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北欧ファッションの次世代タレント発掘へ

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
優勝したIngrid Pettersonさんの作品 筆者撮影

北欧のファッション業界のムーブメントを表現する言葉は「サステナブル」だ。もともと世界的に見て注目度はそこまで高いとはいえない北欧。スウェーデンからはH&Mが生まれたが、ファストファッションに対する目は厳しい。

「これからのファッションはサステナブルでなければ生き残れない」

共通の認識をもって、ここ数年で北欧のファッション業界は再生しようとしている。

各国のファッションウィーク期間中には才能ある若手デザイナーを選び、活動を後押しする動きもある。

8月に開催中のオスロ・ファッションショー「Oslo Runway」でも、デザインを学ぶ学生から新しい芽を発掘するための2つの取り組みが行われた。

霊媒師と婚約したことでも有名なマッタ・ルイーセ王女(右から一人目の白い服を着た女性)と娘のリア・イサドラ・ベーン(右から二人目の青いトップと茶色のスカートを着た女性)も来席した 筆者撮影
霊媒師と婚約したことでも有名なマッタ・ルイーセ王女(右から一人目の白い服を着た女性)と娘のリア・イサドラ・ベーン(右から二人目の青いトップと茶色のスカートを着た女性)も来席した 筆者撮影

ノルウェーの4か所の教育機関から推薦された4人の卒業生が、コンペティション「DS Fashion Talent Award」に招待された。キャットウォークで作品を披露し、優勝作品が翌日に発表された。

また「Oslo Runway NEXT」では期待の3つの新星ブランドの作品が発表された。

「期待以上にわくわくするコレクションが見れた」というのが筆者の感想だ。

解放されたように動くシルエット

横から見ても美しい動きが印象的だったIngrid Pettersonさんのコレクション 筆者撮影
横から見ても美しい動きが印象的だったIngrid Pettersonさんのコレクション 筆者撮影

「ファッションのあるべき姿をユニークに表現し、ポジティブで気分を高揚させる」として優勝作品として選ばれたのはオスロ国立芸術アカデミー(KIO)のIngrid Pettersonさん。

「職人技と細部へのこだわり、動きとハリ、そして独特の編み方が、このデザイナーのDNAとして結集している」「エレガントなシルエット、興味深い色使い、吟味されたデザインのディテールは、ハイエンド・ファッションの雰囲気と芸術的価値の両方を備えている」というのが選出された理由だ。

まるで命が吹き込まれたかのように美しく動く。解放されたようなアクティブな弾みと動きが印象的だった。

ファッション業界をサステナブルにするには若い世代の力が必要だ

必ずしも国民のファッションへの関心が高いとはいえない北欧。テクノロジーなどのスタートアップとは違い、ファッションブランドの立ち上げは簡単ではなく、数年後に残っていると約束されているわけではない。

「サステナブルなライフスタイル」の選択肢を広めるためにファッション業界に必要なのは、新しい発想を持つ若い世代の活躍だ。記憶に残るようなコレクションが続いたショーだったが、いつか日本でも入手できるほどのブランドに成長できるだろうか。

Oslo Runway NEXTでお披露目されたKine Ulvestadのブランド「2 Much Pressure」 筆者撮影
Oslo Runway NEXTでお披露目されたKine Ulvestadのブランド「2 Much Pressure」 筆者撮影

前年度の優勝者となったMargaret Abeshuのコレクションもお披露目された 筆者撮影
前年度の優勝者となったMargaret Abeshuのコレクションもお披露目された 筆者撮影

卒業生Espen Hauglandのコレクション 筆者撮影
卒業生Espen Hauglandのコレクション 筆者撮影

卒業生Sunniva Aasli Oenのコレクション 筆者撮影
卒業生Sunniva Aasli Oenのコレクション 筆者撮影

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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