16日、スウェーデンのマグダレナ・アンデション首相は、NATO加盟申請を正式に決定したと発表した。

首都ストックホルムで開催された記者会見は、スウェーデンの通常の政治背景とは異なるものだった。

いつもは対立する野党の第一政党である穏健党の党首と共に並び、与野党で足並みをそろえて加盟支持を表明した。

スウェーデン政府提供の冒頭写真で、左側に立つ男性は中道右派・野党の最大政党「穏健党」のウルフ・クリステルソン党首。右側の女性は中道左派・与党「社会民主労働党」の党首でもあるマグダレナ・アンデション首相。

今年9月に控えるスウェーデン国政選挙では、首相の座を争うことになる2人だ。今の時期こそ、両党の政策や価値観の違いを市民に強調したいはずの2政党が、このように同じ道を支持する記者会見は異例中の異例だ。

スウェーデンが約200年にわたって維持してきた軍事的な中立が、終わりを告げることとなったこの日。北欧諸国の歴史の教科書に間違いなく刻まれ、「今後の未来の世代たちに大きな影響を及ぼしていく」と現地の専門家たちは伝えている。

国会の審議でNATO加盟に反対したのは、「緑の党」と「左翼党」の2政党だけだった。「たったの2政党」しか国会で反対しなかったことも、北欧諸国では強調して報道されている。

およそ3か月前には「NATO加盟なんてありえない」という空気だったスウェーデン。ロシアのウクライナ軍事侵攻は全てを変えた。

フィンランドだけがNATOに加盟するとなると、スウェーデンは孤立する。「小国であるが故に孤立することのリスク」を知っている北欧は、異業種や外部と協力体制をとって自分たちの立場を強化することを好む。

スウェーデンとフィンランドが同時申請する戦略は、他の北欧諸国でも賢い選択として評価されている。

北欧5か国では、ノルウェー、デンマーク、アイスランドはすでにNATO加盟国だ。

私が住むノルウェーはEU非加盟国なのだが、NATO加盟国であることが防衛政策として支持されている。しかも、現在のストルテンベルグNATO事務総長はノルウェーの元首相で、ノルウェー現地で高い人気を誇る政治家でもある。ノルウェーの元首相がNATO事務総長であることは、ノルウェーの安全意識をさらに高め、北欧各国にとってもNATOとのコミュニケーションをさらに容易にさせている。

ロシアとの国境に位置する面積が圧倒的に広いフィンランドのことを、北欧の隣国はここ数か月、心配し、気にかけて報道を続けていた。

北欧といってもスカンジナヴィア3国であるノルウェー、デンマーク、スウェーデンは言葉や文化も近く、「つながり」意識がさらに強い。北欧の中でも「お兄ちゃん的存在」だと私は表現しているのだが、スウェーデンはとくにリーダー的な存在でもある。

ノルウェーは、スウェーデンとデンマークに特別な親近感を感じている。よって、隣国であるスウェーデンが、フィンランドと共にNATO加盟を検討することは、ノルウェーにとっても「ほっとする」防衛対策につながる。

もし、隣の国のスウェーデンで何か起きたら、ノルウェーにも確実に影響の波が押し寄せてくるからだ。ノルウェー北部の北極圏はロシアとの国境にある。

16日のスウェーデン政府のNATO加盟の公式発表を、すでに加盟国である各国政府はすぐさま歓迎した。

デンマーク政府

ノルウェー政府

アイスランド政府

スウェーデンとフィンランドの決定は歴史的であり、「今後の北欧の防衛政策は強化される」「我々にとっても良い知らせ」という認識が各国の反応だ。

NATO加盟には全加盟国の同意を得る必要がある。ノルウェー・デンマーク・アイスランドは加盟支持の姿勢をもともと明白にしており、ここ数か月の動きを見守ってきた。

陸上国境や海上国境を接する国々が集まる北欧とロシアは、これまで互いに慎重に国際関係を築き上げてきた。しかし、その努力と忍耐の歴史、中立を保とうとしてきた国々の意向は、ロシアのウクライナ侵攻で全て変わってしまった。

スウェーデンとフィンランドが猛スピードでNATO加盟の道を歩むことは、プーチン大統領だけでもなく、誰にも予想ができなかったことだろう。国際舞台の応援を味方にした北欧2か国の抵抗劇がプーチン大統領の誤算となったことは、何度も関係諸国で指摘されてきた。

今心配されているのはトルコの反応だ。トルコのエルドアン大統領は、両国の加入には前向きではない姿勢をこれまで見せてきた。16日のスウェーデンNATO加盟申請発表がされた日の夜、エルドアン大統領がやはり難色を示しているというロイターの報道が北欧各国で広がった(スウェーデン公共局)。

今後はトルコ側の理解を得ることに国際舞台がさらに動いていくとみられる。