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プラスチックを減らす生活で創造力が高まる?実験してみた

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
意外と楽しい?プラごみを減らしてみる生活(提供:アフロ)

北欧ノルウェーの環境団体が主催するプロジェクト「プラスチックをできるだけ使わない生活」に参加しました。

詳細記事「プラスチックをできるだけ使わない・減らす生活に挑戦中! 北欧式・楽しんでエコな暮らし 33の工夫」

今回はその報告レポートです。2週間参加してみると、思わぬ良い変化が見られました。

生活を変えると、考え方も変わる

普段は意識していなかったことに頭のアンテナが反応するようになり、新しい情報が入ってくるようになりました。今まではスルーしていたプラスチックフリーに関する商品や情報に敏感に。

「どうすればプラスチックを減らせるだろう?」と、自分の頭でもんもんと考えるようになり、生活が少しずつ変わりました。買い物をするときに、「この商品や服は本当に必要なのかな?」と考えるのが癖になると、金銭的にも節約にもなります。

プラスチックをできるだけ使わないことに集中していると、自然とゴミそのものを出さないことを意識するようになります。「ゼロウェイスト」という言葉に、以前よりも敏感になりました。

今回はFacebookで、ノルウェー各地の参加者との交流がありました。アイデアを共有しあうコミュニティにいると、自分以外にも、楽しみながら、工夫して、少しでも地球に優しい生活をしようとしている人がほかにもいることを実感できました。

今回のように、全体をまとめてリードしてくれる団体や交流サイトがあると、ゲーム感覚で楽しめます。自分や他人の生活スタイルを責めずに応援しあうカルチャーも、長続きするためのコツなのでしょう。

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気候変動と環境を考えるきっかけとしてのツール

今回はFacebookで交流する他、毎日の自分たちの取り組みは「Ducky」というウェブサイトで、ポイントが溜まる仕組みになっていました。

自分の活動で、どれほどのカーボンフットプリントを削減することができたのかが数値化。ポイントが溜まることで、ゲーム感覚のように楽しめました。

「車に乗らない」ことがなぜプラスチックを減らすことに貢献するのか?(タイヤの摩耗粉塵は、マイクロプラスチックの発生源)

「洗濯量を減らすことがなぜ大事なのか?」(服を1着を1回洗濯すると、1900ものマイクロプラスチックが含んだ繊維が抜け落ちている)

サイトにはこのような疑問への情報もアップされていました。

公共交通機関を利用することでどれほどの排出量をおさえ、体の健康面や自然環境に影響があるかが表示される
公共交通機関を利用することでどれほどの排出量をおさえ、体の健康面や自然環境に影響があるかが表示される
「知っていましたか?私たちは服を頻繁に洗いすぎており、マイクロプラスチックを流出させています。あなたが洗濯量を減らそうとする姿を見て、周囲の人も行動を変えるかもしれません」
「知っていましたか?私たちは服を頻繁に洗いすぎており、マイクロプラスチックを流出させています。あなたが洗濯量を減らそうとする姿を見て、周囲の人も行動を変えるかもしれません」

サイトでは、各挑戦が、「持続可能な開発目標SDGs」のどの目標に該当するかも記されていました。

例えば、「車に乗らずに徒歩や自転車で移動した」場合、SDGsの以下の目標に該当

  • 目標3 すべての人に健康と福祉を
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標12 つくる責任 つかう責任
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15 陸の豊かさも守ろう
「タイヤからは年におよそ5000トンのマイクロプラスチックが発生し、その約半分は海へと流れます」
「タイヤからは年におよそ5000トンのマイクロプラスチックが発生し、その約半分は海へと流れます」

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期間中、私は以下のようなことをしていました。

月経カップ

月経カップを使えば、プラスチックだけではなくゴミも減る Photo: Asaki Abumi
月経カップを使えば、プラスチックだけではなくゴミも減る Photo: Asaki Abumi

私は月経カップが大好きな女です。ナプキンやタンポンを使用していれば、生理中は毎日プラスチックもごみも出ており、ポイントを溜めにくかったでしょう。

エコバッグ

スーパーでは無人レジが増加中。紙やプラスチックの袋が何枚必要か必ず聞かれる Photo: Asaki Abumi
スーパーでは無人レジが増加中。紙やプラスチックの袋が何枚必要か必ず聞かれる Photo: Asaki Abumi

エコバッグは以前から使用中。スーパーでも、プラスチックや紙の有料袋には「いりません」と答えていました。

プラスチック包装の食品を選ばない

スーパーではプラスチック包装がされていないバナナやトマトなどをできるだけ選ぶようにしていました。

バナナはプラ袋に入っていたほうが保存状態がよくなるかもしれませんが、自宅で新聞紙やビーズワックスラップにくるめば、問題は解決できます。

ビーズワックスラップ

ビーズワックスラップは、サランラップの代用品として、これからどんどんキッチンでは当たり前のものとなっていくでしょう。

首都オスロは今年は「欧州 緑の首都」に選定されているため、グリーンな行事が多く、私は無料でビーズワックスラップを手作りする機会がありました。

ランチをするときにお弁当箱を持参

ノルウェーと日本では「お弁当」のカルチャーが異なります。

通常は自宅で手作りしたシンプルなサンドイッチをプラスチックなどで包装する人が多め。飲食店によっては、プラスチックのゴミを減らすために、「家から容器を持ってきた人には割引」サービスが増えてきました。

