食する際の武器は、下唇とよばれる顎のような部分。この下唇は、普段は頭の下に折りたたまれていて、目立たないが、小魚などの獲物を捕食する際には、この部分を目にもとまらぬ速さで飛び出しナイフのように前方に伸展させ、大きな牙が付いた先端部分を開閉して食らいつく。

 そのスピードはあまりに速く、一瞬何が起こったのか分からないほどだ。スーパースローモーション撮影が可能な高性能カメラがなければ(もちろん貧乏昆虫記者はそんなものは持っていない)決定的瞬間をとらえることはできない。

去年の冬に見つけたオニヤンマのヤゴ。
去年の冬に見つけたオニヤンマのヤゴ。

折りたたまれた状態のオニヤンマのヤゴの下唇。
折りたたまれた状態のオニヤンマのヤゴの下唇。

こんな牙で食いつかれたら、小さな水生生物は逃れようがない。
こんな牙で食いつかれたら、小さな水生生物は逃れようがない。

ヤゴの下唇の構造はこんな感じ。かなり前方まで伸展する。
ヤゴの下唇の構造はこんな感じ。かなり前方まで伸展する。

 トンボは幼虫も成虫も肉食。幼虫がヤゴと呼ばれることは、誰もが知っているが、ヤゴの名はもともと、ヤンマの子という意味だったようだ(また嫌われ者の「うんちく親父」になってしまった)。なので、オニヤンマのようなヤンマの幼虫こそ、正当なヤゴだと言える。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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