「それ、グリーンウォッシュ?」あたかも環境に配慮したかのように見せかけていないか
「グリーンウォッシュ」という指摘は、企業の商品担当者なら誰もが耳にしたくない言葉だ。
企業の真意はどうだったかは別として、事実上はグリーンウォッシュという商品や広告は存在している。
グリーンウォッシュとは、あたかも環境に配慮しているかのように見せかけて、消費者に誤解を与えるようなことを意味する。
環境や気候変動の対策が求められる現代、できるだけエコな商品を買いたいと思う市民は多い。
「グリーンウォッシュではないか?」と、ひと呼吸おいて考える習慣は、今後より重要なスキルとなるだろう。
どの企業も、意図してグリーンウィッシュをしようとしているわけではない。願わくば。そのような指摘はどこも避けたいし、大きなニュースとなってしまえば、企業イメージへの打撃は大きい。
ファッション業界で続くグリーンウォッシュ
北欧のファッション業界でいえば、H&Mは特に批判の対象となりやすい。
6月、ノルウェー消費者庁は、同企業が「サステイナブルなファッション」として謳う「Consious」シリーズが、事実上「サステイナブルで環境に優しい」のか疑わしいとして、広告が「違法行為」だと指摘した(報道例:ノルウェー公共局)。
北欧で、H&Mが以前から特に批判される理由は、企業の人気と影響力の高さゆえ。
格安ファッションを広め、スウェーデンのファッション業界を発展させる貢献はした。
だが、エシカル・ファッションの必要性が強まる中、業界のリーダーとしての道徳観と責任が、今求められている。
11月にノルウェーの首都オスロで開催された排出量ゼロの社会を目指す会議「ゼロ・エミッション」では、「それはグリーンウォッシュ?それともグリーンシフト?(緑の転換)」がテーマでのセッションも開催された。
「サステイナブル」責任者が、広報やコミュニケーション担当者と同一人物なのはなぜか?
企業の商品のサステイナブルな活動を謳う担当者というのは、「環境」や「気候対策」の専門家や技術者ではなく、「宣伝」、「コミュニケーション」、「広報」の専門家であることが多い。
環境に優しい企業イメージを売るために必要なのは、どううまく飾って表現するかにもよるということだ。
サステイナブル調査や消費者マーケティング研究者である講演者たちは、この現状を指摘する。
「なぜ、サステイナブルを語る責任者は、技術担当者ではないのか?おかしいぞ?なにかあるかも?」と疑う心を持ち、「サステイナブルの服を着ようとしている」企業を見抜く力が必要と、クリスチャニア準大学の消費とマーケティング学者のタンゲン氏は語る。
素直に真実を語る企業が、結局は信頼を勝ち取る
ノルウェーで今「グリーンウォッシュ感がすごい」と話題なのは、ノルウェーの石油会社エクイノールだ(旧称:スタトオイル)。
石油会社が「クリーンなエネルギー」のイメージを打ち出す、あせりの背景
北欧は環境先進国のイメージが強いが、ノルウェーは石油と天然ガスを輸出しているため、北欧の中で最も矛盾を抱えた国だ。
国内では、オイルマネーがこれからも必要と考える派と、もう石油エネルギーの依存から脱却するべきだという派の対立が強い。
地球を汚すエネルギーは「黒色や灰色のエネルギー」とも例えられるが、エクイノールは環境に優しい「緑色のエネルギー」、「クリーンなエネルギー」だというイメージを、国民に浸透させたい。
最近では、「石油はなぜ世界でまだ必要とされているか」、「石油の否定者は、広い視界で世の中を見れていない」とする広告を、映画館や電車内のポスターで大きく打ち出している。
加えて、エクイノールが国内で最大手のアフテンポステン新聞のスポンサーとなったことは、今年、大きな驚きを持って報じられた。
権力を批判する立場にあるはずの報道機関、よりにもよって新聞社が、お金欲しさのために、石油会社がスポンサーとなることを受け入れたからだ。
オイルは「クリーンなエネルギー」と謳うエクイノールのことを話す講演者は、当然ながらこの会場には何人もいた。
サステイナブルな企業だと打ち出したいがために、各企業がお金を払い、特定の企業だけを選りすぐって「サステイナブル・レポート」を出そうとする姿勢にも、批判があがる。
もちろん、グリーンウォッシュではなく、「グリーンなシフト」(緑の転換)ができている企業もある。
緑の洗脳ではなく、緑の転換を
配送車を排出量を出さない電動式に変えていく郵便局、建設機械を買い替え、工事現場をゼロエミッション化しようとするVeidekke社などは、その貢献が高く評価された。
「産業界が、自分たちの活動を話すことを恐れることを、願っているわけではありません。変わろうと努力する企業を、撃ち落とそうとしているわけでもありません。新しいスタンダードを作ろうとしている企業は、時に間違いをおかしてもいい。たまに間違いを犯すことを、許す社会であっていいはず。ただし、法律に触れないように」と、会議を主催するZEROのウリ氏は話す。
企業の影響力が強く、広告に大きなお金が動いていると、消費者が個人の力で真意を見抜くには限界がある。
エコやサステイナブルを謳いたがる企業が増える中、第三者が事実を見極める審査制度は、これからより必要とされてくるのだろう。
Photo&Text: Asaki Abumi