パケトラというサイトで、「ごみランチが大好評。オスロ大学流、フードロス対策 1時間限定の食堂に行列ができるワケ」という記事を書くための取材中、私はこのプラを減らすプロジェクトにも参加していたので、自宅から容器を持参しました。

コーヒースクラブを手作り

 蜂蜜、ココナッツオイル、かすを混ぜるだけ。お肌もつるつる Photo: Asaki Abumi
蜂蜜、ココナッツオイル、かすを混ぜるだけ。お肌もつるつる Photo: Asaki Abumi

私は北欧のスペシャルティコーヒーについて執筆することが多く、毎日自宅でコーヒーを淹れています。残りのかすでは、石鹸、スクラブなどを作ることが可能なのですが、今まではスクラブはお店でお金を払って購入していました。

自分で手作りすることで、商品が作られる過程で出る排出量や包装ごみを減らすことができます。

環境に優しいキッチン道具

今までは使い捨てプラスチック製スポンジ+プラスチック包装。 木製タワシと、炭水化物・植物繊維・リサイクルプラスチックでできているスポンジに変更 Photo: Asaki Abumi
今までは使い捨てプラスチック製スポンジ+プラスチック包装。 木製タワシと、炭水化物・植物繊維・リサイクルプラスチックでできているスポンジに変更 Photo: Asaki Abumi

手持ち部分が木製でできているブラシ(ノルウェーでは食器洗いはブラシが定番)、自然素材や再利用されたプラスチック製のスポンジを購入。このような商品はお店でもプラ包装がされていません。

プラスチック素材を避けた商品は、お店でもプラ包装なし Photo: Asaki Abumi
プラスチック素材を避けた商品は、お店でもプラ包装なし Photo: Asaki Abumi

メイク落としは何度も使えるコットン布

75%竹繊維。25%オーガニックコットン。60度で洗えるから殺菌もできます。ふかふかで使い心地も最高 Photo: Asaki Abumi
75%竹繊維。25%オーガニックコットン。60度で洗えるから殺菌もできます。ふかふかで使い心地も最高 Photo: Asaki Abumi

今回の期間中に、一番良かった変化が、アイメイクを落とすときに使用していたコットンの変更。使い捨てコットンから、繰り返し使えるコットンへ。

マイクロファイバーを減らす洗濯ネット

ノルウェーでよく見かける専用の洗濯ネットはGUPPYFRIEND Photo: Asaki Abumi
ノルウェーでよく見かける専用の洗濯ネットはGUPPYFRIEND Photo: Asaki Abumi

極小プラスチック繊維を防ぐ洗濯ネットが、自然派ショップ、アパレルストアなどで販売され始めています。お値段は高めですが、今ある服を長く大事に使いながら、微小プラが下水に流れることをある程度防ぎます。

他にも、

  • 出張中は環境対策に徹底したホテルを選ぶ(北欧ならNordic Choice Hotels系列)
  • 毎日マイボトルを持参する、プラスチック製の食器の使用を避ける飲食店を選ぶ
  • プラスチックを使用していない綿棒や歯ブラシを使う、など。
 北欧のホテル王、ペッテル・ストルダーレン氏が経営するNordic Choice Hotels系列。オーガニックの朝ご飯、ごみを減らす対策など、サステイナブルな価値観がホテルの隅々に反映されている Photo: Asaki Abumi
北欧のホテル王、ペッテル・ストルダーレン氏が経営するNordic Choice Hotels系列。オーガニックの朝ご飯、ごみを減らす対策など、サステイナブルな価値観がホテルの隅々に反映されている Photo: Asaki Abumi
プラスチック素材に距離を置く歯ブラシが増えてきた Photo: Asaki Abumi
プラスチック素材に距離を置く歯ブラシが増えてきた Photo: Asaki Abumi
プラスチック製品を減らそうと努力する飲食店を選ぶ Photo: Asaki Abumi
プラスチック製品を減らそうと努力する飲食店を選ぶ Photo: Asaki Abumi

生活を変えることで、頭の運動になり、より創造力が増す

小さなことですが、毎日の生活でできることはたくさんあります。今まで当たり前だった自分の考え方や暮らしが変わっていくのも、脳には良い刺激でした。

プラスチックを減らそうとする毎日を、「不便だ」とネガティブに感じることはありませんでした。

むしろ頭を使って、自分で考えるように。生活がよい方向へ変わっていく明らかな変化で、自分にも自信がつきます。

このような取り組みは、会社などで決定権のあるリーダーの方々にも取り組んでもらいたいとも思いました。「我が社で変えられることはないか」、「どうしてこうなのか」と疑問を持つようになり、ビジネスにもプラスの変化が訪れるのではないでしょうか。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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